(仮称)市民参画条例ー平成17年6月議会一般質問

2005年10月16日[カテゴリ:市役所改革, 質問

 平成16年6月議会(←クリックするとコラム「行政経営改革の実現性③」が開きます。)において、行政経営改革基本計画の項目に上がっている「参画と協働によるまちづくりに関する基本指針の条例化」について、市の考えを問いましたが、漠然とした議論となってしまいました。

 そこで、1年が経過した平成17年6月議会一般質問において、改めて「参画と協働によるまちづくりに関する基本指針の条例化」の項目中の小項目である「(仮称)市民参画条例の策定」に絞って取り上げ、市の見解を問いました。

====本会議場での議論の概要==== 

平成17年6月議会田中正剛一般質問

2.(仮称)市民参画条例に向けて
ア)条例制定の意義
■質問の背景

 昨今、全国的に住民の参画と協働の取組みが進められ、自治基本条例やまちづくり条例など市の基本方針となる条例が制定されています。その条例において、住民に直接かかわりのある条例や計画を制定する際に、広く住民を公募し、会議を開いてもらい、必要であれば学識経験者やNPOなど専門家を招致して学習しながら、市から与えられたテーマについて一定の見解を提言としてまとめてもらうという流れを規定しているものもあり、その提言を市が受けて条例や計画の策定に反映させるという動きが活発になってきています。
 以後、この形式での住民の会議を「市民会議」と呼びます。

 西宮市の行政経営改革基本計画の項目に上がっている「参画と協働によるまちづくりに関する基本指針の条例化」については以前にも取り上げ、市民の参画と協働に向けた本市の意識を伺いましたが、まだまだ漠然とした議論しかできませんでした。

 今後策定を予定している(仮称)市民参画条例は、行政経営改革基本計画によると、昨年度に今後の方針と進め方を検討して、平成17年度と18年度で方針に基づく取り組みを実施するとなっています。
 実際には少し遅れているかもしれませんが、これまでのようなやり方で策定作業を行うのであればそうでもないかもしれませんが、この市民会議を立ち上げて策定していくお考えであれば、その会議の立ち上げから運営、そして提言を出してもらうまでに相当の時間と手間がかかると言われております。また、この手間と時間をかけなければ市民会議を開く価値も薄れるとされており、そろそろ整理を始めるべきだと思います。今日は、現段階での市の見解を問いたいと思います。

 まず、一般的な市民参画の手法としての市民会議のイメージを、ボードを使って説明させて頂ききます。皆さんは、資料の裏面をご覧になってください。

(市民会議のイメージ)
 これまでは、こちらの市民と市長をトップとした行政、この二つがありまして、その間に議会や審議会が入っていた、こういう構造であったと思います。そして、この部分に市民会議を市が開いて、市民に直接参画してもらいます。そして、市民会議から出てきた提言を行政が受けて、必要に応じて審議会に諮り、そして議会に対しては提案して承認を得る、もしくは議会に対する報告をすると、こういった非常に複雑な構造になってくるというイメージとなります。

 これまでは、参画だけでいえば、議会に選挙によって送り出すという行為が市民にとっての参画であり、公募委員も入っている審議会も設置されながら、議会や審議会と行政と、そして既存の諸団体だけで大体が行われていました。資料の方にも示しましたような多様化した、そして複雑化したこちらの課題、「市長」と書いたところの下にそれぞれ課題を書きましたが、そうした複雑化した課題やニーズに対応できなくなったため、市民の協働が必要となり、一般の市民を巻き込んで諸課題に取り組まなければならなくなり、こうした仕組みが一種の全国的にははやりになっているわけです。

 市民会議の特徴として、メリットとしては、資料にも載せましたが、審議会のようにこれまで行政がつくったものを審議するといった形ではなくて、
①白紙から議論を始められる、
②ボランティアでの参加が基本となりますので予算的に開催日数に制限がない
③情報提供によって住民の行政に対する理解が深まり、行政と住民の距離が縮まる
といったことが挙げられると思います。

