市立中央病院の経営改革ー平成15年12月議会一般質問

2005年7月6日[カテゴリ:市立中央病院, 質問

地方公営企業法の全部適用。

◼地方公営企業
 まず、地方公営企業とは、地方公共団体が、住民の福祉の増進を目的として設置し、経営する企業のことです。事業例としては、水道、工業用水道、病院、交通、ガス、電気、地域開発(港湾、宅地造成等)、観光(国民宿舎、有料道路等)があります。
 一般行政事務に要する経費が権力的に賦課徴収される租税によって賄われるのに対し、公営企業は、提供する財貨又はサービスの対価である料金収入によって維持されます。

◼地方公営企業法の適用
 水道、工業用水道、交通、ガス、電気各事業については、自動的に地方公営企業法のすべてが適用されます。全部適用と言われています。病院事業については、地方公営企業法の財務に関する規定だけ自動的に規定されますが(一部適用)、条例でどの規定を適用するか自治体で決めることができます。
 また、地域開発(港湾、宅地造成等)、観光(国民宿舎、有料道路等)、下水道事業や、と畜場、市場などは、地方公営企業法を適用せず、特別会計で運営しても良いことになっています。
 地方公営企業は、公営企業会計方式で経営されることになっています。地方公共団体の一般会計や特別会計が現金主義会計、単式簿記を採っているのに対し、公営企業会計では発生主義会計、複式簿記を採用し、損益計算書、貸借対照表等の作成が義務付けられています。
 この点は、地方公共団体の決算書に馴染みのない方は、理解しづらいかもしれませんが、地方公共団体の会計は単年度会計で、その年度に入ってきたお金と出ていったお金が記されているだけです。公営企業会計は、民間企業の会計方式とほぼ同じであり、資産や負債の状況も年度会計に反映されており、現在の経営状況と共に、将来を見据えた経営判断が可能になると言えます。

◼西宮市はどうなっているか。
 西宮市は、水道と工業用水道、病院事業を実施しており、病院事業は、地方公営企業法の一部適用(財務規定の適用)となっています。その他、下水道事業や前回のコラムに掲載しました食肉センターは特別会計で運営しています。

◼全部適用のメリット
 全部適用にするということは、組織の規定と職員の身分取り扱いの規定も適用されることにより、①組織の機動性の確保、②人件費の硬直性の緩和の2点のメリットが考えられています。
①組織の機動性の確保
 全部適用を行うと、市長に変わって常勤の管理者を置き、組織の指揮監督を行うことになります。経営に専念できることから、他の業務に時間を拘束されず、より機動性が確保された経営を行うことができるようになります。
 また、管理者が資産の取得、管理、処分や契約の締結等を迅速に実施することができるため、徹底した効率化や支出の柔軟な運用ができるようになります。

②人件費における硬直性の緩和
 財務適用の場合、人件費は、地方公務員法が適用され、例えば、経営状況が良好でない場合でも、市役所と同様、その支出を任意に削減することは難しく、企業経営の悪化を招きやすくなってしまいます。そこで、全部適用をすると、経営状況を考慮して給与を決定することが可能になるため、人件費の硬直性による経営悪化を招きにくく、経営状況が良好な場合に期末手当等による給与増額を行うことで、職員の勤労意欲や能率の向上も期待できます。

 平成14年度の病院事業会計決算では、収支は5億円の赤字、一般会計から病院会計への繰入金は約10億円となっています。一方で、給与費比率は61.4%と非常に高くなっています。

 平成15年6月議会では、多額の税投入をしている公立病院としての役割を果たすという観点から中央病院改革を求めて議論しましたが、12月議会一般質問でも再び取り上げ、中央病院改革を機動的に実施しやすくなることが期待される地方公営企業法の全部適用について議論しました。

====本会議場での議論の概要====

平成15年12月議会一般質問

3.組織について
イ)中央病院への地方公営企業法の全部適用
■質問の背景

 西宮市立中央病院では、現在、地方公営企業法のいわゆる財務適用を行っているわけですが、兵庫県では、昨年度より県立病院に対して地方公営企業法の全部適用を行いました。この措置が経営状態に影響を及ぼすのはもう少し先のことと考えられますが、高度医療、特殊医療の不採算部門を除く医療に関してより効率化を図るという意味では、大変効果のある措置であることが期待されております。
 平成14年の3月議会ですので、およそ2年前になりますが、それから何度か同様の質問が議会でもなされておりましたが、そのときには、経営改善計画を策定し、取り組んでいくという御答弁をなされ、全部適用については、特に御答弁はなされていないのではないでしょうか。
 国では、平成16年度より、高度かつ専門的な医療センターを除く国立病院を独立行政法人化し、経営は各病院にゆだねることが決まっております。また、地方財政健全化のための手段ともとれる地方独立行政法人法が今年7月に成立し、本市で言うと、水道事業、病院事業への適用の可能性が出てきました。
 
