前々回のコラムの続きで、学校での感染症対策に関する議論について掲載します。
学校での感染症対策として、マスク着用の指導があります。
長期間の長時間に及ぶマスクの着用が学童期の子供の心身の成長にどのような影響を及ぼすのか、または、及ぼすことはないのか、科学的にはよく分からないのですが、授業に集中できなかったり、気分が悪くなったりしても、我慢しなけらばならない状態が続いています。
本年2月に、マスクを着用して体育の授業に臨んでいたと思われる小学5年生の児童が命を落とすという痛ましい事故が発生していたことが、5月に報道されました。
マスクの着用と死因の因果関係は分かっていませんが、マスク の着用が身体に及ぼす影響が指摘されている中、熱中症対策のみならず、冬場でも運動時にはマスクを外す必要があると思っています。
また、給食時の黙食を強いている中、会話の必要のない教室での授業においてもマスクを着用せずに授業が受けられる環境を作るべきという観点で、令和3年6月議会で取り上げて質問しました。
====本会議場での議論の概要====
令和3年6月議会一般質問
2. 教育環境について
ア)学校での感染症対応
(マスクの着用)
■質問の背景(田中まさたけ)
次に、感染防止対策として実施されている対応として、マスクの着用がございます。
冬場である今年の2月に、マスクを着用して体育の授業に臨んでいたと思われる小学5年生の児童が授業中に倒れ、亡くなったという痛ましい事故が、先月、報道されました。まずは、慎んでお悔やみを申し上げます。
心身の発達途上にある子供にとって、長期にわたって長時間マスクの着用を強要することについては、酸素不足による身体への弊害、授業に臨む際の集中力の低下、鬱病の発症など、様々な悪影響を及ぼすことが懸念されております。
また、夏場の授業においては、換気をすることによってエアコンによる温度調整が難しい日が続きますと、教室内の授業においても熱中症の危険性が増すのではないかと心配しております。
■質問1(田中まさたけ)
教室内の授業においても、今後、教室内の換気の徹底、また、アクリル板の設置などの対策によって、生徒児童の発言が少ない授業中においては極力マスクを着用せずに授業が受けられる対策を講じるべきと私は考えます。長時間のマスク着用による児童生徒の心身への影響などの弊害に関して、教育委員会はどのようにお考えなのか、科学的な知見を持って対策を講じられているのかお尋ね致します。
■質問1に対する教育委員会の回答
現在、文部科学省からの「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」に基づく感染防止対策を講じた上で、各学校は教育活動を実施しております。そのマニュアルには、3密の回避、マスクの着用、手洗いが基本的感染防止対策として示されております。
熱中症リスクが高まる中、教育委員会としましては、6月9日付「体育の授業及び部活動における熱中症対策について」及び 6月18日付「まん延防止等重点措置区域となることを踏まえた学校園における対応について」で、マスクの取扱いを、運動時は身体へのリスクを考慮し、体育授業や部活動などの運動を行う際はマスクの着用は必要ないとし、また、登下校を含め、マスクを着用することで熱中症リスクが高まるため、マスクを外したときはできるだけ会話を控えるなど、マスク着用に関する内容も併せて通知したところです。
しかしながら、マスクの着け外しについては、児童生徒の発達段階や個々の状況によって自己管理が難しいことも想定されることから、教職員に対して、児童生徒の顔色や様子などに注意し、体調不良者を素早く発見、対応するよう努めるよう指導しております。
議員御指摘のとおり、必要に応じてマスクの着け外しは必要だと認識しており、場所や活動内容などを示し一定指導しておりますが、身体距離が十分に取れず、万全の対策が難しい教室などで一斉にマスクを外すことは現時点では控えるべきだと考えております。
マスクの着用について様々な考え方や諸説あることは認識しておりますが、マスク着用による弊害について、国から示されている衛生管理マニュアルには示されておりません。一方で、マスクが飛沫の飛散を一定抑える効果は示されていることから、現状においては、児童生徒間の感染拡大を防止する観点から、義務ではないものの、マスク着用を推奨されているものと認識しております。
今後も、国、県からの情報を注視しつつ、感染防止対策に努めてまいります。
■意見(田中まさたけ)
教育委員会は、法律は当然のことながら、国が示した様々なガイドラインやマニュアルに従わなければならないことは私も理解しております。その範囲内でもう少しきめ細かく対応できないかということを考えております。
