産後のケア体制について②ー令和2年12月議会一般質問

2021年3月30日[カテゴリ:子育て・教育, 質問

 新型コロナウイルス感染症の再拡大がやはり懸念されていますが、昨年も3月に急増したことを鑑みると十分に予想されたことだと思います。

 西宮市では、先週3月21日(日)~27日(土)の1週間で96名(そのうち市外在住の方は8名)の方の感染が確認され、その前の週3月14日(日)~20日(土)が43名(そのうち市外在住の方は2名)でしたので倍増しています。これは、市内の私立幼稚園でクラスターが発生したことが影響していますが、その人数を差し引いても、約40名も増加していることになります。2週間前と比較するとほぼ5倍となり、今月に入り増加傾向に転じてから、急増し始めています。感染者数の増減で一喜一憂するフェーズはとっくに終わっているはずなのですが、冬場の医療崩壊の状態を経験するとやはり心配になります。
 昨年は4月以降に感染の拡大は収まっていきましたが、緊急事態宣言が発出されてからの収束でしたし、8割の接触削減もありました。現在、緊急事態宣言は解除したものの、飲食店の時短は続いている中での急増ですので、再び医療崩壊に陥る前に変異株の影響など増加要因の分析を急ぐ必要があります。
 
 一方で、昨日の新聞では、令和2年の1年間の死亡者数が、速報値で前年より9373人減少したとの記事がありました。
 令和元年の死亡者数は前年より年間約1万3500人増加し、平成30年は前年より約22000人増加していたので、新型コロナウイルス感染症対策に終始した令和2年が逆に1万人近く減少したことは意外でした。

 また、記事によると、肺炎による死亡者数は約1万4000人も減少し、インフルエンザの死亡者数も941人となり前年から7割も減少したとのことです。逆にそれまではインフルエンザで3000人以上の方がお亡くなりになっていたということも実感がないなかで過ごしてきました。
 他の疾患についても、脳卒中でお亡くなりになった方が約3200人減少し、急性心筋梗塞でお亡くなりになった方も1300人減少したそうです。ワクチンの接種が進み、油断によってこの減少の反動が来ないことを願うばかりです。 

産後ケア事業の強化

 さて、今回は、先日のコラムの続きとなります、令和2年12月議会一般質問で取り上げました「産後ケア事業」について掲載します。

 令和元年12月に母子保健法が改正され、以下の条文が加わり、市町村での「産後ケア事業」の実施が努力義務となりました。令和3年4月、つまり、明後日から施行されることになっています。

母子保健法の改正により追加された部分
(産後ケア事業)
第十七条の二
 市町村は、出産後一年を経過しない女子及び乳児の心身の状態に応じた保健指導、療養に伴う世話又は育児に関する指導、相談その他の援助(以下この項において「産後ケア」という。)を必要とする出産後一年を経過しない女子及び乳児につき、次の各号のいずれかに掲げる事業(以下この条において「産後ケア事業」という。)を行うよう努めなければならない。
一(短期入所) 病院、診療所、助産所その他厚生労働省令で定める施設であつて、産後ケアを行うもの(次号において「産後ケアセンター」という。)に産後ケアを必要とする出産後一年を経過しない女子及び乳児を短期間入所させ、産後ケアを行う事業
二(通所型) 産後ケアセンターその他の厚生労働省令で定める施設に産後ケアを必要とする出産後一年を経過しない女子及び乳児を通わせ、産後ケアを行う事業
三(訪問型) 産後ケアを必要とする出産後一年を経過しない女子及び乳児の居宅を訪問し、産後ケアを行う事業

2 市町村は、産後ケア事業を行うに当たつては、産後ケア事業の人員、設備及び運営に関する基準として厚生労働省令で定める基準に従つて行わなければならない。

3 市町村は、産後ケア事業の実施に当たつては、妊娠中から出産後に至る支援を切れ目なく行う観点から、第二十二条第一項に規定する母子健康包括支援センターその他の関係機関との必要な連絡調整並びにこの法律に基づく母子保健に関する他の事業並びに児童福祉法その他の法令に基づく母性及び乳児の保健及び福祉に関する事業との連携を図ることにより、妊産婦及び乳児に対する支援の一体的な実施その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

 西宮市では、この法律の改正に先立ち、平成30年10月より産後ケア事業を開始しました。

 そして、事業を開始するにあたっては、市は嘱託の助産師を採用しました。得意の直営です。民間の助産師の方々が従来から担ってきた事業であるにもかかわらず、西宮市は直営で実施しようとします。民間の助産師の方々に委託をするなり、民間の産後ケアの利用料に対する補助金を支給することで、より多くの方がスムーズにケアを受けられる体制が構築できたにもかかわらず、西宮市は直営で実施しようとします。
 
