前回のコラムの続きです。
西宮市は、昨年6月実施予定であった「中央運動公園及び中央体育館・陸上競技場等再整備事業」の入札を中止し、この事業実施の可否を、今年の夏に西宮市が発表する予定の「財政収支見込み」を見てから判断するという方針を示しています。
しかし、この事業は財政に余裕があれば実施するという性質の不要不急な事業ではなく、既存の施設の老朽化により、再整備の必要性が確認された上で実施される予定であった事業です。
今後、コロナ禍の影響で財政状況の悪化が見込まれるのであれば、これまで私もいろいろと提言してきた「既存の経常経費の見直し」や「民間活力の導入」などの財政改革により対応すべきであると考えています。
財源が足りないのであれば、年間約352億円に及ぶ、中核市としては全国トップクラスの規模を誇る「西宮市職員の人件費」を、期間を区切って1%カットしてもらうだけで年間3億5000万円もの財源が生まれます。
また、公立保育所を民間に移管することによって、年間数千万円規模で国庫負担の増額が見込めます。複数園を民間移管すればそれだけで年間数億円の財源が生まれることになります。
なお、私たち議員は、昨年度10ヶ月間、報酬を15%カットしてきた実績があります。
にもかかわらず、前回コラムに掲載した通り、西宮市役所は、私の指摘、質問に対して、人件費の見直しや公立保育所の即時民間移管を進めるなどの財政構造の改革に具体的に触れることなく、再整備事業を含めた公共事業の計画の単なる先延ばしを優先することを示唆しています。
得意の場当たり的な行政運営です。
公務員が「民間との協働による改革」を進めようとしないことで、結局、市民が不利益を被ることになることを市民の皆様には早く気が付いて欲しいと思っています。
皆さんが「なぜ市役所はこんなことができないのか。」と感じた時には、その原因の多くは、公務員が民間を信用することなく「仕事を抱え込もうとする気質」にあることを知って欲しいと思っています。
前置きが長くなりましたが、令和3年6月議会での議論を以下に掲載します。
====本会議場での議論の概要====
令和3年6月議会一般質問
1.公共施設マネジメントと財源の確保
ア)市立中央体育館の再整備
■質問の背景(田中まさたけ)
まず、先ほどの御答弁を伺っておりまして、率直な印象を述べますと、入札を中止してから1年が経過しておりますが、1年が経った今でもまだこのような曖昧な御答弁しかできない状況なのかということで大変驚いております。
これまで6年間かけて検討してきた計画を中断するという大きな判断をされたにもかかわらずです。
お手元の資料に一部掲載致しましたが、本市が発行しております公共施設マネジメントの資料によりますと、これは平成28年度に発行されたものですが、30年以上の施設が56%を占めていて、今後、計画的に再整備事業を進めなければならないはずでした。
中央体育館の他の公共施設も老朽化は着実に進行しておりまして、対策をしなければいけない施設が次々と待ち受けております。ですので、これまで計画してきた中央体育館の再整備事業は進めつつ、その上で感染症の影響で必要になるとなれば、それと並行して行財政改善の取組を断行すべきだと私は主張しております。
平成20年度までに実施していた第3次行財政改善実施計画、こちらも資料に示しましたけれども、4年間で約280億円の財政効果を上げたという実績がございます。本当にやる気があるのであれば、この1年間で少なくとも行財政改善のメニューぐらいは検討できたはずです。
全国でトップクラスの人件費を期間限定で抑制するのもその一つです。この1年間、そうした財政改善の検討、シミュレーションをしてきたのでしょうか。再整備事業自体も、もともと民間資金を活用するPFI手法で実施するものでしたが、支払い条件の見直しや、さらに効率性を発揮するために施設の要求水準に自由度を持たせるなど、さらにPFI手法の利点を生かせるような方法も検討できたはずです。
■質問
入札を止めてからの1年間、担当職員にどのような検討をするように、そして、財政の悪化に備えるように市長は指示をしてきたのか、この点をお尋ねしたいと思います。
■質問に対する市長の回答
まず、御質問のダイレクトな答えに入る前に、前提として、阪神・淡路大震災、そしてリーマンショックもございました。このときと現下の状況が違うことについては、阪神・淡路大震災は、震災が起き、そして被害の総額、そういうようなものが、ある意味、全容が確定したと言いますか、見えた中で計画が立てられたわけでありますが、今、事コロナに関しましては現在進行形でございます。そして、この影響がどれだけになるか、5年、10年先が見通せないというのがまずございますというのがあります。
