2021年8月14日[カテゴリ:スポーツ推進, 公共施設マネジメント, 質問]
東京2020オリンピック競技大会が8月8日(日)に閉会しました。新型コロナウイルス感染症の拡大防止を理由に無観客開催となり、自国開催の実感は薄れてしまいましたが、トップアスリートによる熱戦の様子が連日報道され、多くの感動を頂きました。開催について多くの批判もあった中で、大会を支えられたボランティアの皆様方、アスリート皆様方に心から敬意を表します。
オリンピックに引き続いて、本市所在の甲子園球場において全国高等学校野球選手権大会が開催される予定でしたが、台風9号の接近により1日延期され、10日に開会しました。こちらも無観客ではありますが、学校の応援団やご家族は観戦できるそうで、選手の皆様には、各都道府県の代表として日頃の練習の成果を存分に発揮して頂きたいと思います。
それでは、今回も前回コラムに引き続き、スポーツ推進に関する内容を掲載します。
市内に、市立中央体育館ほか分館を含めて9ヶ所整備されている市立体育館ですが、中でも市立中央体育館は非常に抽選倍率も高く、なかなか使用できない状況が続いています。
少しデータが古くなってしまいましたが、こちらの資料(←クリックするとグラフを記したPDFファイルが開きます。)にありますとおり、人口一人当たりの市立体育館の延べ床面積を、西宮市と同じ中核市の中で比較すると、45市中36位と下位にあり非常に少ない状況となっています。
これでは、抽選倍率が高くなることも理解ができます。ですので、多額の費用を投じて市立体育館を増やすか、既存の体育施設で使用していない時間帯の多い学校体育館を活用するかの選択が考えられ、後者の方が効率も市民にとっての利便性も高くなると考えています。
西宮市はどちらも選択せずに、この課題を放置しようとしています。
そこで、平成27年6月議会と平成28年6月議会(←クリックするとコラム「学校体育館の有効活用」が開きます。)において、各種競技の練習場所や市民がスポーツをする環境の不足を補うために、学校体育館を使用していない時間帯の有効活用を訴えた結果、一部施設の解放は進みましたが、まだまだ閉鎖的な状況であると私は認識しています。
その改善策を提言するため、令和3年6月議会一般質問において、「西宮市立学校の体育施設開放事業」について改めて取り上げました。
====本会議場での議論の概要====
令和3年6月議会一般質問
1.公共施設マネジメントと財源の確保
イ)学校体育施設の活用と維持管理
■質問の背景
これまで、既存の学校体育館をもっと活用するよう求め、教育委員会の御協力を頂いてきました。そして、現在の中央体育館の抽選倍率を勘案すると、仮に(現在の計画のまま)再整備して予約枠が2倍になったとしても、まだ不足することが予想されます。
■質問(田中まさたけ)
教育活動と目的外使用を合わせた現在の学校体育館の利用状況をお尋ね致します。また、さらに市民スポーツの推進のために活用する余地はどの程度あると考えているのか、併せてお尋ね致します。
■教育委員会の回答
まず、小学校では、市民スポーツの普及及び地域コミュニティーづくりの促進を目的とした体育施設開放事業に基づき、全ての学校でスポーツクラブ21による活動が行われており、休日はほとんどがその活動に使用されております。また、そのほかのスポーツ利用につきましても、全校合計で令和2年度は122件、令和元年度は128件の利用がございました。
中学校の利用状況につきましては、部活動を実施しているため、休日も通常の教育活動として全校で体育館を使用しておりますが、そのほかのスポーツ利用として、全校合計で令和2年度は509件、令和元年度は758件の利用がございました。
次に、学校体育施設を市民スポーツに活用する余地についてですが、そもそも教育施設を目的外で使用していただくものであり、教育活動に支障がないと学校長が承諾した範囲内で申請に基づいて許可するものですので、市民スポーツのニーズを把握し、その上で学校施設を活用する余地がどの程度あるかにつきましては教育委員会として調査したことがなく、把握はできておりません。
■回答を受けての意見(田中まさたけ)
こちらは、御答弁によりますと、中学校では、1年間で1校当たり37件利用されているのに対して、小学校ではスポーツクラブ21の使用以外には、1校あたり年間約3件しか利用されていないという計算になります。
利用していない時間があっても、ほとんどが活用できていないと考えられますが、(使用されていない曜日や時間帯などは)詳細を把握されていないことが明らかになりました。
スポーツ基本法第13条では学校施設の利用について規定されておりまして、その第2項では、利用上の利便性の向上を図るために必要な施策を講ずるよう努めなければならないと規定されております。
■再質問(田中まさたけ)
