市営住宅の管理の住民負担と環境保全

2021年4月15日[カテゴリ:その他政策, 質問

市営住宅
 「住宅に困っている低額所得者の方々のために国からの補助金や税金などにより建てられた賃貸住宅です。このため、他の民間賃貸住宅とは異なり、公営住宅法や西宮市営住宅条例などに入居者資格が定められており、入居するにはいろいろな制限があります。また、特定公共賃貸住宅、特別賃貸住宅など、中堅所得者の方向けの賃貸住宅もあります。」
(西宮市ホームページより)

 先日のコラムに引き続き、市営住宅について掲載します。以前より、二酸化炭素排出抑制の観点と高齢化が進む入居者の負担軽減について、市民よりご意見を頂いてきました。そこで、令和2年12月議会一般質問において、市営住宅のうち204棟を対象として、市営住宅の階段や廊下等共用部の照明器具のLED化を計画に進めるよう提言し、市の見解を問いました。

 先般の3月市議会において報告されました令和2年度包括外部監査報告書(市営住宅の管理運営について)によりますと、令和2年4月1日現在223棟あり、以下の種類に分かれています。

⚫普通市営住宅
低額所得者に賃貸し、又は転貸するための住宅で、公営住宅法の規定による国の補助に係るもの、その他これに準ずる住宅。
○管理戸数:183棟、6584戸
○入居資格
①世帯要件(60歳以上高齢者、障害者等を除き、同居親族があること)
②住宅困窮要件が必要
③収入基準(政令月収15.8万円まで、裁量階層21.4万円まで)

⚫改良住宅
住宅地区改良法に規定する住宅その他これに準ずる住宅。
○管理戸数:25棟、1718戸
○入居資格
①改良事業の施行に伴い住宅を失った者、地区内で災害により住宅を失った者他
②住宅困窮の要件必要。ただし、改良住宅に入居させる者が入居せず、または居住しなくなった場合には、同法29条の規定で、公営住宅の募集,資格、選考の規定を準用
③収入基準(政令月収11.4万円まで、裁量階層13.9万円まで)

⚫コミュニティ住宅
密集住宅市街地整備促進事業に伴って住宅を失う従前居住者のための住宅。
空家入居の収入基準は公営住宅・改良住宅基準を準用。
○管理戸数:4棟、273戸

⚫従前居住者住宅
住宅市街地総合整備事業に伴って住宅を失う従前居住者のための住宅。
空家入居の収入基準は公営住宅基準を準用。
○管理戸数:3棟、258戸

⚫特別賃貸住宅
兵庫県住宅供給公社から買取りを行い、中堅所得者に賃貸するための住宅。県公社住宅(西宮市管理分)の償還が終わり、市に所有権が移った住宅。
○管理戸数:6棟、144戸
○入居資格:収入基準(政令月収15.8万円超)

⚫特定公共賃貸住宅
特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律第18条第1項の規定に基づき建設する住宅。市が建設した「特優賃住宅」であり対象は中堅所得層。
○管理戸数:39戸(棟数は普通市営住宅に含む)
○入居資格:収入基準は15.8万円超48.7万円以下(収入基準が13.9万円超15.8万円未満の場合でも収入のある35歳以下の者がいる場合は可)

⚫県住宅供給公社住宅
市と兵庫県住宅供給公社との間で結ばれた管理委託契約に基づき管理している住宅。中堅所得者に賃貸するための住宅(条例上の規定なし)
○管理戸数:2棟、168戸
○入居資格:収入基準(政令月収15.8万円超)

====本会議場での議論の概要====

令和2年12月議会一般質問

3.市営住宅について
イ)共用部照明器具のLED化
■質問の背景(田中まさたけ)

