学校再開④-感染症に対する偏見や差別

2020年5月28日[カテゴリ:学校教育

6月の学校再開に関するコラム連載の最後です。

子供たちの心のケア

学校再開にあたっての保護者宛ての文書では、子供たちの心のケアの取組みについて触れられています。

市の文書の抜粋
【小・中・特別支援学校共通】
心のケア等に関すること
① 教育相談の充実
・児童等が、健康面や学習面でストレスを抱えていると考えています。学級担任や養護教諭等を中心としたきめ細かな健康観察等から、児童の状況を的確に把握してまいります。また、スクールカウンセラー等による支援も行ってまいります。
② 不当な差別や偏見の防止
・感染者、濃厚接触者とその家族、新型コロナウイルス感染症の対策や治療にあたる医療従事者や社会機能の維持にあたる方とその家族等に対する偏見や差別につながるような行為は、断じて許されるものではありません。そのため、新型コロナウイルス感染症に関する適切な知識を基に、発達段階に応じた指導を行うことなどを通じ、このような偏見や差別が生じないように努めてまいります。
・子供や保護者等が新型コロナウイルス感染症を理由としたいじめや偏見等に悩んだ場合の相談窓口として、「24時間子供SOSダイヤル」(ひょうごっ子悩み相談窓口0120-0-78310)や、ひょうごっ子SNS悩み相談窓口等を周知していますので、適宜活用下さい。

偏見や差別が存在することを前提に対策が考えられています。

学校を再開するにあたって、子供たちは、楽しみであると同時に不安とも直面することとなりますから、非常に重要な取組みです。まずは、子供にとってプレッシャーとなるであろう「休みにくい雰囲気」や「体調が悪いと言い出しにくい雰囲気」を作らないこと、また、そのためには、大人に対する啓発、正確な情報の開示も重要であると感じています。

そして、偏見や差別の定義はあいまいですし、感染者に対する偏見や差別の意識は見えにくく、思わぬところで蔓延しかねません。
ですので、いじめにもつながりかねない偏見や差別から子供たちを守る取組みについては、対応するための担当職員を各学校に配置してもいいくらい重要だと感じています。

ところが、市の連絡文書では、
1.感染症を正しく恐れるための情報提供
2.感染者や濃厚接触者が確認された際の対処方針
3.出席停止となった当事者の視点での検討

については示されておらず、子供たちの心のケアの取組みに実効性があるのか、心配になりました。

そこで、上記3点について、国のガイドライン等を見ながら検証してみました。

なお、現時点では、「偏見や差別が存在している」こと、「子供同士や子供から大人への感染が否定されていない」ことを前提として考え、以下、掲載してまいります。

感染症を正しく恐れる

まず、学校再開にあたって心配されるのは、児童生徒の感染による重症化です。

公益社団法人日本小児科学会さんが、次のような知見を令和2年5月20日に発表されています。
小児の新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見の現状
↑クリックするとPDFファイルが開きます。

まとめからの抜粋
⚫現時点では、学校や保育所におけるクラスターはないか、あるとしても極めて稀と考えられる。
⚫小児では成人と比べて軽症で、死亡例も殆どない。
⚫殆どの小児COVID-19症例は経過観察または対症療法で十分とされている。
⚫海外のシステマティック・レビューでは、学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しく、逆に医療従事者が仕事を休まざるを得なくなるためにCOVID-19死亡率を高める可能性が推定されている。
⚫教育・保育・療育・医療福祉施設等の閉鎖が子どもの心身を脅かしており、小児に関してはCOVID-19関連健康被害の方が問題と思われる。

報道を見て知りました。

内容を確認してみると、「学校や保育所におけるクラスターが極めて稀と考えられる」というのは、
①日本では3月から学校が臨時休業となり、4月上旬からは保育所では特別保育を実施したことの影響は考慮されているのか。
②例えば兵庫県では、3月に神戸市の認定子ども園がクラスターとなり、確かに幼児の陽性は確認されなかったものの、PCR検査によって幼児が感染していなかったことが確認されたのかどうかは分からない。
という点において、現時点では少し疑問は残ります。

