常任委員会視察ー連携公立幼稚園の利用状況

2022年11月29日[カテゴリ:コラム, 子育て・教育

 今年度、私が所属している教育こども常任委員会では、施策研究テーマに関する調査のため、議会閉会中の10月に3回の管内視察を行い、2回の常任委員会が開かれて、協議しました。
 これまでコロナ対応で見合わせてきた管外視察も3年ぶりに再開され、10月31日、11月1日、2日の3日間で実施されました。
 群馬県高崎市では「ヤングケアラーに対する支援」ついて、神奈川県川崎市では「子どもの権利に関する条例」について、横浜市では「待機児童対策」「コミュニティスクール」について研修させて頂きました。そして、11月も3回、常任委員会が開かれました。

連携公立幼稚園制度とは

 その管内視察の一つでしたが、今年4月から特区小規模保育所(1歳~3歳の学年が入所)の卒園児(満4歳)を受け入れて預かり保育を始めた「市立夙川幼稚園」を視察させていただきました。

 西宮市では、過去に市内で私立幼稚園が設立されてきた経緯を踏まえ、公立と私立の役割を明確にしてきました。その結果、西宮市立幼稚園では、4歳児と5歳児を受け入れる、いわゆる「2年保育」を実施し、かつ、幼稚園教育要領で示された1日の標準教育時間(4時間)が終了した後の「預かり保育」を実施しないことになっていました。

 それでも、幼児教育の無償化が実施されるまでは、私立幼稚園と比較して年間の保育料等保護者負担が非常に安価であったこともあり、一定のニーズがありました。

 しかし、幼児教育の無償化により、公立のメリットが大きく薄れてしまい、大幅に定員割れをしている市立幼稚園が増え、平成25年に策定された「西宮市立幼稚園の休級及び休園等に関する規程」に基づいて、平成25年度より1園が休園となり、その後、平成27年1月に示された「西宮市立幼稚園のあり方」の方針に基づいて、21園ある市立幼稚園のうち、現在8園が休園しています。
 
 ちなみに。

 休園している幼稚園のうち2園は、不登校児童生徒等が利用する「あすなろ学級」に利用されています。
 これは一見、公共施設を有効活用しているように見えますが、公共施設マネジメントの観点からは、今後の人口減少を見据えて、職員数や経費を削減するためにも、管理する施設数を減らす必要があり、有効とは言えません。

 そして何より、待機児童対策を進めている市としては、そのために土地や建物を活用するべきであり、休園でそのまま建物を残すのではなく、土地を民間の社会福祉法人に貸すことで、私立保育所や認定こども園を誘致するべきと主張しているのですが、なかなか受け入れてもらえません。

 無理に公立幼稚園の園舎を残すために、「あすなろ学級」が口実として利用されているのであれば、とんでもないことです。

 以前のコラムでも掲載しましたが、不登校児童生徒が増加している状況ですから、利用率が低く、元教員の方が館長をしている公民館を積極的に活用して、既存の公民館事業等にも参加できる機会を作り、様々な話を聞いたり、体験ができるような環境を作ったほうがいいと思っています。
 
 現在の市が進めている「行政経営改革」が、単なる「パフォーマンス」に過ぎないと、私が言っている理由の一例です。

 話がそれましたので、元に戻します。

 残っている13園の市立幼稚園も、近年、大幅な定員割れが続いており、教育要覧によると、令和4年度は76名(教員は63名)のスタッフで、435名の園児しか受入れができていないことになり、施設も空き教室が発生していることから、人材も施設も無駄にしていると言えます。

 そこで、公立幼稚園を存続するために、市はこの状況を無理やり・・・・打開しようと考えたようで、この空き教室を有効活用するために、令和4年度から、越木岩、夙川、高木幼稚園で、1学年1教室、定員を20名に設定して「預かり保育」を希望する園児を受け入れて保育を開始することが、突如コロナ禍の令和2年の夏に発表されました。
 
 しかし、市立幼稚園では4歳児からしか受け入れませんので、それまでの1歳から3歳までの間は別の保育所で過ごす必要があります。
 そこで、国に特区を申請をして、1歳から3歳までの子供を保育できる小規模保育所の新設を認めてもらい、越木岩と夙川、高木幼稚園の近所に、それぞれ3か所ずつに分けて、各事業所の定員を1学年7名を上限(1か所全体の定員は19名まで)にして、民間事業者に開設してもらいました。

 これを「特区小規模保育事業所」と呼んでいます。

 ですので、この保育事業所の卒園児は当然、確実に市立越木岩、夙川、高木幼稚園に入園できます。ただし、卒園後に入園する幼稚園は、利用する特区小規模保育事業所によって指定されています。

 この仕組みを西宮市は「公立連携幼稚園制度」と名付け、公立幼稚園の存続に乗り出したわけです。

↑3年前、夙川幼稚園の教室にもエアコンが整備されました
 
 以前に本会議一般質問で「行政経営」について取り上げ、連携公立幼稚園が非効率で、多くの市民のためにならない事業になる恐れがあることを指摘していました。
https://masatake.jp/8105

公立の弱みが露呈

 
 管内視察をさせて頂いて、園長先生には時間を割いて丁寧に説明していただき、公立幼稚園の魅力をご説明いただきました。

 しかし、今年度の夙川幼稚園の預かり保育を受ける4歳の児童は、定員20名に対してわずか4名、預かり保育を利用しない園児と合わせても、4歳児クラスは定員50名に対して19名しか入園しておらず、本来2クラスになるべきところを1クラス分の園児しか入園していません。
 視察はしておりませんが、高木幼稚園も預かり保育を利用する児童は3名しか入園しておらず、全体でも26名、こちらも本来2クラスになるべきところを1クラス分の園児しか入園していません。
 越木岩幼稚園は、今年度から預かり保育を実施する予定でしたが、入園の見込みがないことから、今年度は実施が見送られました。