 翌年度(令和元年度)からは、嘱託助産師3名体制で実施され、人件費を含む令和元年度予算は1347万3千円でした。
 しかし、令和元年度1年間の利用者数は63名と非常に少なく、市の助産師1人あたりがケアを担当した方は21名ということになり、産後の方1名のケアを担当するために21万4000円の予算を投じたことになります。

 このような非効率なことを放置していていいはずがありません。

 そして何より、利用者数が伸びない原因として考えられることは、ケアを求める方が利用しづらい状況になっていると考えられることから、ケアが必要な方に確実に支援が届くように、民間との協働により体制を強化するべきではないかという視点で市と議論しました。
 
 また、質問の最後に、ケア利用者の安心を確保するために、訪問スタッフの積極的な陰性確認の実施についても要望しました。様々な政策において、新型コロナウイルス対策の観点は欠かせません。

====本会議場での議論の概要====

令和2年12月議会一般質問

2.産後ケアについて
イ)産後ケア事業
■質問の背景(田中まさたけ)

 本市では、母親の心身のケアと育児支援を目的として、産後ケア事業が実施されています。
 昨年の母子保健法の改正により、産後ケア事業が努力義務として法定化されましたが、本市では、法改正に先駆けて産後ケア事業を開始するために、会計年度任用職員Aの助産師(以後「嘱託助産師」と呼びます。)を採用し、自己負担2,000円でお一人4回まで受診することができるということになっています。
 しかし、先ほどと同様、令和元年度の出生を事由とする住民基本台帳異動件数3,826人に対して産後ケアを受けられた方はわずか63名、198回のみとなっております。

 これは、出産後4か月までのお母さんや家族からの求めがあってもケアを受けられないケースが存在し、その線引きが曖昧で、利用希望者にとって相談しづらい状況となっていることが原因の一つと考えられます。また、ケアの求めに迅速に対応できないケースがあるなどの課題もあり、利用者数が少数にとどまっていると推察しております。
 と言いますのも、全額自己負担で民間の助産師が行う従来の産後ケアを受けられている方が市の産後ケア事業の実施数をはるかに上回っていると伺っております。また、コロナ禍と相まってうつ病を発症する妊産婦が増えているとの情報もあり、専門家によるケアが低負担で確実に受けられるよう、対応の改善が急がれます。

■質問3(田中まさたけ)
 効率性も考慮して、産後ケア事業を専門性の高い民間の助産師会等に委託し、産後の心身のケアを求める母親が自己負担2,000円で確実に利用できる制度にすべきと考えますが、現状の認識と今後の市の対応をお尋ね致します。

■質問3に対する市の回答
 西宮市産後ケア事業は、平成30年12月より、会計年度任用職員の助産師1名でスタートし、現在は3名体制で産後ケア事業を行っております。今後は、産後の心身のケアを求める母親が幅広く利用できるよう産後ケア事業の周知を図ることと、令和2年10月より産婦健診を開始したことで産後ケアの必要なケースが増えることが予測されるため、会計年度任用職員の助産師だけで対応が困難な場合は、民間への委託も検討してまいります。

■質問4(田中まさたけ)
 民間の助産師会では、産後ケアに的確に対応できるよう、特別な認定等を取得していると伺っております。嘱託助産師の方につきましても、スキルを向上するために研修を受けていただき、認定を取得するべきと考えますが、産後ケアの質の向上に向けた市の取組みをお尋ね致します。

■質問4に対する市の回答
 産後ケアの質の向上につきまして、民間の助産師会では、令和元年度より始まった公益社団法人日本助産師会認定の産後ケア実務助産師研修を受講し、認定等を取得していると認識しております。本市の会計年度任用職員の助産師も同様の研修を順次受講しており、スキルの向上に努めております。

■意見・要望(田中まさたけ)
 まずは、今、新型コロナウイルス感染症の対応に追われている中、保健所の皆様方には大変丁寧に御対応いただきました。また、意欲的な御答弁を頂いたことも大変頼もしく思っております。この場をお借りして御礼申し上げたいと思います。
 さて、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策についての要望なのですが、産後ケアであったり、時には訪問指導についても、接触を伴う事業となっております。お母さんが必要なときに安心して訪問を受けられるように、保健師の積極的な陰性確認であったり、助産師の方々が自費で陰性確認をした場合の補助なども検討して頂ければありがたいと思っております。

 特に出産後のお母さん自体が大変なこの時期に、授乳であったり夜泣きの対応など、赤ちゃんの子育てが始まるわけですから、専門の方による助言や体のケア、これは、体のみならず、心の大きな支えにもなると感じております。御答弁いただきましたとおり、民間の助産師の方々ともしっかりと協働していただきまして、特に新生児の時期における訪問・助言、そして、産後ケア事業をより多くの方に御利用いただけるように取り組んでいただきたいと思います。

====ここまでが、本会議場での議論の概要====

 令和2年12月議会一般質問での産後ケアについての議論は以上となります。いずれも前向きの姿勢が示されましたので、引き続き、利用状況を注視したいと思います。

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