PFI手法の検討-平成16年6月議会一般質問

2005年7月15日[カテゴリ:財政・財政改革, 質問

 PFI手法を使った再整備の検討が行われている東部総合処理センターについては、1年前の平成15年6月議会(←クリックするとコラム「PFI手法の適用」が開きます。)で取り上げましたが、引き続いて平成16年6月議会一般質問でも取り上げて議論しました。 
 PFI手法の概要についても、こちらのコラムにも掲載しています。

====本会議での議論の概要====

平成16年6月議会一般質問

1.東部総合処理センター再整備について
■PFI手法に関する議論の経過

 現在、プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(以後PFI手法)、PFI手法の導入という本市にとって初めての事例となるかどうかの瀬戸際で検討されています。
 
 これまで議会において数々の質問があり、市は御答弁されています。実現すれば数十億円のコスト削減も期待できる事業の検討段階ですので、しつこいようですが、今回も質問させていただきます。

 ここでまず、西宮市議会におけるPFI手法についての議論の経過について簡単に振り返ります。
 このPFI手法という用語が西宮市議会で初めて登場したのは、平成10年の9月議会でした。今からもう5年半も前のことです。私は大学生でした。この時は、国の法整備もされていない中で、イギリスで成功していることから、財政再建のための有効な手法として提案がありました。当時は第2次行財政改善実施計画の策定に追われていた頃です。当時の市長である馬場市長みずからがお答えになり、国の取り組み状況などを慎重に見守り、制度の内容について種々調査研究を行うとの御答弁をなされていました。
 
 ここからが本市におけるPFIに関する論議の始まりとなったわけですが、その後、行政方針や会派の代表質問などに対する答弁の中でも「調査研究」に着手するとあり、平成11年7月にPFI法が成立し同年9月に施行され、議論も本格化してきます。もう4年も前から具体的な事業への適用を踏まえた議論もされています。

 そして、平成12年12月議会での山田市長による所信表明演説において、はっきりとPFI手法にも言及されました。その後、平成13年3月議会での蒼志会の代表質問において、秋田県大館市や千葉県君津市において、一般廃棄物処理施設の整備がPFIで行われつつあることから、この東部総合処理センター再整備に適用してはどうかと提案され、市は、「ごみ処理施設におけるPFIの導入にあたって、従来の方式とコスト面での比較を行い、事業者の選定にあたり、技術面、資金計画、運営収支の見通し、リスクの分担、ごみ量、ごみ質といった多岐にわたる諸要素の分析、検討が必要となってくる」と、課題をあげた上で検討を進めるとの御答弁をされています。つまり、ここからが東部総合処理センター再整備へのPFI手法適用に向けた調査研究が始まったと言えます。これが3年前です。
 
 その後もPFIという文言がたびたび登場し、この事業への適用以外にも具体例は上がるものの、適用可能性を検討する具体的な研究、ケーススタディにまでは至っていなかったようです。

 そして、私にとっての初めての一般質問となる昨年6月議会において、本件における調査研究の進捗状況を伺った際に、「平成16年度中に従来の事業手法で再整備を行うのか、それともPFI手法を適用するのか結論を出す。」と、初めて調査研究の具体的な期限に言及する御答弁を頂き、評価したところであります。これが1年前のことです。

■今回の質問至った背景
 しかし、本年3月議会での蒼志会代表質問に対する市の御答弁を伺って、また新たに疑問がわきました。

 そのご答弁は、「PFIについては、現在のところ、ごみ処理施設における契約事例が少なく、実績によって運営状況を判断することは困難であり、また、将来のごみ量、ごみ質、物価や金利の変動、維持管理費などを正確に想定することも困難なことから、他市の契約事例では、これら社会情勢の変化などによって契約金額を変更する旨の条項が設けられているので、PFI手法が必ずしも経済的とは言いがたい面があるとも考えている。新年度においては、学識経験者の助言も入れながら、各種事業手法の特徴や経済性を比較し、ごみ質、ごみ量の変動、関係法令、維持管理基準の改正に対する適応性、ごみ減量施策との整合性、PFI方式が前提とする20年にも及ぶ長期間契約の問題点、現有職員の配置並びに市のごみ処理責任のあり方などを総合的に検討した上で事業手法を取りまとめる。」という内容でした。
 
 疑問というのは、
 まず、「実績によって運営状況を判断することは困難」といったことは、PFI手法全体にかかわることで、何も一般廃棄物処理施設に限ったことではありません。また、「ごみ量、ごみ質の変化、物価や金利の変動」については不確定要素ですので、これによって維持管理経費も変わってくる可能性はあります。むしろPFI手法は、そういった将来予測が困難なリスクについては重点的に官と民のリスクの分担を決めておくべき事項であって、そこに民間のノウハウを活用するものであるはずです。にもかかわらず、そうしたリスクが経済性を判断する材料としていること自体おかしいと考えます。そうした不確定要素を、直営、もしくは外部委託方式であれば、事前に防ぐことができるわけではありませんし、経済的になるとは限りません。