そういう中で、今、予定どおり進めると、もしかしたら、後年の毎年の支払いが市財政を圧迫して他の施策にも影響があるかもしれない、そう考えて、今判断できないという判断をしたということでございます。
そういう中でどういう指示をしたかということでありますが、まず、私が市長になったときから比べてもまず圧縮して127億円まで事業費を落としたわけでありますが、さらに下げられる可能性はないだろうか、さらにコストを抑制して機能を維持するやり方はないだろうかというようなことをまず検討を指示しているというような状況でございます。
■意見・要望(田中まさたけ)
どんな指示をしてきたのかとお尋ねしたのですが、非常に曖昧な回答が返ってきたというのが率直な感想でございます。被害額が確定していないから、先が見通せないから、予定どおり事業をすることはしなかったということでございましたが、それは、いつか見通しが立つ時が来るのでしょうか。それすら分かりません。
私が主張しているのは、どんな状況にあっても、今ある施設が存在しているんですね。これを再整備しようということで今まで6年間もかけて慎重に計画を練ってきました。ですので、これをやった上で、さらに財源が足りなければ、経常経費の見直しによって財政改革をしなければ、事業の大小だけで判断して、また、先が見通せないというだけでこの事業ができないのであれば、一生できないと言っても過言ではないですよ。
どういう状況になったらこの事業が実施できるのかということが我々には見えてこない。少なくとも私には見えてこない。そのことを今日は問いたかったです。
本当に残念でなりません、今日の御答弁は。
今後、単純にこの再整備事業の実施時期を先送りするような判断をするとなれば、これと併せて早急に相応の財政改革、行財政改善を断行していただかなくては、市民に説明がつきません。昨年の12月議会の一般質問の時も申しましたけれども、市民には不利益を押しつけておいて、私たちも含めてですけれども、市役所の人間だけが生ぬるい仕事を続けることが許されるわけがありません。
繰り返しになりますけれども、再整備事業に着手していただいた上で、必要とあらば、竣工までの4年間で少なくともその財源が確保できるだけの行財政改善の取組を断行すべきであるということを指摘しておきたいと思います。
====ここまでが本会議場での議論の概要====
市長にはもっとまじめに政策の経緯を勉強して、市民の立場に立って真摯に取り組んで頂きたいと感じました。
市長就任直後に「さらに下げられる可能性はないだろうか」と模索するのであれば分かります。しかし、市長就任後3年が経過し、事業規模を縮小しながら現在の計画にまで練り上げてきて、最終確定ということで提出された予算も認められ、入札直前まで進めてきたのは今の市長なのです。
それを「さらに下げる」というのであれば、これまで市長が市民や議会に提示してきた整備内容や予算に不要なものが含まれていたことを認めることにもなります。
また、市長の回答では、12年前までの行財政改善実施計画について、「全容が見えた中で計画が立てられた。」「現在は先が見通せないから計画が立てられない。」ということでしたが、127億円を必要とする再整備事業を止めたということは、少なくとも127億円の財政効果を生むだけの行財政改善の取組みが必要なる可能性があると見込んだからであり、その行財政改善策の洗い出しなどの準備をこれまでの1年間で行うべきであったというのが私の主張です。
「『老朽施設の再整備』よりも、人件費等の経常経費の大幅な削減につながりかねない『行財政改善の取組みの回避』を優先した」とはっきり回答しなかったのは、うしろめたいから曖昧な回答でごまかしただけだと私は受け止めています。
12年前に一世を風靡した「コンクリートから人へ」という旧民主党のフレーズも思い出しました。ここでいう「人」は「公務員」ということになります。
西宮市役所は、公務員の処遇を守るためにいろいろな理由を見つけてきて抜本的な改革をしようとしません。今回見つけてきた理由は「新型コロナウイルス感染症」と言えます。
少し話が分かりにくいかもしれないのですが、仮に、再整備事業を先延ばしするようなことがあれば、西宮市役所が自分たちの権益を守るために、市民に不利益を強要したことになると考えています。
こうした現状を広く市民に知ってもらうためにも、私は、面白みがないであろうチラシを含めて情報を発信するようにしています。
次回以降のコラムに続きますが、不足するスポーツ施設を補完する観点から、学校体育館の活用について掲載します。