昨今は、一つ一つの対策や政策に科学的なエビデンスが求められることが多く、ICT技術等の発達によりそれらが可能となったと考えております。
そして、本市においても、データ分析、エビデンスに基づいた政策立案、いわゆるEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)の取組みが不可欠になると考えております。
市長は、就任当初、専門家の意見を市政に反映させたいと表明されておったとも記憶しております。
今後、教育委員会においても、感染症対策に限らず、校舎解体時のアスベスト除去工事(による人体への影響)や熱中症、スマートフォンの使用や書籍等のデジタル化など、子供の成長や健康に及ぼす影響について科学的な知見に基づいた説明を必要とする事案が増えてくることが予想されます。
■質問2(田中まさたけ)
感染症対策を契機に、課題に精通した専門家に入ってもらえるような会議体を教育委員会に設置し、多様なデータの分析や専門家による科学的な知見を付して保護者に対して情報を開示する体制を構築すべきと考えますが、教育委員会の見解をお尋ね致します。
■質問2に対する教育委員会の回答
教育委員会としましては、これまでも、専門的な知見が必要とされる場合は、その都度、専門性の高い方から御意見を頂き、施策に反映してきました。
例えば子供の成長や健康については、西宮市学校保健会や学校保健懇話会などで、医師会、歯科医師会、薬剤師会の方々から御意見を頂いてきました。今後も、このような体制を継続するとともに、国や県より示されたガイドラインに沿って、子供たちが安全に安心して学べるよう取り組んでまいります。
■意見(田中まさたけ)
EBPMの取組みということで取り上げたのですが、お答えは、少し私とは認識が異なっているところでございます。
御答弁いただいた内容は、「専門家の御意見をお伺いして判断されることがある」ということだと思うのですが、なぜこれがEBPMの取組みと違うと感じたかといいますと、これは例ですが、最近、学校の建て替えの際のアスベスト除去の対応が増えてまいりました。
アスベスト除去工事の際の子供たちに対する影響の説明についても、教育委員会として、専門家による安全性の検証であったり、科学的なデータに基づいた情報を発信しようという姿勢がつい最近も見られませんでした。
もし御答弁のとおり専門家の御意見を聴取する機会を設けているということであれば、アスベストの話から戻りますが、今回の長時間のマスク着用による弊害についても意見を聴取していただきたいと思っております。
■質問3(田中まさたけ)
御家庭からアンケートをとってデータ分析してもいいと思っているのですが、そうした子供たちや御家庭の様子、そうしたアンケート調査というのはマスクの着用に関してされた実績、されようとしたことはございますでしょうか。
■質問3に対する教育委員会の回答
マスク等に関して特化したアンケート調査については、こちらのほうではしておりません。ただ、先ほどの答弁の中でも申し上げましたように、マスクにつきましては、非常に市民の関心も高く、市民の声で幾つも意見を頂いていることは事実でございます。
■意見・要望(田中まさたけ)
そうした情報を収集し、それらを分析して、今後、専門家の知見と併せて保護者や子供たちに発信する体制を構築していくべきと思いますので、今後検討をお願いしたいと思います。
現状では、どのようなことについて専門家の御意見を聴取して施策に反映しているのか、また、その情報が児童生徒の指導にどう役立てられているのか、私たちにはなかなか見えてきません。
ですので、市長も「オープン西宮」を掲げています。教育委員会のそうした機能を私たちにも見える形で強化していただきたいと思います。これは要望と致します。
あと、長時間のマスクの着用については、教室内については、いきなり一斉にというわけにはいかないという御答弁でした。確かに難しいというのは理解できるのですが、できるだけマスクを外せる場面を増やせるように、そして同時に、マスクができないお子様もいらっしゃると聞いておりますので、そうしたお子様が過ごしづらい環境をつくらないように、全ての学校に徹底して周知をお願いしたいと思います。
====ここまでが本会議場での議論の概要====
マニュアルによる一斉対応が基本となっているためなかなか難しい課題ですが、個々の子供たちの健やかな成長のために必要な臨機応変な対応や、感染症対応のみならず、様々な場面で科学的知見に基づいた対応が説明できる市教育委員会の体制を作っていく必要性を強く感じた質問の結果でした。
引き続き、情報収集に努めたいと思います。