 公立幼稚園の魅力が伝わっているとは思えない結果です。

 市が制度を始めたからには、連携公立幼稚園の職員が一丸となって、まだ幼稚園の年齢に達していない子育て世帯に対して魅力を丁寧に発信するなどして、特区小規模保育施設を活用してもらい、卒園後に幼稚園に入園してもらうことで定員を埋めるという努力をするべきでした。
 その結果を出すのが、園長という管理者の仕事だと思います。

 もっと悪いのは、このような状況にもかかわらず、幼稚園定員30名のクラスに必要だったこれまでの教員に加えて、増やされた預かり保育の定員20名に必要な保育士をそのまま6名を配置し、その6名で4名の児童を保育する体制を敷いていることです。

 私立であれば経営赤字になるであろうこの状況を、税金で賄われる公立は放置できるのです。職員の意識がまったく改革されていないと言えます。 

 また、今の連携公立幼稚園制度では、市民のニーズに合っていないことは明白であり、それを乗り越えるだけの魅力を発揮できないようであれば、待機児童の解消に果たす効果も限定的となります。
 
 保育を効率性だけで判断してはいけないのは分かっていますが、やはり、一方で保育を受けられない状態で泣いている児童がいることも忘れてはいけないと思います。
 一方では保育士不足が深刻で、私立保育所等の保育士確保の取組みに対して市が支援している中で、保育人材の無駄遣いを許すという矛盾した状況を生み出しているのです。

 そもそも、保護者のニーズを重視したのではなく、市の職員のぬるま湯環境を守るために公立幼稚園を無理やり存続させようとするから、このような状況に陥るのだと思います。

 このような現在の非効率で合理的でない市政運営の、どこが「行政経営」なのか。

 来年度もこのような状況が続くようであれば、行政経営の責任者である市長の判断により、ただちに連携公立幼稚園制度をやめ、特区小規模保育事業所の卒園児の別の受け入れ先を確保すべきです。そうしないのでなければ、公立幼稚園の定員を埋める結果を出してもらわなければなりません。

 来年度の動向を注視してまいります。

 フェイスブックにも関連する投稿をしておりましたので、以下にも掲載致します。

フェイスブック投稿より

■10月9日投稿

7日(金)は、午前中に教育こども常任委員会の管内視察に出席しました。
現在、教育こども常任委員会では、「保育所整備の将来像と今後求められる保育所のあり方について」を施策研究テーマに設定し、調査を進めています。
この日は、私立幼稚園から幼稚園型認定こども園に移行された、安井幼稚園さんと甲東幼稚園さんにご協力いただいて、移行に伴って生じた課題等を聞かせて頂きました。
そして、あいにくの雨で室内での活動でしたが、園内での幼児教育活動の様子を見学させて頂きました。園によっていろいろと保育の内容が異なっています。
1号とか2号とか、行政は区分してルールを決めていますが、子供たちは区分なく、同じ教室で元気よく活動していました。

■10月14日投稿

12日(火)も、教育こども常任委員会の管内視察に出席しました。
市内の小学校と中学校に配置されている「学びの指導員」の活動状況を視察してきました。
現在、「学校支援について」も施策研究テーマに設定して調査を進めています。
学校では、多くの課題を抱え込んでいる上に、学校によってその課題は異なっているため、教員免許の取得の有無にかかわらずに課題に応じて活動してもらえる人員を配置するための予算が必要だと、これまでも訴えてきました。
https://masatake.jp/3821
https://masatake.jp/3873
↑こちらのコラムに掲載していますので、よろしければご覧ください。
少人数学級の実現よりも、そうした人員を配置するための予算を、国にも拡充してもらえると、もっと的確に課題に対応ができるようになると感じます。
翌日の13日(水)にも教育こども常任委員会が開かれ、7日(金)に視察した内容と合わせて、各委員間で管内視察の振り返りをした後、今月末に予定されている管外視察の内容の一つ、「ヤングケアラー支援の取組み」について、西宮市の状況を調査しました。

■11月24日投稿

24日(木)に、閉会中の教育こども常任委員会が開かれ、施策研究テーマ「保育所整備の将来像と今後求められる保育所のあり方」について協議しました。

先月19日(水)に、委員会の管内視察で、連携公立幼稚園として今年から預かり保育を始めた市立夙川幼稚園に伺いました。普段は選挙の投票に行っている幼稚園です。
令和3年度から満1歳~3歳児を対象とした民間の特区小規模保育所を新規で整備し、この保育所の卒園児(4歳児)が確実に入園できるよう、市立越木岩、夙川、高木幼稚園を連携公立幼稚園と位置づけて、令和4年4月から朝と午後の預かり保育を実施することになりました。
しかし、今年度の夙川幼稚園でその預かり保育を受ける4才の児童は、定員20名に対してわずか4名しか入所していません。
それに対して、保育士は定員どおり6名が配置されていることに衝撃を受けました。
こんな状態で公立幼稚園の良さを説明されても、全く理解ができませんでした。

そんなに良い幼児教育をしているのなら、もっと多くの児童が入所できるように園の管理者は努力すべきです。
ニーズが低下した公立幼稚園の空き教室を活用するにしても、人材の有効活用が「できない」、そうした意識がないという公立の弱点が露呈した感じです。
一方で私立保育所では、保育士不足という深刻な、シビアな課題に悩んでおられるのに。。。
暢気な役所のせいで泣いている市民はたくさん居るのです。
税金と人材の活用の仕方を即刻見直すべきだと思います。
連携公立幼稚園については、以前に、本会議でも問題点を指摘をしたことがあります。こちらもご覧ください。
https://masatake.jp/8105

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