不登校に関する勉強会

2020年1月29日[カテゴリ:学校教育

西宮市でも不登校の児童生徒が急増しています。
そして、「不登校対策」が西宮市議会教育こども常任委員会の「施策研究テーマ」の一つに取り上げ、集中的に調査が進められています。

不登校とは
年間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒のうち、病気や経済的理由を除き、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること」
と文部科学省は定義して全国調査し、人数を把握しています。

西宮市立小・中学校の不登校生徒児童の推移は、以下のとおりです。


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中学校では減少傾向にありましたが、平成28年度以降、急増しています。
小学校でも急増しています。

一体、学校で何が起こっているのか、子供たちにどのような変化があったのか、見えてきません。


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平成29年度から、生徒児童全体に占める不登校状態にある生徒児童の割合が、国と県の割合を上回ってしまいました。

教育機会確保法
このように不登校の状態になる生徒児童が急増した状況下で、平成28年に、国会では議員提案により「教育機会確保法」が制定されました。正式名称は、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」です。

「無理をして学校に行かなくていい。」
「学校に行けなかった子供のために、個人の事情を勘案した教育の機会を確保する。」
ことを法律で規定しました。

そして、この法律が制定された翌年から、西宮市では、国や県の生徒全体に対する割合が上回るほどに急増したのです。

「無理ならば、学校に行かなくてもいい。」とするのであれば、学校に行けなくなった子供のケアについても具体的にしておかなくては当事者が困るのは当たり前のことです。子供たちの成長は、支援体制の整備を待ってくれません。市はもっと迅速に対応しなくてはなりません。

この法律の目的は、以下のように規定されています。
第一条 この法律は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とする。

地方公共団体の責務は、以下のように規定されています。
第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

基本理念は、以下のように規定しています。
第三条 教育機会の確保等に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保が図られるようにすること。
二 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること。
三 不登校児童生徒が安心して教育を十分に受けられるよう、学校における環境の整備が図られるようにすること。
四 義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、その年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにするとともに、その者が、その教育を通じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を送ることができるよう、その教育水準の維持向上が図られるようにすること。
五 国、地方公共団体、教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に行われるようにすること。

となっています。

つまり、
・全ての子供が学校で教育を受けられる環境を整備すること。
・学校に行けなくなった子供には、関係者と連携して個別の支援を講じること。
・義務教育を十分に受けられなかった人は、何歳になってもやり直せるような機会を確保すること。
と理解できます。

■当事者の声を聴く

私は、この法律によって、一人一人の課題と行政がしっかりと向き合える環境を整備することが必要になったと考えています。

そのような中、先日1月27日に、不登校親の会の方々と不登校対策の居場所づくりの運営をされている方々からご意見を伺う勉強会が、教育こども常任委員会の委員長が世話人となって西宮市議会で開催されました。

私もこれまで一般質問で取り上げるなど取り組んできた内容でしたので、是非直接かかわっていらっしゃる方々の話を聞かせて頂いて、どのような政策が必要なのかを考えたいと思い、参加致しました。

教育委員会に「子供が不登校の状況になる原因の多くは何ですか。」と質問すると、100人いると100通りの原因があるとの返事が返ってきます。

不登校になった気かけと考えられる状況は、こちらに、まとめられています。
↑クリックするとご覧頂けます。

しかし、勉強会に出席頂いた方々からは、この資料の中で不登校になった気かけと考えられる状況として、「いじめが0件」となっていることに驚きの声が上がりました。この調査結果と現場の感覚との乖離があることがわかりました。「いじめ」と「いじめ以外の友人関係」の境目の捉え方の違いによるものとも考えられますが、改めて、当事者のお話を伺うことの重要性を実感しました。「議会」として「議員」が同じ場所で聞くことがなお重要です。

また、子供の答えと行政が実施する調査の結果は必ずしも一致しないとの話もあり、こうした情報の不確実さと不登校に対する考え方が人によって異なる、という状況が、課題の解決までの道のりを長くしているように感じます。

せっかくの機会だからということで、勉強会に出席して頂いた方々には、たくさんの資料を用意して頂きました。
こうした勉強会の機会はなかなかないと思われていることの表れです。

勉強会では、
・ずっと家に引きこもらずにすむよう、様々な居場所を作っていくことが一番重要であること。
・親子の悩みを聞いてもらえる機会(親の居場所)を設けること。
・役立つ情報の提供が受けられる環境をつくること。

が必要であると改めて確認しました。

この勉強会に参加して頂いた方のご意見は、まだまだ一部分かもしれません。しかし、まずは、その一部分からでも動き始めなければ、もっと多くの事情を把握しても、対策が動き出すわけがありません。

そして、目先の「不登校生徒児童のケア」に取り組む中で、全ての子供が学校で教育を受けられる環境の整備についても考えていかなくてはならないと考えています。

今後も、次世代を担う「人」が育つ文教住宅都市を目指し、「子育て・教育環境の向上」に取り組んで参ります。

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