公共施設マネジメント(既存施設の有効活用)の観点からも、今後、学校体育館の活用をさらに加速するべきと考えます。現在、利用状況が外部からは分からない状況にありますが、利便性の向上を図るために、現在アナログで行っている利用申請手続のデジタル化を進め、利用状況をつぶさに把握するためにも予約システムを導入するべきと考えますが、教育委員会の見解をお尋ね致します。
■再質問に対する教育委員会の回答
学校施設を利用するにあたっては、事前に利用者が学校長と面談し、活動内容や施設の具体的な使用方法について確認していただく必要があります。また、システムの導入には、開発に係る経費のほか、保守費用が毎年必要となることから、学校運営経費を圧迫することになり、導入は困難であると考えております。しかしながら、利用者の利便性の向上と事務負担の軽減を図るため、手続のあり方について今後検討してまいります。
■意見・要望(田中まさたけ)
教育委員会のほうでは目的外使用の利用状況の詳細までは把握していないとはっきりお答えいただきました。この状況を放置したままでは、一層の有効活用は進みにくいことは明らかであります。こうした状態を市はいつまで放置するのでしょうか。
また、今後、小学校の体育館についてはエアコンも整備して頂かなくてはなりません。このように、学校の体育館は地域スポーツの振興や災害対策(災害時の避難所としての利用)など、本来の教育活動とは異なる部分でのニーズが高くなっています。
ですので、まずは目的外使用の申請や、使用料の徴収など、そうした事務を市長部局に移していただいて、(普段の目的外利用が想定される)スポーツ推進の部署が利用状況を的確に把握・管理するべきと私は考えました。
そして、スポーツ基本法第13条の規定に基づいて、利便性の向上に向けたシステムの導入を含めて、地域の方々にさらに活用してもらう方法を検討して頂きたいと思います。こうした検討はおそらく教育活動外の経費になりますから、教育委員会ではなかなか予算化できないと理解致しました。
細かいところではありますけれども、貴重な限りある公共施設をマネジメントできているとは言い難い状況です。ですので、今後、産業文化局のほうで課題の整理や協議調整を進めて頂きますようにお願い申し上げまして、本日は要望にとどめておきたいというふうに思います。
そして、この大きな項目(「公共施設マネジメントと財源の確保」)の最後に、もう1点、指摘しておきたいと思います。
公共施設のマネジメントが着実に遂行されていないということです。これまで策定してきた公共施設マネジメント基本方針や、公共施設等総合管理計画が絵に描いた餅になってしまっているように感じます。仏作って魂入れずとはこのことだと思います。
計画が着実に進められるように財源を確保する、各部局に既存施設の有効活用を促す、うまくいっていないのであれば改善するための方法を示す、そういった具合に、政策局はもっと自分たちがつくった計画の進捗に責任を持っていただきたい。
前回、行政経営の質問をした際にも申し上げましたが、担当の幹部の皆様の意識を、そしてまた、仕事の進め方を変えていただきたい。
限られた財源の中でこれまでつくり上げてきたものを維持、さらに発展させていかなければならないわけです。これまでのような旧態依然とした場当たり的な行政運営でやり過ごせるような時代はもうとっくに終わっていると私は思っています。
ですので、市長、副市長も含めまして、意識を変えていただきたい。そのことを最後にこの項目では指摘しておきたいと思います。
====ここまでが本会議場での議論の概要====
学校体育施設の活用について補足です。
小学校では、スポーツクラブ21の利用が「ほとんど」という回答でありましたが、その詳細は把握されていません。
このスポーツクラブ21の活動は、市民の健康増進や介護予防、子供の健全育成のみならず、地域コミュニティの醸成を図る上でも非常に重要な役割を果たしています。しかし、その会員数は減少の一途をたどっており、将来的な持続可能性の視点から問題視しています。
体育館の使用状況がオープンになっていませんのではっきりしませんが、利用時間の枠に限界もあることから、各小学校区のスポーツクラブ21で実施されている競技が固定化されてしまっていることも会員数減少の一因ではないかと感じています。改善が必要です。
中学校では、「部活動で使用しているから体育施設は空いていない」というニュアンスの回答になっていますが、昨今、教員の働き方改革の観点等から部活動の活動時間の制限が進められつつあることから、今後、使用しない時間帯が増えることが想定されます。
そこで、使用しない時間帯に、市内の各種競技チームに使用して頂ければ、部活動に所属している希望者が練習できる機会を維持することも可能になるかもしれません。
こうしたことからも、学校の体育施設の利用状況を詳細に把握して情報をオープンにすることは、複数の政策課題の解消につながると考えています。
今回の一般質問では要望にとどめた事項について、状況に変化がなければ、改めて、問わなければならないと考えています。