将来を考慮した政策の重要性ー西宮市議会3月議会閉会

2021年3月26日[カテゴリ:コラム

 先日23日(火)に、西宮市議会3月定例議会が閉会しました。
 
 先日のコラムに掲載しました、令和4年4月からごみ収集の袋を市が指定するという内容が盛り込まれた「西宮市廃棄物の処理及び清掃に関する条例の一部を改正する条例制定の件」を始めとする条例案41件、令和3年度一般会計予算など当初予算案14件など市長提出議案77件、議員提出議案2件を審議し、議員提出議案1件を除く全ての議案を原案のとおり可決しました。

◼令和3年度予算(1億円未満四捨五入)
一般会計1939億円(昨年度比8億円増加)
特別会計909億円(昨年度比22億円増加)
企業会計477億円(昨年度比3億円増加)
合計3324億円(昨年度比33億円増加)

 昨年度、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前に編成された令和2年度の当初予算は、その前年度と比べて100億円増加していました。今年度もさらに大幅に増加すると予想していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた上での予算編成にもかかわらず、増加の幅は小さくなりました。これは、投資的な公共事業が令和2年度当初予算では前年度と比較して62億円増加していましたが、令和3年度予算は、逆に令和2年度予算よりも42億円も減少していることが大きな要因です。


災害対策のために建設された第二庁舎(危機管理センター)

 第二庁舎の建設がほぼ終了し、現在は、新規の大型公共事業を止めています。止められている公共事業の中には、完成間近の第二庁舎のように今までなかった施設を整備するものばかりではなく、すでに存在する施設の老朽化に伴う再整備事業が含まれていることから、いつまでも止めておけるわけではありません。
 公共事業を止めて施設の廃止を検討するなり、財政改革に向けた固定経費の削減を検討するのであれば分かるのですが、単に公共事業を止めるだけでは単なる負担の先送りであり、将来世代に対して負の遺産を残すだけの浅はかな行為と言わざるを得ません。

 また、令和3年度予算に占める投資的事業の割合は10%(前年度13%)となっていますが、投資的経費を削るにしてもいずれ限界が生じます。一方で、経常的な経費が占める割合は上昇を続け、令和2年度予算が71.3%(1376億円)であったものが、73.9%(1431億円)に増加しています。
 そして、これまで15年にわたって貯めてきた貯金(財政基金)を取り崩して対応し、令和3年度予算では、この財政基金が約77億円減少して、残高が約65億円になると見込まれています。これは、昨年の3月末には176億円あった残高がわずか2年で100億円以上減少する見込みとなっています。
 さらに、令和3年度予算の増加の大部分を占める特別会計の増加は、介護保険特別会計が前年度から約20億円増加していることが主な要因です。もちろん、高齢化の対応は絶対に必要であり、コロナの対応を待ってくれません。
 

阪神淡路大震災の際に避難所の拠点となった市立中央体育館
 
 これらの状況を勘案すると、将来世代に対する負担の先送りをするのではなく、今後の経常的な経費を抜本的に見直すことで財源を確保するという「覚悟」が必要だと考えています。
 今年の夏、新型コロナウイルス感染症の影響を受けての財政見通しが発表されることになっていますので、市長がその「決断」をするのかどうかによって、今後の対応は大きく変わると思っています。
 6月議会での議論に向けて調査、準備を進めていきたいと思っています。

令和3年度補正予算

 今年も、新型コロナウイルス感染症対策として国の第3次補正予算に対応するため、令和3年度当初予算を可決した直後に、補正予算を審議し可決しました。
 総額で12億5661万1千円の増額となり、国の負担が12億5160万円、市の財源(新型コロナ対策みやっこ元気寄附金の取り崩し)が500万円となっています。

1.西宮市⼀時支援金事業(新規)

市の説明の抜粋
 緊急事態宣言が令和3年2月28日まで延長され、その後、3月21日までは県独自の時間短縮営業が飲食店等に要請されたことに伴い、飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛により影響を受け、売上が減少した中小・小規模事業者等に対して西宮市独自の一時支援金を給付するため、必要な支援金及び申請受付やコールセンター業務等の事務局経費について令和3年度当初予算を補正し対応します。
・支援金給付対象者
①緊急事態宣言に係る時短営業の協力金を受給できない
②国の「売上の減少した中小事業者に対する一時支援金」を受給できない
③市内の中小事業者及び個人事業主(本社または本店が市内にあること)
④売上が一定の割合で減少(20%以上50%未満、1~3月で対前年または前々年比較)など
・支給額:法人、個人事業主問わず一律10万円
・事業費:3億5533万円

・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

↑マスコミが取り上げる国の対策に注目が集まっていることと、様々な支援が輻輳していることで、こうした地道な市独自の対策の周知が難しくなってきています。常任委員会において補正予算を可決するにあたって、様々な経済団体や広報媒体を用いて周知徹底を改めて要望しました。