 次に、ごみ減量施策との整合性についても、ごみ減量施策によって東部総合処理センターの処理量に数年で影響を及ぼすほどごみの量が減って、「直営で運転していた方が運転経費はもっと安くすんだ」といったことになるのではないかということを懸念されていると推察されます。しかし、それだけごみ量が減るということは環境面から見ればむしろ歓迎すべきもので、その場合には、当面は西部総合処理センターとの併用で処理を行うわけですから、西部総合処理センターの炉の傷みぐあいが懸念され、建設当初の想定よりも早くに再整備が必要になる可能性もあるくらいです。ですので、ごみが大幅に減量した際には、東部総合処理センターを中心に処理すれば、西部総合処理センターへの負荷も軽減でき、東部総合処理センターにおいて処理すべきごみ量は変えずにすみます。
 
 関係法令や維持管理基準が変わった際のリスクを市が負わなくてはならないとしても、それは直営もしくは外部委託方式の運転であっても、コスト面では同じことです。
 長期間契約の問題を検討材料に入れているとすれば、PFI手法そのものを否定することであり、今後、市が全庁的にPFI手法の浸透を図ることが盛り込まれている「行政経営改革基本計画」を否定することになります。直営(従来手法)で行えば、リスクをすべて市が引き受ける形になるわけで、そのリスクを官と民で分担するというメリットを考えれば、そのリスクの分担さえ適正に行えば、基本的にはPFIの方が高くついてしまうとは考えられません。
 この「適正なリスクの分担」に関しては綿密な調査が必要であり、現在そうした研究を進められていると私は信じています。

 しかし、事業適用検討段階の現在、本件における具体的な内容については、これまでの議会での議論では出てきておらず、特に数値を用いた議論が出てきていません。具体的な内容、成果等について、中間報告という形ですら示されていません。具体的に、どのような検討を市がされているのかということが非常に不透明なのです。
 PFI手法は、VFM評価や官・民の適正なリスク分担などに時間をかけ、定量的な分析と定性的な分析を綿密にしていかなければならないことは以前にも議会で指摘されているところであります。
 適用検討段階もそうですが、適用決定後も、引き続きそうした調査を民間事業者主導で行っていただき、本市としては、最良の事業者を選定できるだけのスキルが必要となりますので、さらなる研究は欠かせません。

■PFI手法のスキーム 
 さまざまな意味で時間をかけて事業者を決定していかなければなりません。つまり、PFI手法適用決定後のスキームも具体的に決めておかなければならない時期だと思われます。

 概要になりますが、ここで少しだけ説明致します。
 
 PFI手法の現在の事業手法決定までのスキームを資料(←クリックしてご参照ください。)に掲載しました。
 
○事業の発案
 PFI手法が適用できそうな事業の発案になります。また、本件に関しては、PFI手法であろうと直営であろうと絶対に必要な事業ということになります。

○事業化の可能性調査
 次に、事業化の可能性の検討に入るわけですが、現在はまさにこの段階で、経営コンサルタント等の第三者の参画を得て客観的に判断していくべきと言われています。そして、肝心なのは、検討している手法ごとの具体的な事業スキームの設定をしておかなければならないという状況なのです。そして、先ほどから申し上げているとおり、官と民のリスク分担についても、もう見積もっておかなければならず、さらに、VFMの検証もしておかなければなりません。

○民間事業者の参入可能性
 この段階ではまだ意向調査になりますが、これは、PFI手法で実施した際に、担って頂く民間事業者がなかったということも考えられますので、「PFI手法で実施すると決まったら手を挙げますか」ということも民間事業者に聞いておかなければなりません。こうしたことを勘案して、最終的に事業手法を決定しなければなりません。

これらのことを平成17年3月までに行わなければいけないわけです。

 実際に平成17年3月まで時間をかけていいのかというところは、予算に挙げる時間の関係もありますので、疑問が残るところではありますが、事業の発案から現在約3年間経過しているという状態であります。
 
 その後、PFI手法で実施することになれば、
・実施方針の策定、公表
・特定事業の評価、選定、公表
・民間事業者の募集、表か、選定、公表、
この段階が入札にあたります。
・最後に協定等の締結
というスキームになります。そして、協定が結ばれ、ようやく事業に入ります。

 もちろん、これら一つ一つの作業に複雑な作業が必要となりますので、相当の時間を要すると考えられます。

■VFM(バリュー・フォー・マネー)の評価
 こちらも資料に掲載しました。
 
 まず、従来どおりの方式で行った場合にかかる経費はPSCと呼ばれています。
 PFIで行った場合の想定の金額を見積もります。この図(←クリックしてご参照ください。)で説明しますと、下が運営と維持、上の方が施設整備という分け方をしていますが、この運営、維持管理(白い部分)の部分が少なくなっています。仮に、上のこの黒い部分が、従来方式で実施するよりもPFIの方が安いとなったら、この部分がバリュー・フォー・マネーになるということになります。

 こういった評価を行うそうですが、実際にPFI手法を適用した場合は、実施方針の公表後、特定事業の選定段階で民間事業者の見積もりを参考にしたVFMが算出され、当初のものよりも精査されてくるのだと思います。
 今説明したことは教科書のようなものであって、実際に東部総合処理センター再整備事業にあてはめて、具体的にどのような検討が行われているのかを明らかにしていくべきと考えたわけです。

====ここまでが本会議場での発言の概要====

 長くなりましたので、質問と市の回答については、次のコラムに続けます。

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