しかし、小児の専門家が「知見」として正式に発表した情報ですから、重症化リスクについては安心したいところであり、公的機関の情報に基づいて、正しく恐れる必要があります。
「殆どの小児COVID-19症例は経過観察または対症療法で十分とされている。」という情報についても、「ほとんど」という文言が入っているとおり、重症化のリスク要因がある児童生徒に対するきめ細かな対応が必要となります。
そして、上記の市の取組みにも「学級担任や養護教諭等を中心としたきめ細かな健康観察等」と記載がありますので、この重症化リスクについては安心しても良いと理解しています。

そもそも「子供から子供、子供から大人への感染があるのか」すら、はっきりしない状態ですから、このように、正しくウイルスを恐れるための情報提供、一層の情報開示が必要です。

文部科学省には、これまでの日本の子供たちの感染に関する情報をまとめ、正確な情報を提供して頂けることを期待します。

感染者や濃厚接触者が確認された際の対処方針

次に心配されるのが、子供が無症状のまま家にウイルスを持ち帰ってくるのではないか、もしくは、知らないうちに学校で友達や先生にうつしてしまうのではないかという不安です。前者については、特に同居家族に重症リスク要因がある方にとっては非常に不安だと想像されます。

問題点1:子供を休ませるべき基準があいまい
現在の子供を休ませるべき判断基準があいまいであることが、学校での感染拡大リスクを高める要因の一つになるのではないかと考えています。

というのも、
個人差はあるかと思いますが、普段は、子供に高熱が出ない風邪症状が現れた際には、すぐに医療機関を受診することはせずに、市販の風邪薬を服用させてしばらく様子を見る保護者は多いと思います。また、インフルエンザの流行時には、インフルエンザが疑われるような症状がない限り、かえって、医療機関の待合室でインフルエンザ等に感染するのではないか、と恐れる心理が働きます。

また、この新型コロナウイルスのまん延期に、「偏見や差別が存在している」ことを前提とすると、変な噂が広がって子供が学校に行けなくなることを恐れる心理も働きますし、共働きやひとり親世帯の場合、仕事がありますから、「風邪気味」程度では、自主的に休ませるべきかどうか迷うのではないかと想像されます。

今のまま放置すると、
発熱を伴わない風邪気味程度の症状が新型コロナウイルス感染症であった場合、そのまま登校し続けることで感染を拡大させてしまうことが考えられます。まだ科学的な根拠はありませんが、無症状のまま感染が広がることを心配しています。

ですので、まず、「子供を休ませるべき判断基準を明示すること」が重要だと考えます。

問題点2:感染が確認された場合の対処方針があいまい
現在はまだ、発症した人が現れて初めて感染が確認されることになります。

ここで、文部科学省が策定した学校休業ガイドラインがあります。

学校休業ガイドラインより抜粋
1.臨時休業の実施にかかる考え方について
(1)児童生徒等又は教職員の感染が判明した学校の臨時休業の考え方について
 児童生徒等又は教職員の感染が判明した場合には,都道府県等の衛生主管部局と感染者の学校内における活動の態様,接触者の多寡,地域における感染拡大の状況,感染経路の明否等を確認しつつ,これらの点を総合的に考慮し,臨時休業の必要性について都道府県等の衛生主管部局と十分相談の上,実施の有無,規模及び期間について判断することになります。この際,学校医等ともよく連携してください。
(中略)
オ.その他
新型コロナウイルス感染症は,まだ解明されていないことが多い感染症であり,また感染者の活動の態様によっても感染拡大の可能性も異なってくることなどから,感染者数などによる一律の学校の臨時休業の基準を定めることは困難です。感染者が発生した場合には上記の点に留意して個々の事例ごとに学校の臨時休業の必要性,実施する場合の規模や期間について,衛生主管部局と十分に相談の上,検討してください。この際,学校医等ともよく連携してください。