 市営住宅の共用部では、建設当時に設置した蛍光灯が現在も使用されており、球切れでの取替えや共用部の電気使用料は、入居者の負担で管理されています。これらの管理などを自主的に行う住宅管理運営委員会も、入居者の高齢化や公募停止による入居者の減少により、これまでの運営が難しく、市が制度として設けた共益費一括徴収制度に移行する住宅が増加しています。
 しかし、低廉な家賃の市営住宅では、共益費一括徴収制度に移行したくとも、共益費の増額を伴うことから移行ができず、自主管理で運営している住宅管理運営委員会が残っています。共益費の負担は、共用部での電気使用料や蛍光灯の球換えなど、消耗品費や電気料金が占める割合も大きく、共用部の電気をLED照明灯にすることで球換えの頻度も電気使用料も減少することとなり、共益費の負担も軽減できると考えます。
また、市長も今年度の施政方針において、「環境政策は、持続可能な社会を構築していく上での根幹となる政策分野であり、一部局にとどまる課題ではない。全庁的に取り組む体制を整え、市を挙げて環境施策を検討する。」と述べられております。

■質問(田中まさたけ)
 入居者の負担軽減及び二酸化炭素排出抑制の観点から、市営住宅共用部の照明器具のLED化の取組が必要と考えますが、市の方針をお尋ねいたします。

■質問に対する市の回答
 これまで、建て替え事業や耐震化工事などの住棟全体に関わる工事の際には、共用部のLED化を行っておりますが、全ての市営住宅204棟のうちLED化が完了している住棟は3棟にとどまっております。
 
 西宮市のエネルギー施策では、公共施設へのLED照明灯等の導入を推進しておりますが、市営住宅の全ての共用部をLED化するには約2億6,000万円の費用が必要であり、多額の改修費が課題となっております。しかしながら、省エネルギー推進や電気料金節減などの観点から、全庁的なLED化に向けての取組の中で、市営住宅としましても計画的な更新について検討してまいります。

■意見・要望(田中まさたけ)
 こちらも御答弁では、共用部の照明器具のLED化だけで約2億6,000万円の財源が必要であるということでございました。環境に配慮した取組というものは大変コストがかかるということを実感するものでございます。本市におきましては、環境学習都市として、市長も環境政策に力を入れて取り組んでいると理解しておりますので、この市営住宅のLED化につきましても、是非とも取り組んで頂きたいと思っております。

 負担の軽減ということで先ほど壇上でも述べましたが、一つ要望しておきたいことがございます。
 現在、新規入居者の募集を停止している住宅で、かつ自主管理をしている住宅がございます。こちらのほうでは、新しい住民が入ってこないということで、高齢化が進む一方ということです。しかも、同時に入居者が減っていくということで、草刈りであったり、掃除、電球の球換えといった作業の負担が大きくなる一方だと伺っております。
 そこで、共益費一括徴収制度に移行したいと思っても、共益費が上がってしまうということがございまして、この草刈りとか掃除などに積極的だった方とこれまであまり協力的でなかった方、この労力的な負担感に大きな差がありまして、どうしても合意形成が難しい状態の住宅がございます。
 そうすると、ますます積極的であった方々の負担ばかりが増すという状況も発生しているようでございます。ですので、コロナ禍ということで高齢者への呼びかけもしづらいという事情もございますので、入居者が減っている住宅においては、少しでも草刈り等の負担を軽減できるような措置についても御検討頂けるよう要望致します。

====ここまでが本会議場での議論の概要====
 
 募集停止住宅における負担の軽減については、募集を停止している団地によって管理体制や対応、事情が異なることを考慮し、今回は市の回答を求めずに要望にとどめました。今後の動向を注視したいと思います。

 そして、市営住宅の共用部の照明器具のLED化については、一定前向きの回答を得たと考えています。自然環境を守るための取組みには当然、多額の費用を必要とします。しかし、長い目で見れば、コストの抑制につながることも期待できることから早急に進めるべきです。

 この議論の1ヶ月半後に発表された令和3年度予算及び市長の施政方針において、市の公共施設の照明器具のLED化計画を策定することが示されました。先般の3月議会での予算審査の際に、さらにこの「公共施設のLED化計画」についても議論しましたので、次回以降に掲載できればと考えています。

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