都市型観光-平成16年6月議会一般質問

2005年7月27日[カテゴリ:商工政策, 質問

都市型観光。

 西宮の産業や文化、歴史、イベント、ショッピングなどさまざまな魅力を観光資源としてとらえ、西宮を訪れる人々だけにとどまらず、地域の方々、市民自身が、ともに豊かな時間を楽しむことができる観光。本市の都市イメージの向上と魅力をよりアピールするとともに、市民や事業者間の交流を促し、事業の実施を通じて市内外への情報発信効果を高め、産業の活性化につなげていくことを目的としています。

 西宮市議会では、上記のとおり説明されています。

 平成16年6月議会一般質問では、西宮市が推進している「都市型観光」を取り上げ、事業の効果をあげるための提案を交えて、

====本会議場での議論の概要====

平成16年6月議会一般質問

4.都市型観光について
■質問の背景

 今年度の行政方針の中でも都市型観光の推進について述べられておりました。
(都市型観光の目的)
 都市型観光は、本市の低迷する産業の振興策の一つとして位置づけられています。本市議会において初めて都市型観光という文言が登場したのも、やはりPFI同様、平成10年9月議会のことでした。

 ベッドタウン化が進む本市においては、産業振興は非常に難しく、行政が何か手だてをして即効果があらわれるものではない様子です。ましてや、文教住宅都市を標榜している本市にとっては、住民にとっての願望である住環境の向上、福祉の向上に対して全力を注ぐのがベストですがそうはいきません。また、行財政改善のためにも、積極的な増収策にも取り組んでいかなければなりません。

 人口が増えても収入増にはつながらないことは、最近は本市でも経験しているところです。また、市内企業も市民であります。市内企業を直接フォローする商工政策も、行政としてはやっていかなければいけないことでしょう。しかし、そのフォローが焼け石に水となっている可能性もあり、産業環境が現状のままで、いわゆる「点」へのフォローをしているだけでは限界があり、産業の振興は期待できません。

 そこで、産業の環境を向上させるという観点から、この都市型観光事業が鍵を握っていると言っても過言ではないと私は考えています。というのも、産業振興策の最大の目標は、民間が力を発揮できるステージづくりであるべきで、そのステージづくりのためには、賑わいと活力は必要不可欠であり、その実現が期待されているのが都市型観光事業ではないかなと私は考えます。都市型観光事業の大きな目的は、この西宮が持つ潜在的な魅力を引き出し、生かしていくことで、賑わいと活力を生み出す、つまり、西宮を演出しないといけない、そういったことではないかと私は考えます。

(「点」と「点」を結ぶ必要性)
 私なりに、「なぜ西宮において産業振興策がうまく機能しないのだろうか」を考えました。一つ一つの商工政策は一定の成果をおさめて、ブランド・インキュベーション事業についても一つ一つはかなりの反響を呼んでいるのですが、市全体としての産業振興にはつながっていないように感じます。
 
 例えば、大阪や神戸は、バブルのころほどではないかもしれませんが、一定の賑わいがあります。であれば、西宮にあるお店に魅力がないのかと言えば、決してそんなことはありません。穴場になっているところもありますが、魅力のあるお店、スポットは数多くあります。たとえ魅力のあるお店が神戸や大阪にたくさんあるとしても、もとから神戸や大阪にあったものは少なく、ほとんどが新しく出店されているわけで、西宮ではなく大阪や神戸に事業地を置いた方が儲かると考えたから、少々家賃が高くても、神戸や大阪を事業地に選んでいると思われます。西宮には賑わいが足りないとお店の事業主には映ったのでしょう。 

 近くの大阪や神戸に、賑わい、活力があって、その中間地点にある西宮にはないというのは当たり前のことではないと思っています。大阪や神戸の場合、そういったスポットが一点に固まっていて、利用者からしても、大阪や神戸に行けば何でもできそうで、何でも手に入りそうであり、目的が多数にわたっていても、すべて満たしてくれそうなのです。実際にはそうでなかったりするのですが、そういったイメージが、賑わいと活力をもたらしているのではないかと私は感じています。

 こういった環境は、かなりの時間はかかっていますが、行政がつくり上げた環境だと思っています。となれば、西宮は、大阪や神戸にない魅力がたくさんあるわけですから、うまく生かせば、賑わいをもたらすことは十分に可能なことだと思うのです。問題は、そういった西宮独自の魅力あるスポットなどが点々と存在しているところであり、その点と点を結ぶと、かなり環境は変わってくるのではないかと思うわけです。