2.ひとり親世帯への臨時特別給付金の支給

市の説明の概要
 子育てと仕事を一人で担うひとり親家庭は元々経済的基盤が弱く依然として厳しい生活状況にある中で、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に大きな困難が心身共に生じていることから、更なる臨時的な経済的支援が必要と考えられます。このため、低所得のひとり親家庭を支援する取組みとして、令和2年度に国制度として実施したひとり親世帯臨時特別給付金に準じ、西宮市独自の臨時特別給付を実施することとし、必要となる事業費は、令和3年度予算を増額補正して対応します。
・支給対象
①西宮市が支給する児童扶養手当(令和3年3月11日定期支給分)の受給者等2780人。
②国制度のひとり親世帯臨時特別給付金を「公的年金受給者」又は「家計急変者」として、令和3年3月31日までに西宮市から受給した者230人。
支給額:支給対象者に一律5万円(1回限り)
・事業費:1億5186万7千円

・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

↑申請手続きは不要とのことで、事前通知の上、登録銀行口座に振り込まれます。

3.コロナ離職者就労支援事業(継続)

市の説明の概要
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う休業要請等により、離職を余儀なくされた市民や離職の恐れのある市民の就職活動を円滑に進めるため、令和2年10月に事業開始した就労支援事業「Re: work(リワーク)にしのみや」が引き続き、求職者に寄り添った支援を行います。
 受託者は、求職者に対する相談窓口を設置し、求職者の適性把握、教育訓練、求人開拓、職業紹介等を行い、求職者の再就職を支援します。これらの取り組みにより、求職者の希望に応じた伴走型の就労支援を行うものです。
・事業費:4600万円
・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

 ↑制度の概要については、令和2年度補正予算(第7号)(←クリックすると令和2年9月26日のコラムが開きます。)をご参照ください。
 令和3年2月末現在で、登録者数が257名、延べ利用件数が1165件あり、3月15日現在で82名の方の就職が決定したとのことです。

4.資格取得支援事業 (新規)

市の説明の概要
 令和3年1月1日現在、有効求人倍率は0.79倍に低下し、完全失業率は2.9%に達しています。特に、サービス業には非正規労働者・女性労働者が多く、スムーズな労働力の移動を図る必要があります。
 新型コロナウイルス感染症対策基金(新型コロナ対策みやっこ元気寄附金)を活用して、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた求職者が、再就職・転職等を有利に進められるように資格取得を支援します。コロナ離職者就労支援事業「Re: workにしのみや」による就労支援を加速化する教育訓練事業として展開します。
・事業費:500万円
・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

 事業の概要は以下のとおりです。
○対象者
①「Re:work(リワーク)にしのみや」に登録・相談したうえで就職活動を行う求職者
②在職中で、転職を希望する求職者
③新たに就職することを希望する求職者
④就職活動中の大学生・第2新卒者(市内在学者含む)

○支援内容
・就職に有利になる資格取得等を目指す各種講座を提供
・講座受講料は無料で、感染対策のためWEB形式で提供(テキスト代・試験受験料は、本人負担)

○対象資格・スキル等
 概ね3~6ケ月間の学習で、試験が年に複数回実施され、就職につながりやすい資格・スキルを選定。
(資格・スキル例)
 介護・医療事務、ファイナンシャルプランナー、秘書検定、ビジネスマナー講座、歯科助手、登録販売者、調剤事務、PCスキルアップ講座など

○受付・案内
「Re:work にしのみや」勤労青少年ホーム3階

○スケジュール
・事業開始:令和3年7月1日(予定)
・申込期限:令和3年12月31日
・受講期限:令和4年3月31日

5.避難所等における新型コロナウイルス感染症対策(拡充)

市の説明の概要
 昨今の災害は年々激甚化しており、避難所での感染防止対策をより充実させる必要があるため、計画備蓄数に達していない間仕切り(ダンボールタイプ・テントタイプ)や段ボールベッド・簡易ベッドについて、出水期までに追加購入するもの。
・事業費:1677万1千円
・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

↑避難所での感染防止対策をより充実させることは重要です。コロナと熱中症の初期症状の類似性が心配されていますが、災害時の熱中症対策のためにも、避難所となる小学校体育館へのエアコン整備も急いで頂きたいものです。
 令和2年度予算で中学校20校の体育館にはエアコンが整備されましたが、令和3年度予算には小学校体育館にエアコンを整備する予算は一切計上されませんでした。確かに多額の経費が掛かりますから、資産を有効活用する方法も含めて、今後も政策提案していかなければならないと考えています。

6.新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種事業(拡充)

市の説明の概要
 本事業における市の役割は、国、県、医療機関などの関係機関との各種調整や接種体制の確保、専用コールセンターの設置等により、市民へのワクチン接種を円滑かつ適切に進めることとなっています。令和2年度はワクチン接種に向けた体制の確保を進めているところであり、令和3年度より市民を対象に接種が開始される予定です。
 令和3年度当初予算編成後から、国の補助上限額が大幅に増額されたことや、国から示されるワクチン接種に関する運用の変更に対応するため、当初予算を補正することで必要経費の確保を行います。
・事業費:1億9055万円
・財源:国庫負担金、国庫補助金