となっています。

判断基準は非常にあいまいであり、臨時休業に至るケースは限定的と言えます。

児童生徒もしくは教職員等の感染が判明した場合には、消毒を徹底的に実施するだけではなく、無症状の児童生徒も含めて校内の一定数の方にPCR検査を受けてもらって、感染が広がっていないことを確認してからでなければ、子供たちは怖くて学校に行けなくなるのではないかと心配しています。

PCR検査には限界がある。

5月に入って、PCR検査を受けてもらうための第一関門である「帰国者接触者相談センター」に相談する目安は変更され、対象が広くなりました。

帰国者接触者相談センターに相談する目安
⚫少なくとも以下のいずれかに該当する場合には、すぐに御相談ください。(これらに該当しない場合の相談も可能です。)
・息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
・重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
(※)高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)等の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方
・上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)

↑この目安からすると、発熱がない限りPCR検査は受けさせてもらえなさそうです。

それでは、濃厚接触者にPCR検査を受けてもらうと感染の状況が確認できるのではないか、と考えられますが、この「濃厚接触者」の定義がまた微妙です。

3月25日のコラム(←クリックするとご覧いただけます。)に掲載した時には、濃厚接触者の定義がかなり限定的でしたが、4月20日に対象が拡大されました。

新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領より抜粋
⚫「患者(確定例)の感染可能期間」とは、発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロナウイルス感染症を疑う症状(以下※を参照)を呈した 2 日前から隔離開始までの間とする。
※発熱、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、関節・筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐など
⚫「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・その他: 手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。

子供たちはマスクをしていますし、教室では感染予防策が講じられていますので、濃厚接触者はかなり限定的になることが予想されます。
また、仮に校内の大多数がPCR検査を受けるとしても、PCR検査を1日30人程度しか受けられないような体制のままでは、1校で感染が確認された時点でパンクしてしまい、感染拡大の有無を確認するだけで数日を要することになります。

以上のことを勘案すると、学校内で感染が広がっていないことをどのようにして証明するのか、マニュアルなり、対処方針を児童生徒や保護者に示す必要があると考えられます。

出席停止となった当事者の視点での対応

最後に、児童生徒が感染、もしくは濃厚接触者となり、出席停止となった場合の対応に不安が残されています。子供が感染していなくても、同居家族が感染すると濃厚接触者として出席停止となることが想定されます。

文部科学省作成の「学校再開ガイドライン」には、以下の記述があります。

学校再開ガイドラインより抜粋
1.保健管理等に関すること
(2)出席停止等の扱いについて
 児童生徒等の感染が判明した場合又は児童生徒等が感染者の濃厚接触者に特定された場合には,各学校において,当該児童生徒等に対し,学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第19条に基づく出席停止の措置を取ること。なお,後者の場合において,出席停止の措置をとる場合の出席停止の期間の基準は,感染者と最後に濃厚接触をした日から起算して2週間とする。
 また,児童生徒等に発熱等の風邪の症状がみられるときは,自宅で休養するよう指導すること。この場合の出欠の扱いについては,「学校保健安全法第19条による出席停止」又は「非常変災等児童生徒又は保護者の責任に帰すことができない事由で欠席した場合などで,校長が出席しなくてもよいと認めた日」として扱うことができる。
 これらの場合,指導要録上も「欠席日数」とはせずに,「出席停止・忌引等の日数」として記録を行うようにされたい。
(中略)
 学校保健安全法第19条による出席停止の指示等を行った場合においては,当該児童生徒が授業を十分に受けることができないことによって,学習に著しい遅れが生じることのないよう,「2.学習指導に関すること」に記載の必要な措置を講じること等にも配慮すること。

となっています。
このガイドラインだけでは、現実的には対応できません。「児童生徒等の感染が判明した場合又は児童生徒等が感染者の濃厚接触者に特定された場合」の当事者に対する具体的な対応や支援が示されていないからです。