(移動の利便性向上)
 まず、個々の観光資源に目を向けます。例えば、日曜日に県立甲山森林公園に行ってきたのですが、周辺に駐車場が整備されているにもかかわらず、あの細い甲山大師道が路上駐車の車であふれるほどにぎわっていました。アミューズメント施設はほぼない公園ですが、小学生に昆虫採集をさせるために来たファミリーや、単に歩いてデートしている人たちでにぎわっているのです。
 こうしてぎわいが生じた際に出てくる問題としては、インフラの不足があります。駅から徒歩で行くには小さな子連れのファミリーには厳しいですし、バスを利用しようにも1時間に1本のダイヤでは厳しいです。そして、車で行くとなったら、今度は駐車場がいっぱいで、路上駐車するスペースすら残っていないという状況が生まれるているのです。そのようなときに、例えば民営駐車場を促進する制度を活用して駐車場の確保をするのも一手でしょうし、バス事業者に働きかけて増便してもらうのも一手、せっかくできた賑わいを逃がさない努力が必要となります。

(情報の利便性向上)
 また、カップルがこの森林公園に車で来たとなれば、次に行きたくなるのはカフェだったりしますが、これもちゃんと近隣にあるのですが、うまく結ばれていません。知らない方もいるかもしれません。また、そのカフェの近くを歩いていた独身女性2人組の会話では、「地図があればな。」といったぐあいに、次に行けるところを探している様子でした。

 ですので、モデルコースを選定すると行政方針で述べておられましたが、選定する際には、個々のスポット、施設の特性を調査して、例えばターゲットは10代、20代の独身女性なのか、それとも若い男性なのか、カップルなのか、小さな子連れのファミリーなのか、老夫婦なのか、そういった特性をつかんで、ジャンルごとにまとめたモデルコースを選定することが必要かと思います。先ほど例に挙げました甲山森林公園などは全ての世代なのかもしれません。

 個々のスポットという点と点を結ぶためには、インフラの整備が必要となってきます。特に交通機能を整備する必要が出てきます。ここでいう交通機能とは、バスなどに限ったことではなく、徒歩で移動できるようなところには歩道の整備も必要となってきます。しかし、現在は、財政難の状況ですから、そうした投資がなかなかできない状況ですので、都市型観光の部署と他の部署が連携して、お金をかけずに点と点を結ぶことを考えなければなりません。

 例えば、本市のホームページ上に市内企業検索がありますが、本市のホームページを見てくれているかどうかは後で述べるとして、仮に見て頂いたとしても、この検索機能を使ってくれる人はどれだけいるのでしょうか。そこで、このせっかくある検索機能と都市型観光を結びつけるのも一手ではないかと感じました。
 ホームページ上で、現実の世界では実現が不可能なほどの超大型ショッピングをつくったと想定して、インターネットによる通信販売に協力してくれるお店、会社等と連携すれば、利用者拡大にもつながるでしょう。「西宮百貨店」といったイメージ、楽天市場の西宮バージョンといったイメージです。視覚的に楽しめて、ホームページ上でウインドウショッピングなどを楽しんで頂けるような内容、魅力的な商品が置いてあれば、ホームページ上では写真しか見れませんので、実際にその商品を見に、足を運んでくれる可能性もあります。この仮想のショッピングセンターに観光資源のコーナーもつくって、自分でコースをつくるようなシステムを構築すれば、もっと利用者が増えることでしょう。
 市役所の情報化の部署と福祉の部署が連携すれば、健康ウオーキングマップのようなものも作れるわけですから、都市型観光の部署と情報化の部署が連携すれば、こうした構想も描けます。

(各事業という「点」と「点」を結びつける)
 ブランディングも当然大切です。本市のブランディング事業も、単発では反響を呼んでいますが、単発であって、1年を通してのつながりがありません。悪く言えば、やりっ放しです。これでは相乗効果が期待できないと思われます。
 
 本市の事業への協力店を活用した都市型観光の演出を行う、例えば、先ほども言いましたモデルコースの選定を行う際には、そのモデルコースをホームページに掲載し、スポットをつなぐ際に、食べるならどこどこ(2001年グルメ西宮リエゾン参加店)とか、ケーキを買うならどこどこ(2003年洋菓子園遊会協力店など)と、他の観光資源と結びつけて活用するだけで、効果は随分変わってくるように私は考えます。個々の観光資源を結ぶと同時に各事業も結びつけるということです。