 一方、デメリットとして、
①住民の負担が増える、
②情報提供が中途半端であれば議論が浅くなる、
③偏った市民参画になるおそれがあることなどが挙げられます。

(整理すべきこと)
 (仮称)市民参画条例については、まだ何も具体化していない中ですが、整理しておくべきことが何点かあると思います。こちらも資料に示しましたが、こちらに挙げた項目は、私が考えただけでもという範囲ですので、まだほかにも挙がってくる可能性はあります。
  条例で規定すべきものとして何を規定するのかというところにも、このことは関わってきます。

1.市民会議で取り扱うテーマ
 まずは、今後予想されるテーマ、例えばマンション問題に代表される都市計画に関するもの、そして、教育や環境、福祉、福祉、福祉といっても、さらに介護問題とか医療の問題、子育て支援等、様々な課題があります。そして、防犯や防災、スポーツ振興など、(市民会議で扱うテーマとして)どういったテーマがあるのかということをまず想定しておく必要があります。
 これまでも行ってきた「まちかど三つの出会い」の活用で十分な場合もあれば、パブリックコメントを活用するものもあります。そこで、この市民会議の提案を求めるテーマとは一体どういった性質のものなのかといったことを整理しておく必要があります。

2.議会や審議会の役割
 また、これまでも公募委員にも入ってもらった審議会を開いてご意見を伺ってきたわけですが、所管する審議会が存在するテーマを扱う際には、この審議会と市民会議の役割も整理しておかなければなりません。議会の役割は、行政も含めて、一部の声の大きい者勝ちと言われる、いわゆる偏った参画と協働を抑止するための仕組みとなるでしょう。

3.市民の理解の醸成
 そして、徹底したPR活動を行う必要があります。以前から何度も申し上げていますが、これが中途半端になると、単なる行政の責任逃れになる可能性も秘めているからです。
 後ほど挙げます既存の条例や規則、そして現在行っている施策について、もっと市民の方に知って頂く努力が必要になりますので、そうした情報提供の進め方やPR方法も再検討しておかなければなりません。

4.既存団体や地域特性への配慮
 そして、自治会や社会福祉協議会、青少年愛護協議会、コミュニティ協会、スポーツクラブ21、防犯協会、まちづくり協議会、自主防災組織など、これまで課題が出てくるたびに、住民主導のものもあれば、県から言われてつくられた組織まで、多種多様に現存しております。
 地域によっても偏りのある、活動の活発さなど偏りのある団体の活動状況を把握して、既存の地域コミュニティの強化によって市民の参画と協働を促せないものか、あるいは新環境計画においてうたわれているエココミュニティ会議のように新しく立ち上げてやらないといけないものなのか、そういったことも整理しなくてはなりません。

5.住民のメリット
 もちろん、住民にとってのメリットも打ち出していかなければなりません。また、市役所から市民への責任転嫁とまでは言わないものの、言いわけのネタにされる危険性もあります。私も、一般質問の場でよく言いわけにされたものの一つに、何とか検討委員会といった答申があります。検討委員会に答申や提言を出してもらえば、議会でもその方向性が変わるような議論はできなくなっています。
 市民会議や任意団体の答申にどこまで実現性を付与できるのか、これも住民のメリットにかかわってきます。考えられる今後の方向性として、この条例を制定することで、平成21年度からの第4次総合計画のような私たち住民の生活のために策定される計画については、他の自治体の例を見ていても、総花的なものではなく、具体性を持った計画にするためにも、市民会議からの提言を盛り込み、策定していくことになる可能性も大いにあります。

6.多様な市民の参画を促進する方法
 また、透明性と公平性を担保する仕組みも作らなければなりません。自治会への加入率が低下している中での世代や職種などが多様となるような市民の参画を促す努力も必要となるでしょう。今後のテーマごとのケース・バイ・ケースにもなろうかと思いますが、その根本を決める、まず条例の制定ですから、そういったことをきっちりと整理しておくべきでしょう。