仮に、上記の「学校休業ガイドライン」にあるとおり、感染者が確認されても学校を臨時休業しなかった場合、生徒児童が新型コロナウイルスにより出席停止になった子供の立場になって考えると、思いつくだけでも、
①出席停止期間中の学習
②個人情報の保護
③学校への復帰

の3点についてどうするのか、という課題が考えられます。

①出席停止期間中の家庭学習の支援
出席停止となってしまうと、最低2週間の休みとなり、何の支援もなければ、ますます学習に遅れが生じることとなります。また、通常の病気欠席の時のように、子供に連絡帳や配布資料の受け渡しをお願いしても大丈夫なのか疑問です。当面の間は、連絡と資料の受渡しの手段は電話とEメールが妥当と考えられます。
そして、無症状であれば自宅待機ですから、家庭学習も可能と考えられ、家庭学習に対する支援が引き続き必要ということになります。

こうした細かい対策が示されていません。

以上のことを考えると、学校が再開してもなお、オンラインでのやり取りを可能とする環境の整備が急務であると考えます。

いまだ、オンライン環境の整備のための予算すら上がってこない状況ですし、教育委員会及び学校が新型コロナウイルスによる長期欠席者に対する学習支援をどのように行う方針なのかも不明であり、不安が残されています。

②児童生徒及びご家庭の個人情報の保護
これは非常に難しい課題です。差別や偏見が全く存在しなければ、全く気にする必要はないと思うのですが。。。

SNSの時代ですから、悪気なく、不確かな段階で間違った情報が拡散する可能性があります。そして、学校は狭い世界ですから、この2ヶ月間とは比較にならないほど、個人が特定される確率が高まります。

保健所は個人情報を必死で守ってきましたが、いよいよ容易ではなくなってしまいます。

「今日、Aさんが休んでた。」と、子供が何気なく保護者に話をした場合を想像すると、絶対(と言っていいくらい)に最後まで隠し切ることは不可能と考えるべきです。
ですので、子供が大人に報告することを前提とした対応が必要であり、少なくとも、誤った情報が流されないよう、大人に対する啓発と正確な情報の開示が、今まで以上に重要になります。
正確な情報の開示がなされなければ、「体調が悪くても休みにくい環境」にもなってしまいます。

現実問題、感染者や濃厚接触者が校内で確認された時点で、2週間以上の臨時休業を実施しない限り、個人情報の秘匿はほぼ不可能と私は感じています。
偏見や差別から子供たちを守るためには、個人情報の保護の取組みについても、西宮市の方針を早く示すべきです。

③学校復帰の支援
インフルエンザの場合、完全に体からウイルスがなくなると言われる期間、出席を停止するので、復帰の時のウイルスの心配は聞いたことがありません。

しかし、新型コロナウイルスの場合、2週間の出席停止と決められているものの、確かな情報が少ない中で、復帰する子供がウイルスをもっていないことを子供たちに説明する必要があると想像されます。濃厚接触者というだけでは、現在はPCR検査は受けさせてもらえないようですが、子供の場合、2週間発症しなかった場合でもPCR検査による陰性の確認だけはしておかなければ、いじめにつながる恐れ、不安は払しょくできません。
また、①出席停止期間中の家庭学習の支援がなされず、学習の遅れを放置してしまうと、授業にもついていけなくなる恐れもあります。
このように、細かい対応に関する方針と学校現場への支援も不可欠であると思うのですが、市教育委員会からの連絡文書には示されていません。

このように、市ができること、やらなくてはならないことは、どんどん山積していっています。

そして、子供の心のケアといじめの防止について実効性を突き詰めて考えた時、第2波どころか、濃厚接触者や感染者が確認された学校については、再度の長期臨時休業に備えなければならないことが見えてきます。
ですので、新型コロナウイルスとの共存下で子供の学びを保障するためには、様々な観点からオンライン授業の環境整備が待ったなしの状況であることを、まずはトップが認識すべきです。

引き続き、調査を続けます。

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