先月のコラムに掲載しました令和2年度補正予算(第11号)もご参照ください。先日のコラムにも掲載した通り、1月末時点で示されていたスケジュールは遅れています。

7.感染症拡大防止協力金事業(拡充)

市の説明の概要
 令和3年1月12日に県が阪神間の自治体における酒類を提供する飲食店などに対して時短要請を行い、その後1月14日から2月7日までの期間を緊急事態宣言に基づく緊急事態措置として県内全域における飲食店に対して時短要請を行いましたが、緊急事態宣言が2月28日まで延長され、3月1日から同21日までは県独自の時短要請となったことに伴い、要請に応じた飲食店等に対して支給する協力金に係る事業費を追加する必要が生じたことから、令和3年度当初予算を増額補正して対応します。
・事業費:2億6264万円

先月のコラム(←クリックすると先月14日のコラムが開きます。)に掲載しました令和2年度補正予算(第11号)の続きの予算になります。

8.学校ホームページ再構築事業(新規)

市の説明の抜粋
 ホームページはコロナ禍における学校から家庭への重要な情報伝達手段の1つであるが、現在の学校園CMS はスマートフォンでの閲覧や外国語翻訳に対応しておらず、利便性やアクセシビリティに問題がある。また、保護者等学校関係者のみ閲覧可能となるページが各学校で一つしか設定できず、特に非常時において迅速できめ細やかな情報提供が難しい状況とな
っている。そのため、学校ホームページの刷新を目的とする新たなCMS 導入を行う。
・事業費:2100万2千円
・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

 少し内容は異なりますが、学校と家庭の重要な情報伝達手段として、令和3年度予算に、公立小学校・義務教育学校における欠席連絡アプリの導入費用、270万6千円が盛り込まれました。

 これは、従来より導入されていた子供の登下校を保護者に知らせる「ミマモルメ」のシステムが発展し、当日の欠席連絡をメールでできるようになるサービスで、昨年10月より試行実施され、今年4月から本格実施されることとなりました。
 このことについては、昨年夏に、市民よりミマモルメの出欠連絡サービスの導入にあたっての費用負担について問い合わせを頂き、教員の負担軽減にもつながることから公費負担にするよう要望していました。
 市民からのご相談に感謝しています。そして、試行実施段階で、毎朝の学校での先生方の業務が非常に効率化されたと現場のご意見も伺っています。
 
 一方で、この連絡網の元となった「ミマモルメ」の導入までには時間がかかりました。
 ミマモルメは防犯対策として導入されました。18年前になりますが、これも市民より情報提供を頂き、平成16年12月一般質問(←クリックするとコラム「通学路における防犯対策」が開きます。)で、IT技術を活用した登下校時の安全システムの導入を提案し、さらに、平成18年3月議会一般質問(←クリックするとコラム「市の防犯政策の必要性」が開きます。)で具体的なシステムをご紹介しました。

 それから5年後、平成23年度より小学校16校で民間企業のサービスである「ミマモルメ」が導入されて以来、保護者の皆様からも好評を頂き、全小学校において活用されてきました。

 ある意味、あの時の市民からの情報提供が、形を変えて今のシステムの活用につながっていると言ってもいいと考えています。改めて、10年、20年先を見据えた政策提案の重要性と、民間の力、アイデアを活用する有効性を実感しています。

9.学校トイレ環境改善事業(拡充)

市の説明の概要
対象となる小学校(4校)のトイレに係る感染症対策のため、以下の改修工事を行う。
① 排せつ物の飛沫拡散防止のため、和式便器を洋式便器化する。
② 細菌・ウイルスの繁殖を抑えるため、タイル貼りの湿式の床からシート貼りの乾式の床に改修する。
③ 必要に応じ、天井・壁の塗装、ブースの塗装・補修を行う。
・事業費:7234万円
・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金5830万円、一般財源1404万円

10.確定申告延⻑等に伴う市民税対応事業

市の説明の抜粋
 令和3年2月16日から令和3年3月15日までとされていた確定申告期限が、令和3年4月15日まで延長されたことにより、市・県民税の申告受付会場の開設期間も延ばし窓口業務に係る派遣業務を延長する。また、市民税当初賦課業務に係る委託も延長が必要となる。
・事業費:951万1千円
・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

11.複合災害に備えた避難所の体制強化事業(再計上)
 指定避難所としている中学校の体育館において、使用する空間の必要換気量を上回る換気量を有する有圧換気扇を設置する。
・事業費:1億2200万円
・財源:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

12.公共施設における新型コロナウイルス感染症対策事業(再計上)
・鳴尾支所:240万円
・市民集会施設:120万円

↑ 換気対策のための網戸設置に係る経費で、昨年度も予算化されていたものの、入札不調により実施できなかったため、再度計上されたとの説明がありました。

 西宮市では、入札不調や契約変更が多発しており、事業に支障が出ています。他市の状況を含めて原因を調査をしなければならないと考えています。

 以上が、3月議会で審議した予算及び補正予算の概要となります。

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