市立学校における感染症対応②ー個人情報の保護と出席停止中の対応

2020年7月22日[カテゴリ:学校教育, 質問

昨日は、西宮市では、6日ぶりに感染は確認されませんでした。

今回も、前回のコラム(←クリックすると7月18日のコラムが開きます。)の続きを掲載します。
前回掲載した質問の1点目と2点目は、市内の学校全てに関する総括的な内容でしたが、今回掲載する質問の3点目と4点目は、感染した児童生徒の視点に立った内容としました。

児童生徒が欠席した場合の対応として、オンライン授業の実施についても議論をするつもりでしたが、私の質問の前に、同じ会派所属の議員が取り上げるとのことでしたので私からは取り上げませんでした。

ICT機器の導入については予定が前倒しされて、西宮市議会6月定例議会で予算が成立しましたが、6月定例議会前の議案勉強会の時点では、オンライン環境に必要な機器が全ての小中学校に揃い、整備を終えられるのは年明けと見込んでいるという話もありました。

その後、「環境が整備された学校から機器を活用していくという考え」は、6月定例議会で明らかになりましたが、どの学校が、いつ頃環境が整い、いつ頃から活用するのか、という具体的なスケジュールが示されていません。
また、高校受験を控える中学校3年生や、新学習指導要領により授業時数が大幅に増加し、かつ卒業まで時間の猶予がない小学校6年生を優先にするといった考えも教育委員会にはない様子です。

前回のコラムの「本会議場での議論の概要」内に掲載していますが、新年度に入ってからでも2ヶ月も教育活動を止めるだけしかせず、この6月議会で今後の対応が問われることが明白であったわけですから、機器の導入スケジュールが定まっていないわけがありません。スケジュールを示すことで、様々な方面から苦情が出ることを恐れているとしか思えません。

市民に対してスケジュールすら示さないという姿勢には、正直驚きますし、「オープン西宮」が聞いてあきれます。

それでは、令和2年6月議会一般質問のやり取りを掲載します。

======本会議場での議論の概要=====

令和2年6月議会一般質問(6月26日)

1.学校における感染症対応について
(感染した児童生徒の個人情報の保護及び学びの保障)
■質問3
教員や生徒に感染者や濃厚接触者が確認され出席停止となった場合、SNS等により個人が特定される可能性は極めて高いと考えます。特定されると出席停止となった児童生徒が、差別やいじめを恐れ、再び学校に通うことができなくなることが心配されますが、個人情報を守る対策と出席停止中の児童生徒の家庭学習の支援、連絡手段についてお尋ね致します。

■質問3に対する教育委員会の回答
西宮市では、児童生徒もしくは教職員が陽性と判定された場合には、保健所と相談の上、臨時休業もしくは学年、学級など一部の閉鎖とすることとしております。
議員御指摘のように、児童生徒の欠席状況やSNSなどでの情報拡散から個人が特定される可能性もあります。コロナウイルス感染症に関するいじめや差別への対応として、学校園においては、感染症の不安が差別を生み、拡散につながることへの危険性について正しく理解することで、互いを認め合い、過ごすことができる心の醸成に取り組んでおります。

また、情報モラル教育にも取り組んでおります。児童生徒がインターネットの情報を取り扱う際に身につけるべき態度や情報化社会でのマナーやルールについて考えることで、自分自身の周りの人、画面の向こうにいる相手を大切にする心を育てていく取組を進めております。その推進に当たっては、児童生徒のみならず、家庭や地域の協力が必要であり、特に家庭の協力は必要不可欠であります。保護者の情報モラルの向上や間違った情報に惑わされない情報リテラシーも、子供たちへの情報教育を通して啓発を進めていきます。

さらに、教育委員会では、ネット上での書き込みを発見するために、日頃からネットパトロールを実施しております。児童生徒の個人名や学校名が発見された場合には、当該校とも情報を共有して対応しています。引き続きネット上での感染や濃厚接触の疑いに関する情報等を発見するためには、ネットパトロールの強化も課題として認識しております。
今後も児童生徒一人一人が大切にされる学校づくりを進めてまいります。

次に、
個々の学習状況に応じた補習については、学校は、欠席した児童生徒に対して、電話や家庭訪問などにより、丁寧に心身の状況を把握し、欠席する期間の家庭学習の指示や、欠席となった授業についてはノートのコピーなど授業の内容が分かるものを渡すなどを行い、登校後に学習の状況を把握し、必要に応じて個別に学習指導を行います。現在、ICT環境の整備にも努めており、今後、電子ドリルや双方向のコミュニケーションについて、できる限り早い段階で利用ができるよう準備作業を行っているところです。

(学校復帰後の学習支援)
■質問4
2週間もの出席停止期間が明け、陰性が確認された後に学校復帰できたとしても、児童生徒の個々の学習状況に応じた補習が必要不可欠であると考えます。他市では補習に大学生を活用する事例もあるようですが、補習体制の強化の備えと、教員による土曜日の補習を実施する用意はあるのかお尋ね致します。

