前回コラムで掲載しました第3次行財政改善実施計画(素案)に関する質問の続きとなります。
計画に盛り込まれた具体的な項目の中から「補助金の見直し」を取り上げました。補助金の効果や金額の妥当性を検証することなく、単に削減するだけでは真の改革とはなりません。
近隣他市の市議の方々と視察をした他市の先進事例を紹介した上で、補助金支給に関する「制度自体の改革」を提案しました。
====本会議場での議論の概要====
平成16年12月議会一般質問
1.第3次行財政改善実施計画について
イ)補助金の見直し
■質問の背景
今回の第3次行財政改善実施計画(素案)の中で「補助金の見直し」が項目として挙げられ、具体的な目標額として、13億5,000万円の削減という数値が示されました。これは、平成18年度の予算に反映させてからの3年間の目標額ということですから、1年間に約4億5,000万円の削減を目標とされているのだと思います。
現在の消費的経費としての補助金等の総額が年間約50億円強ですから、約9%カットの目標額を掲げられていることになります。これまでの枠組みで考えると、市独自で交付している補助金から一律で何%カットといった形で削減が図られることも予想されます。とすると、補助金の中には市独自では決めにくいものも含まれておりますから、一律10%カットでは済まない状況になります。一律削減というやり方には限界があるでしょうし、実際に団体等の活動が相当制限されて、補助金そのものの意義、効力を失うことすら予想されます。
ここで、抜本的な補助金制度改革を行った我孫子市の事例をご紹介します。
昭和61年から始まった第1次行政改革の中で、本市同様、補助金の見直しが項目として挙がっていたそうです。そして、平成元年に補助金等調査委員会を設置して見直しを行った結果、減額3件、統合1件、廃止0件となったそうです。これが、これまで通りのやり方で実施した結果です。
これでは抜本的な見直しにはなっていないということで、平成6年から始まった第2次行政改革の中で、実際に補助事業を含めた見直しの対象として77の事業の洗い出しを行おうとしたそうですが、一部の補助事業だけを見直すというのでは公平性に問題があるということで、ついに平成10年度に、次年度からすべての市単独の補助金を廃止するという大胆な施策を打ち出されたそうです。
ピックアップして削減、ましてや廃止するとなると、利害関係者からは当然反発があると判断し、一度市単独で交付している補助金を白紙に戻したわけです。
少し見えにくいかと思われますが、こちらのボードを使って説明させていただきます。
まずは、補助金交付基準を定めます。この段階で、これまでの補助金と合わせて新たな補助金も公募します。
その際に、①市民団体等からの公募のもの、②施策的に行っているもの、③国や県で制度を定めているもの、の3種類に分けます。そして、そのうち公募のものと施策的なものについては、第三者機関である補助金等検討委員会の審査を受けることになります。
この審査の判定基準としては、こちらの検討委員会が独自に審査基準を設け、時代度、実現可能性、創造性、我孫子らしさ、この4点に絞ったそうです。
時代度というのは、少子高齢化とか自然環境の保全、リサイクル、国際化、地域福祉、市民ニーズ、国、県の動向など、社会経済的背景に合致しているか否かということが観点になっています。
実現可能性とは、団体等の目的や熱意、工夫、計画性、活動内容、決算状況などから見た評価です。
創造性というのは、事業や活動の発想、着眼点、先見性、発展性から見た評価です。
我孫子らしさというのが、我孫子の自然、環境、景観、文化、歴史を生かしたものであるか否かという基準です。
この4つの項目の基準を設けて検討委員会で採点します。補助金の内容の一つ一つについてです。
その結果を提言書として検討委員会がまとめ、この提言書を市長に対して提出するのですが、その前に、こちらの点数をつけた段階で低い評価、点数が低かった補助金に関しては、その該当する団体等が公開ヒアリングによって再度PRができる場も用意されています。そうした手続を経て、市長の査定を受け、予算編成が行われるという手順です。
この場合、補助金等検討委員会の選定が重要な鍵を握っていることになります。徹底的に公開された環境と客観性を持たせた基準のもと、査定をやり直すわけです。
そして、認定された補助金は3年後、翌年に認定されたものは2年後、さらに、その翌年に認定されたものは1年後、それぞれ自動的に廃止となるサンセット方式を採用し、毎年の事業報告の提出は義務化しているものの、最初の手続から3年後の平成14年度にはもう一度すべてを白紙に戻し、同じ査定を受けなければならないようになっています。
その結果、ようやく前年度比5%の削減が実現したそうです。
こうした制度改革を行った補助金見直しの理念は、単なる歳出削減ではなく、新しい住民自治を確立することであるとのことでした。この理念が重要です。完全にまねをする必要はないと思いますが、本市では、こうした手続ができているようには思えません。一度交付を決定した補助金に関しては、毎年実績報告書等の提出は義務づけているものの、その効果や必要性が評価されているのかどうか、外部にはわかりません。
また、補助金の定義としては、憲法第89条、地方自治法第232条第2項、そして、本市の補助金等の取扱いに関する規則第2条第1項に定められているのですが、交付の判断基準に関しては、各所管の要綱に定められているものが大部分を占めています。
そして、実際の業務は、毎年積み重なる決まった補助金項目があって、多少の上下はあるかもしれませんが、決まった支出を行っています。こうした中で補助金を一本釣りで見直し、削減をすれば、不公平感が募り、反発があって当然のことと思います。
■質問
補助金交付に関する条例を改めて制定して、基準等、評価内容を公開する制度をつくると同時に、現在交付している補助金をすべて一度白紙に戻して、再度従来のものも新規のものも一括して公募し、第三者機関を活用する。そして、公開ヒアリングを行うなど公平な評価を受け、交付期限を設けることで補助金の効率性や意義そのものを見直す機会を定期的に設ける、こうした制度を創設するべきと私は考えますが、今回の行財政改善実施計画の項目に挙がっている補助金の見直しはどのような方法で臨もうとお考えなのかをお伺いします。
■市の回答
これまでの補助金の見直しは、団体間の公平性の観点などから、個別に廃止や削減をするのではなく、一律に削減するという手法で実施してきました。今回は、このような一律削減という手法ではなく、現在行政経営改革の一つとして取り組んでおります事務事業評価の手法を参考に、1件ごとの補助金をその目的や効果などの面から評価を行いまして、廃止も含め、見直してまいります。
また、個別の補助金の見直しとは別に、御提案いただいたサンセット方式も含めまして、補助金制度のあり方全体を総合的に見直すことも検討してまいりたいと考えております。
■意見・要望
補助金の見直しについてですが、今回の行財政改善実施計画の項目として総額の1割を占める目標額が上がっていましたので、我孫子市の例を挙げて(制度改革を)ご紹介致しました。三重県では、条例を制定して規則により、制度の明確化を図っています。
今回は、行財に反映できるかどうかは別にして、抜本的な補助金制度の改革も検討していただけるとの前向きの御答弁をいただきました。これはかなり前向きの姿勢と受け取りました。この行財政改善実施計画の推進を機に、補助金のあり方を含めて基準を統一して、公開された形での補助金交付決定プロセスが図れる補助金制度を構築し、今回の行財政改善実施計画において早い時期に結果を反映できるように取り組んでいただけますことを期待しております。
====ここまでが本会議場での議論の概要====
補助金制度改革については、非常に前向きな回答を得ることができました。今後も、動向を注視してまいります。