 公立病院の果たすべき役割、つまり市民に対して高度な医療を安心して提供できる状態を保つという役割を果たしながらも、一般の医療部門に関しては独立採算制を原則とすべきですし、そのためには診療科別もしくは疾病別の収支計算をする必要もあるかと思います。
 今年度から実施されている3ヶ年にわたる健全化計画を見守ることも必要でしょうが、その責任者を明確にするためにも、また、現場での柔軟な対応を可能とするために、例えば医療サービスや組織づくり、経営改善策の実施ができるよう権限を現場に移譲するために、また、自立した経営を職場全体に広めるためにも、最終的には地方独立行政法人法の適用も視野に入れた地方公営企業法の全部適用を行うべく、検討委員会を立ち上げる等をして検討を始めるべきであると考えます。

■質問
 目立ったデメリットはなく、結果として経営改善と公立病院の果たすべき役割の明確化が可能となると考えられますので、検討委員会等での議論はむだではないと考えます。国の動向を見ての法適用についてお考えをお聞かせください。また、検討をする意思がないのであれば、その理由もお聞かせください。

■市の回答
 中央病院への地方公営企業法の全部適用についてでありますが、全部適用致しますと、法律上は任意適用とされております組織及び身分取り扱いに関する規定を条例で定めることによりまして、病院事業の組織を独立させ、職員の任免、給与等の取り扱いなどの権限が管理者に付与されることになります。
 全国の自治体病院1,076病院のうち全部適用しているのは137病院であり、全体の12.7%と低い割合にとどまっている現状にありますが、最近では、病院経営の責任の明確化を図る上で、全国的に法の全部適用の導入が推進される傾向にあります。また、御指摘のとおり、兵庫県でも、平成14年度から全部適用を行い、県立12病院の経営にあたっているところでございます。
 地方公営企業法を全部適用することによりまして、経営責任をより明確にするとともに、人事システムなどを見直すことで現状の改善を図る余地は大きくなるものと考えられますが、他方、全部適用することで直ちに収益の増や収支の改善につながるなど、即効的な解決が図られるものではございません。こうした状況から、当院と致しましては、まず、経営の状況を短期的に改善していくことが当面の最善の策であると考えておりまして、将来的には、経営健全化計画の進捗状況を検証していく中で、地方独立行政法人法の適用の可能性も探りつつ、地方公営企業法の全部適用について検討してまいりたいと考えております。

■意見・要望
 地方独立行政法人法の適用も視野に入れて地方公営企業法の全部適用も検討したいとのことでしたが、経営健全化計画の進捗状況の検証の最中にも、この全部適用についての検討も前向きに行うべきです。たとえ全国での適用実態が13%であろうとも、国や県の動向を見ていても、前向きに検討するに値すると思います。
 そして、自治体病院の果たすべき役割をいま一度認識していただきたいと思います。私が6月に質問しましたが、第1にあるのは、政策的医療、そして高度医療、特殊医療といった不採算部門の医療を提供するということであるはずです。兵庫県が始めたとおり、経営健全化と同時に構造改革が必要なのではないでしょうか。院内全体での意識改革を浸透させていくためにも、ぜひともこの全部適用について検討していただきたいと思います。

■平成15年12月議会一般質問全体のまとめ
 問題提起を含めた要望を申し上げました。いずれの項目も難しい問題であることは重々承知しています。しかし、民間では、今そういった苦しいことをやっているんです。数々要望を申し上げましたが、いずれも問題提起としてお取り組みいただきたいと思います。
 今回は、行財政改善に向けた取り組みを中心に質問させていただきました。コストばかりを問題にして、節約してくださいとお願いしているばかりでは、説得力に欠ける部分もあるかもしれません。というのも、こう言っている自分たち議員も、当然市税が使われているからです。そして、その使い道を決定できるのは自分たち自身であることは、自分も自覚しているつもりです。今後、議員定数の問題も含んだ議会関係経費についても議論していかなければならないと認識しておりますし、現に現在も一部については議論がなされております。今後も、諸先輩議員の皆様、同僚議員の皆様の御理解と、そして御指導を賜りますよう最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 他の公立病院での実施例が少ないことを理由にするなど論外です。現実的にメリットを活かせるのか、医療スタッフの確保がしにくくなるなど市民にとってのデメリットはないのか、そうした具体的なことを検討し始めるべきなのです。
 引き続き、議論して参ります。

■最終目標
中央病院の基準内繰入れのみでの黒字化

■講じるべき手段
中央病院への地方公営企業法の全部適用
経営責任の明確化と経営体制の硬直化の是正

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