■教育委員会の回答
補習体制の強化については、既に国や県は学習指導員を追加配置する方針を示しており、本市でも、そのことを受けて、授業中や放課後の補習の支援者として学びの指導員による支援時間を増やしてまいります。今後は学習指導員の確保が課題であり、現在国の学校・子供応援サポーター人材バンク名簿に登録いただいている方への連絡を行っており、さらに、今後は、大学を通じて学生に対して学習支援の募集を行ってまいります。

また、土曜日については、今後、臨時休業を実施した場合、授業日とすることも視野に入れているため、教員による計画的な補習を行う日とすることは考えていません。

■意見・要望
個人情報の保護についてですが、今日の答弁では非常に危険だと感じています。モラルの啓発とか曖昧なことを言っている場合ではないのではないかと。私はちょっと心配し過ぎなのかもしれないのですが、出席停止になって、その間に学校が再開されると、その子が感染した、もしくは濃厚接触者になったみたいなことはすぐに分かってしまいます。
その子にとったら、差別みたいなものがもしあるとすれば、学校に復帰できない、そういったことが起こらないように、徹底して厳格に取り組んでいただきたいと要望しておきたいと思います。

それと同時に、「1回休むともう行かれへんようになるやんか」みたいな恐怖心から学校に連絡しないでおこうみたいことにならないように、今度は保健所のほうから学校関係者の感染もしくは濃厚接触者について、感染の場合はあると思うのですが、濃厚接触者に特定された場合等々、学校にも確実に連絡がいくように、そして、感染拡大の防止をしっかりとする、そのためには、個人情報をしっかり守ってあげる、その子供を守ってあげることが大事だと思いますので、そのセットで対応を具体的に定めておいていただきたいと思います。

教育活動の遅れの対処についてですが、こちらについては、先ほど吉井議員からもオンライン授業に関する議論がございました。
いつごろの実施を目指して動かれているのかというのはまだ分からないのですが、これまでに「まなみや」を作られて、今は更新をストップしています。こういった対応(まなみやの更新継続)、また、授業動画の配信といったことも含めて、今後、休校措置を取らざるを得ない、そういった可能性が非常に高いと思っておりますので、そういったことを想定して、オンラインの環境、大至急準備を進めて、保護者への説明のほうもお願いをしておきたいと思います。

=====ここまでが、本会議場での議論の概要=====

電子ドリルや双方向のコミュニケーションを、「できる限り早い段階で利用できるように」との回答があり、利用できるようになることはありがたいのですが、それが、8月17日からなのか、10月くらいからなのか、3学期以降なのかによって、備えが全く異なってきます。オンライン対応の環境が整うまでに、濃厚接触者となってしまって学校を2週間休まざるを得なくなった場合の欠席期間中の具体的な対応を早く示すべきです。

また、この夏は、先生方への機器やソフトの利用に関する研修が計画されていることは明らかにされています。一般の大人が普段の生活でやっているように、取扱説明書を読んだり、ネット検索で機器やソフトの使い方が習得できるような内容については、自分たちでマスターしてもらって、研修については、オンライン授業の進め方や注意点の伝授など実践的な内容にしてもらいたいと強く願います。

現在、再び感染の確認数が増えているものの、まだ、春に比べると雰囲気は落ち着いています。西宮市では、あと10日で夏休みに入りますが、2週間の夏休みが過ぎた頃には、また状況が変わっていることも予想されます。
今後、現実感が増してきた「再び学校を一定期間休校しなければならない事態」に備えて、導入された機器を在宅学習に活用することを最優先してもらいたいと思います。

そして、感染拡大を防ぐためにも、勉強がついていけなくなる、いじられるのではないか、という恐怖心や不安から児童生徒・保護者を守ることで、安心して休んでもらう必要があります。
安井小学校のホームページには、今回の臨時休校を経験し、保護者に対する差別・偏見に関する文書が公開されていました。こうした啓発が重要であり、合わせて、具体的に事案が発生した場合は、最終的に加害者の氏名を公表するくらいの厳格な対応をしなければ、児童生徒を守ることはできないと考えています。

・家庭学習の支援・学校復帰後の補習
・個人情報の保護及びいじめの防止

この2点をセットは重要です。

今後の対応を注視します。

教職員が感染もしくは濃厚接触者となった場合については、質問時間の都合上、質問できませんでしたが、特に、高齢の先生については命にかかわることでもあり、その先生が担当するクラス全員の学習や心理に影響が及ぶことにもなります。質問1点目と2点目の対応と同時に、先生の安全と、感染した場合にはスムーズに復帰できるよう教育委員会はフォローする必要があり、この対応は学校任せでは負担が大きすぎます。

学校の負担軽減等については、次のコラムに続きます。

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