7.既存の団体との協働
 そのほかにも、住民に直接関係してくるような条例や計画を策定するたびに、行政からの働きかけで住民に組織をつくってもらい進めていくには、住民の負担ははかり知れません。となると、新たに誕生しようとしているエココミュニティ会議も含めて、既存の団体の協力をどのように得ていくのかといったことも重要になってきます。

8.新たに条例を制定する意義
 一方で、環境基本条例と新環境計画を策定する際に、既に市民会議が開かれ、提言に沿って策定作業が進められるなど、参画条例がなくともそうした動きが出てきておりまして、新環境計画では、地域に根差したエココミュニティ会議を設置していくことによって、環境に関する住民の参画と協働を促すような施策が始まろうとしています。これがうまく機能するかどうかはこれからの課題というところですが、既に参画と協働の動きは本市においても動き始めていることから、個別の条例で進めることも可能だと考えられます。

■質問(田中まさたけ)
 漠然としたところを徐々に明らかにしていくために、まずは基本的なところを伺いますが、この市民参画条例を策定する意義、何のために行って、どのように活用されるおつもりなのか、見解をお聞かせください。合わせて、どのような体制でこの条例を策定されるお考えなのかも伺います。

■市長の回答
 地方分権の進展や住民ニーズの多様化によりまして、地方公共団体においては、政策の立案や実施などを参画と協働に基づいて行うということが求められております。そこで、本市におきましては、これらの時代背景、そして参画と協働の重要性について、ともに理解を深めてまいりますとともに、その仕組みを整えまして市政運営の基本とするために市民参画条例を制定するものであります。
 そこでは、市民、事業者、行政それぞれが果たすべき役割や参画と協働によるまちづくりのルールを定めまして、各種の計画の策定を初めと致しまして、西宮市のまちづくりをともに考え、進めるために活用をしたいと考えております。
 また、本市におきましては、既に環境基本条例におきまして参画と協働による施策の推進に取り組んでいることから、新たに市民参画条例を制定しなくても、これらの個々の取り組みを積み重ねればよいのではないかとの御意見でありますが、各施策推進の取り組みに委ねていたのでは、それぞれの取り扱いが異なる恐れがございます。
 そこで、今後は、様々な分野で参画と協働を進めることを明確に致しまして、その取り扱いを進めるために新たな条例を制定するものでございます。

■市担当局長の回答
 条例制定の体制についてでございます。
 この条例の目的から、制定にあたりましては、まず、市政運営の主体であります市民の皆様に参画して頂くと、こういうことに致しております。また、この条例の制定に際しては、従来とは異なる新たな観点から法的問題などを検討する必要もありますことから、法律等の専門家の支援を受けることを考えております。これらの方々と行政がともに考え、議論を進める体制を組み、議会の御意見も頂きながら取り組んでまいりたいと考えております。

■意見・要望(田中まさたけ)
 (仮称)市民参画条例については、基本的なことを伺いました。当たり前のことを御答弁されたということはあろうかと思います。しかし、それをまず確認したかったです。
 市民会議のような場をつくって条例案を策定していこうというイメージもお持ちのようですので、今日提示したような内容、整理すべき事項についてそろそろ整理を始めるべきです。現段階では漠然とし過ぎているように感じます。市民会議でこうした基本条例の策定に対する提言、これをまとめてもらうのに大体1年ぐらいはかかります。
 
 行政経営改革基本計画どおりに平成19年の春に条例の制定を実現するためには、平成18年度の1年間をその期間で設けないといけないとなると、そろそろ準備しないといけないはずです。ですので、早急に取り組み始めて頂けるよう要望しておきます。今日申し上げた整理を始めておかないと、中途半端になってしまい、せっかく策定した条例も結局何のために制定したのかよく分からないような事態になりますので、その辺も踏まえて検討してください。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

次のコラムに、続きます。

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