市立高校と小学校の体育館にもエアコン設置の方針

2021年12月20日[カテゴリ:コラム, 防災対策

 令和3年11月に、市立高校と市立小学校の体育館にエアコンが設置される方針が発表されました。

 この件につきましては、私は平成30年12月議会の一般質問で、熱中症対策の観点(←クリックするとコラム「学校体育館へのエアコン設置①」が開きます)と、防災対策の観点(←クリックするとコラム「学校体育館へのエアコン設置②」が開きます)から、市立学校の体育館へのエアコン設置の必要性と課題を解消する方法を提案していました。

 この事業は、議会全体でも必要性が決議されていた事業です。

決議の内容
 請願第19号 市立小・中・高等学校の体育館へのエアコン設置を求める請願に対する決議

 今夏は、過去に例のない暑さが続き、熱中症が原因の痛ましい事件が頻発した。この異常な高気温は、今後も続くと予想される。従って、本市の宝である子供たちの生命を守るため、また、最も重要な避難所でもある市立学校体育館への早急なエアコン設置が不可欠である。
 よって、西宮市議会は、来年度より、全ての市立学校体育館へのエアコン設置事業に着手することを強く求める。
 以上、決議する。

 もちろん費用対効果など慎重な検討が必要だとは思います。しかし、一方で、本会議で提案するにあたって、学校体育館にエアコンを設置されていた大阪府箕面市の事例を同僚議員から教えて頂き、実際に箕面市に伺って職員さんからお話を伺い、体育館全体を涼しくする工夫やその効果を視察してきた上で、市議会において具体的に紹介したにもかかわらず、西宮市にはなかなか受け入れてもらえませんでした。

 そして、提案から1年後の令和元年11月に、令和2年度に中学校(20校)の体育館にエアコンを設置する方針が示されました。こちらのコラム(←クリックするとコラム「学校体育館へのエアコン設置の方向へ」が開きます。)に少し詳しく掲載しています。この際の市の文書には、「市立高校や小学校の体育館へ直ちにエアコンを設置する必要性は低い」とまでわざわざ断言されています。この時と比較すると現在はトーンが変わったことが分かります。

 令和元年11月に市が発表した際の文書
 ↑この時点では体育館へのエアコン設置についてはかなり消極的でした。また、この時の文書には「単年度で整備できる施設数は20校が上限」とされていましたが、今回の方針では年間10校程度の整備となっており、その姿勢はひきづっていると言わざるを得ません。

 中学校の体育館に設置した後にすぐに小学校を着手することも可能であったと思いますが、1年間の時間を空けて、来年度から4年をかけてすべての市立学校の体育館に設置する方針が示されたわけです。設置の方法等は、私が議会で紹介したやり方も採用されており、結局、時間をかけて行った市の調査はいったい何だったのか分かりません。そして、エアコン設置の第一の目的は熱中症対策だと思っていますが、近い将来起こり得る大規模災害を想定して必要性を提案してきたわけですから、やるからには早いほうがよかったに決まっています。

 経常経費に占める人件費の割合(令和元年度で32.5%)が、全国の中核市の中でダントツで1位をキープする西宮市には、防災に対する備え、「市民の命を守る」意識をもっと強く持ってもらいたいと感じています。

 このたび、市から発表されました事業の概要を以下に掲載します。

これまでの検討
⚫今年度の検討経過
7月~8月:高須・甲武・塩瀬中学校体育館における空調効果の確認
8月:浜脇中学校体育館における空調効果の確認
9月:関係部局による検討会開催
10月~11月:検討会の結果を受け庁内で協議・調整

⚫検討会の結果概要
(1)中学校体育館における空調効果の確認

★高須・甲武・塩瀬・浜脇中学校の各体育館において、室温及びWBGT(暑さ指数)を測定。
 ・室温は平均で 2.0~2.5℃低下。窓を閉め切った環境で運転すると約 5℃の低下を認めた。
 ・WBGTは「警戒」レベルから「注意」レベルに1ランク改善を認めた。
⇒ 以上の測定結果から、概ね当初計画したとおりの効果が得られたことを確認。

(2)小学校・高等学校における体育館空調整備の検討
① 学校教育としての空調整備の必要性

★整備済の中学校では高評価(部活動の練習効率が上がった、活動制限が必要なくなった 等)
★小学校においても、集会や音楽会などの開催時に体育館空調を使用できれば環境が改善し、用途の拡大が見込まれる。

② 避難所機能としての空調整備の必要性
★台風や大雨等の水防警戒時に避難所を開設する際は、学校では空調整備済の特別教室等を開放して受け入れており、余程のことがなければ体育館まで開放しない。しかし、大規模災害時に避難生活が長期化する場合を考慮すると、備えとして空調があれば望ましい。

★体育館の構造上、空調設備による十分な暖房効果は見込めないが、暖房器具の併用で対応可。

③ 地域スポーツとしての空調整備の必要性
★今回の検討にあたり、スポーツクラブ21の意見要望は特に聴取していないが、空調整備後は一定の利用が見込まれる。なお、光熱費の使用者負担金については今後検討する。

④ 小学校・高等学校の体育館空調で想定するスペック・事業費
★空調方式はイニシャルコストやランニングコストを総合的に考慮し、ガス式(GHP)を採用。 災害等の非常時に備え、可搬式外部電源や LP ガスを接続して運転可能な拡張性を持たせるとともに中学校と同等の効果が見込める空調能力を有する仕様とする。
総事業費は約19億1,800 万円(起債(借入):約17億3,800 万円、一般財源:約1億8,000 万円)
起債(緊急防災・減災事業債)の元利償還金に対する地方交付税措置率は70%。

★中学校の9月末現在の使用実績を参考にランニングコストを試算
空調運転の光熱費:1校あたり約17万円。(42校で約720万円+α/年)
空調設備の保守費:1校あたり約11万円。(42校で約460万円/年)


↑箕面市の視察時に撮影した電源設備

今後の進め方
★これまでの検討の結果、教育活動において一定の効果が見込まれること、大規模災害時における避難所の環境改善にも期待できることなどが確認された。

★また、緊急防災・減災事業債の期間が令和7年度まで延長されたことから、この期間内に整備を進めることが経済的にも有利であるとの結論を得た。
⇒ 以上のことから、小学校及び高等学校の体育館空調整備を、次のとおり進めることとする。

(1)令和3年度の既存予算の中で、令和4年度に小学校体育館に設置する空調設備の設計委託費を執行する。

(2)令和4年度当初予算に、空調設備の工事費等(工事費・工事監理費・設計委託費【次年度分】)を計上する。

(3)令和4年度から小学校(39校)、義務教育学校前期課程(1校)、高等学校(2校)全校への空調設備整備工事に着手することとし、可能な限り令和7年度までの整備完了に努める。
※市立小学校は全40校。うち1校(上甲子園小学校)は環境対策として過年度に整備済。

(4)空調整備の優先順位は、災害時の避難所利用を考慮し、①自主避難所、②土砂災害避難所、③武庫川洪水避難所、④その他 を基本とする。(各年度10校程度に平準化して計画)
※他の改修工事と工期が重複し、同時施工が困難な場合や教育活動に支障が生じる場合には該当校の整備順位を入れ替えることがあるため、計画確定後に校名を公表する。

(5)空調設備はガス式(GHP)を採用。非常時には可搬式外部電源やLPガスを接続して運転可能な拡張性を持たせるとともに、中学校と同等の効果が見込める空調能力を有する仕様とする。

 今後も、市民の皆様のご意見に真摯に耳を傾けて、議会で政策立案してまいります。
 

 

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