(広報機能の充実)
 最後になりましたが、先ほどホームページのことを少し上げましたが、PRがこういった事業には最も大切になってきます。せっかくいいスポットがあって、市がいろいろな事業を実施していても、それを知らない市民が多いように感じます。厳しいことを言うようですが、市政ニュースや本市のホームページ、宮っ子などに掲載しても、その媒体自体がマイナーであれば有効なPRとは言えません。
 例えばホームページを使うのであれば、まずはそのホームページを開いてもらうためのPRが必要というわけです。例えば商工団体等の御協力を頂いて、駅前に「ようこそ西宮市へ」といった看板を立てるようなことがあれば、西宮市の下に大きくホームページのアドレスを必ず入れるなど、ホームページを見てもらうためのPRも必要だと感じるわけです。
 そういったPRの方法、ノウハウ等は、むしろ民間企業の方が持っている可能性が高いですので、そういったノウハウを集めるべきだと考えます。

 これまで時間をかけて都市型観光事業に対する今後の期待を込めて私なりの見解を申し上げましたが、各事業という点と点、そして、スポットという点と点を結んで、西宮を演出する知恵を集結していただきたいと思います。

■質問1
 市長の行政方針によりますと、本年度は観光資源の洗い出しを行うとのことですが、どういった観光資源があると今のところお考えか、お聞きしたいと思います。

■質問1に対する市の回答
 まず、今年度に行います観光資源の現況調査についてでございますが、市内には、甲子園球場や西宮神社を初め、海、川、山のバランスのとれた自然環境とともに、美術館、博物館などの文化施設、灘五郷のうちの2郷を抱える酒蔵地帯、また、ヨットハーバーや桜の名所・夙川公園など、四季を通じて楽しめる観光資源が数多くございます。
 これまで、それらの中から観光30選を選び、PRに努めてまいりましたが、近年、観光の楽しみ方も多様化しまして、友人や家族と一緒に気軽に飲食やショッピング、町並みなどを楽しむ皆さんも増えてまいりました。そこで、今年度、国の緊急雇用創出事業補助金を活用致しまして、市内の名所旧跡に加えて西宮の味やおしゃれな店舗、あるいは文学に登場するゆかりの史跡、紹介される機会の少ない民間のイベントなど、隠れた資源を掘り起こしたいと考えております。

■質問2
 観光資源を結ぶ交通機能についてはどのようにお考えでしょうか。

■質問2に対する市の回答
 点在する観光資源を結び、回遊性を持たせるための手段と致しましては、巡回バスの運行やレンタサイクルの活用、さらには駐車場の確保、また、観光ルートを意識した歩道や案内サインの整備などが挙げられます。今回の調査で掘り起こした観光資源につきましては、まず、多くの方々に日常的に楽しんでもらえるよう、鉄道駅を起点にした徒歩でのルートを設定したいと考えております。

■質問3
 PR方法は、民間にお願いしてもいいのではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

■質問3に対する市の回答
 事業のPRについて民間の力を活用してみてはどうかとのお尋ねでございますが、本市は、これまで洋菓子やフレンチ・イタリアン料理などをテーマに取り上げました事業を実施しており、PRにあたっては、ポスターの制作や報道機関への情報提供、市政ニュース、また、市のホームページなどを中心に市民への周知を図ってまいりました。これらのPRがより一層効果的、効率的なものとなるよう、市だけではなく、ノウハウをお持ちの方々と協働できる方法を検討してまいりたいと考えております。

■質問4
 他の部署との連携はどのようにされているのか、お伺いします。

■質問4に対する市の回答
 他のセクション、特に情報部門との連携についてのお尋ねでございますが、従来から情報部門と連携しながら市内企業などの検索システムを立ち上げてきたところでございます。御提案のインターネットショッピングなどにつきましては、市としての限界もございますので、市内の企業、商店などとの連携について今後研究してまいりたいと考えております。

■意見・要望
 都市型観光については、見解というか、「こんなんやったらいいのにな。」という私の思いを述べました。利用者側からしても、何となくそんな感じと違うかなと思っています。今回の質問でのやり取り、御答弁を伺っていると、具体的にこうしたらいいのではないかというのもなかなか出てきませんので、いろいろな方から提案を集めることがまず必要ではないかと感じました。
 私も期待していますので、ぜひとも力を入れて頑張っていただきたいと要望しておきます。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 都市型観光事業については、住宅都市の特徴を活かした産業振興政策として重点的に取り組むべきと考えています。そして、雇用の促進や財政効果など、目に見えた効果がもたらされなければ、市内の企業にとっても徒労に終わるだけで、市民にとっても税金を使ってまで実施する意味はないとも思っています。

 今後も、まちづくりの一端を担っている産業の振興、商工政策については、費用対効果を重視して議論していかなければならないと考えています。

■最終目標
産業振興による税収の増加
産業振興による雇用の増加

■講じるべき手段
都市型観光の推進による賑わいの創出

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