図書館の開館時間の延長と今後の方針

2013年10月17日[カテゴリ:その他政策, 質問

 議会での議論や市民より寄せられますご意見を伺うと、市立図書館に対する市民の期待は、年々高まっていることを感じます。

 市民から寄せられるご意見として多いのは、蔵書の充実と開館時間の延長です。この開館時間とは、開館する時間の繰り上げと閉館する時間の延長です。
 
 図書館は、9時から開館する公民館などの公共施設とは異なり、開館するための準備に一定の時間を要します。閉館時間についても、仕事をしている方が西宮に帰ってきて利用するには閉まるのが早すぎますので、公民館のように閉館時間を遅くしてもらいたいところですが、図書の管理にかかる人件費のことなど様々な課題が考えられ、なかなか実現していません。平成16年6月議会(←クリックするとコラム「図書館運営の効率化」が開きます)で提案したとおり、IT技術を活用すれば、もっと多くの方に利用して頂く環境になると考えています。
 
 平成24年4月より、北口図書館では、開館準備業務を民間事業者に委託して、開館する時間が午前10時から午前9時へと繰り上げられました。しかし、同じ拠点館に位置づけられている中央、鳴尾、北部図書館については、民間委託されることなく、10時開館のままとなっています。

 この対応の差を受け、4つの拠点館の中でも、市立図書館の核と位置付けられてる中央図書館が他の図書館よりも開館時間が短いことに対する違和感が拭えず、平成25年6月議会一般質問において、民間委託による開館する時間の繰り上げと、図書館の今後の運営方針の明示について議論しました。
 
=====本会議場での議論の概要=====

平成25年6月議会一般質問

3.図書館について
■質問の背景・田中の見解
 昨年の4月より、開館に伴う一部業務を民間に委託し、北口図書館の開館時間が午前9時に繰り上げられました。そして、以前より、中央図書館についても開館時間を9時に繰り上げられないのかという声を頂いてきました。
 昨年12月に文部科学省から、図書館の設置及び運営上の望ましい基準が告示されました。その中で「開館日時等」という項目があり、「利用者及び住民の利用を促進するため、開館日・開館時間の設定に当たっては、地域の実情や利用者及び住民の多様な生活時間等に配慮するものとする」とされています。
 高齢化が進む本市において、高齢者の散策に適した緑豊かな夙川の堤防沿いに位置する中央図書館の一層の利用促進を図るために、直ちに利用者のニーズ調査と費用分析を実施し、対応するべきと考えます。
 また、この告示の中では、図書館の基本的な運営方針や目標を設定して事業計画を策定し、公表するよう努めるものとするという項目がございます。本市の図書館運営について、開館時間の延長以外にも、一層のサービス向上に向けた取り組みを市民に示すために、運営方針と実施計画を策定するべきと考えます。

■質問1
 北口図書館同様、民間委託などの民活手法を活用すれば、中央図書館の開館時間も午前9時に繰り上げることは可能と考えますが、市の見解をお尋ね致します。

■教育委員会の回答
 まず、利用者の皆様が開館時刻の繰り上げに対してどの程度の要望があるかについての調査が必要と考えております。また、中央図書館のある教育文化センター周辺は、閑静な住宅地であることから、来館に際して自動車で送迎することなどによる早朝からの騒音問題も予想されます。
 したがいまして、開館時刻の検討にあたりましては、周辺にお住まいの住民の皆様の御理解が不可欠であると考えております。このようなことから、中央図書館の利用実態を把握するため、時間ごとの来館者数の調査を行うほか、図書館利用者に対するアンケート調査などにより、市民ニーズを把握する予定でございます。
 開館時刻の繰り上げにつきましては、周辺にお住まいの住民の方々の意向や開館時間の延長に伴う費用、また、図書館の基本サービスである蔵書や調査・相談業務の充実などとの優先順位をもとに、総合的に判断してまいります。

■質問2
 今後も図書館サービスの一層の向上を図るために必要な運営方針と事業計画及び実現に向けた財源を示すべきと考えますが、図書館の設置及び運営上の望ましい基準にある実施計画を策定するお考えはないものか、お尋ね致します。

■教育委員会の回答
 平成24年12月19日付文部科学省告示「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」では、「市町村立図書館は、その設置の目的を踏まえ、社会の変化や地域の実情に応じ、当該図書館の事業の実施等に関する基本的な運営の方針を策定し、公表するよう努める」とともに、この「基本的運営方針を踏まえ、図書館サービスその他図書館の運営に関する適切な指標を選定し、これらに係る目標を設定するとともに、事業年度ごとに当該事業年度の事業計画を策定し、公表するよう努めるもの」とされております。
 本市図書館では、昨年7月に社会教育委員会議に対して、新しい時代に対応した生涯学習推進の拠点としての今後の図書館のあり方についてを諮問し、図書館運営における市民参画と協働や学校図書館との連携強化について、本年1月に答申を受けております。また、昨年8月には、「ザ・チェック!西宮」の評価対象事業となり、評価結果を踏まえた今後の進め方として、図書館利用者アンケートや市民意識調査などの活用により、ニーズを把握、分析し、市民の望む図書館像を確立する取り組みを進めていくとの方針を定めております。
 今後は、図書館の設置及び運営上の望ましい基準や社会教育委員会議の答申、さらには、図書館利用者アンケートの分析結果などを踏まえ、本市公立図書館の基本的運営方針を策定し、あわせて事業計画の策定にも取り組んでまいります。

=====ここまでが、本会議場での議論の概要=====

 開館時刻の繰り上げについては、開館準備業務の工夫、効率化の問題よりも、周辺住民への配慮の方が大きな要素であることが明らかにされました。

 確かに、北口図書館は西宮北口駅前にある商業施設であるアクタ西宮の館内に設置されていることから、開館時刻を早めても、周辺住民に及ぼす影響は少ないように思います。しかし、そうした観点では、北部図書館も西宮名塩駅前にある塩瀬センターの館内にあることから環境は北口図書館と類似しています。ですので、北部図書館については、開館時刻を早めた時間帯に利用者がどの程度いらっしゃるかのニーズ調査が必要ということになります。閉館時間の差についても、課題は同じと考えられます。
 
 中央図書館と鳴尾図書館については、ニーズ調査に加えて、周辺住民の生活環境に及ぼす影響について理解を得ていく必要があります。

(追記)
 平成27年3月に、「西宮市立図書館基本的運営方針」と「西宮市立図書館事業計画」が策定され、平成27年4月より中央図書館、鳴尾図書館、北部図書館の開館時刻が30分繰り上げられ、午前9時半より利用できることとなりました。
(追記終わり)

 今後も、持続可能性を考慮しつつ、ニーズに合わせた図書館運営が実現するよう、民間委託やIT技術の活用を求めたいと考えています。

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