学校再開③-中止となった教育活動

2020年5月26日[カテゴリ:学校教育

インターハイの中止、夏の高校野球大会の中止など、子供たちにとって一生に一度しか挑戦できない貴重な機会が奪われていっています。
西宮市でも、すでに貴重な学習の機会である行事を中止にすることが決定されています。
まだ油断はできないと言われるものの、一定の収束を実現したなかで、もう一度できる方法を考え直してあげて欲しいというのが本音です。
しかし、普段の教育活動の感染防止対策と授業時間の確保もままならない中で、それ以外の行事の感染防止対策まで手が回らないというのが実情かと推察されますし、工夫で乗り切れるレベルではないと思われますので無理は言えません。

中止が決定された教育活動

市の文書の抜粋
・臨時休業のため、時間の確保が困難であることや、3密を回避する等の点、及び使用会場の都合により、次に掲げる全市的行事の開催は中止する。
【小学校】
6月6日 小学生陸上競技大会
7月1日~3日 西宮市立小学校合同音楽会
7月31日 小学生のふれあい読書会
9月12日~13日 理科・生活科作品展
11月17日 西宮市立小学校連合体育大会
8月下旬 宿泊を伴う自然学校(5年)

なお、自然学校については、県より、臨時休業の長期化に伴う実施方法等の弾力化の方針を受け、今年度は各校において1日単位で実施する。
【中学校】
6月13日 西宮市内の公立高等学校合同説明会
7月31日~8月12日 中学生スポーケン派遣
8月18日 中学生の読書会・図書委員のつどい
8月19日 中学生英語スピーキング大会
8月21日 中学生の主張大会
9月12・13 日 理科・生活科作品展

(中学校連合体育大会については、オリンピック開催予定であったため、会場の都合により昨年中止が決定していました。)

西宮での伝統を積み重ねてきた甲子園球場での「連合体育大会」については、昨年のコラムにも掲載しましたが、個人的にも思い入れのあった教育活動ですから、高校球児にとっての全国高校野球大会中止の重みとは比較になりませんが、小学校連合体育大会中止の決定は非常にショックです。

検討中の教育活動

市の文書の抜粋
■部活動について(中学校)
・当面は実施しない。感染状況の推移などをみながら、実施に向けた検討を継続する。
・6月下旬より予定されている西宮市夏季総合体育大会の実施については検討中。
 後日連絡する。
■宿泊を伴う行事について
【小学校】
・8月下旬以降に延期予定の修学旅行(6年)の実施については検討中。
【中学校】
・8月下旬、又は9月上旬に延期予定の修学旅行(3年)の実施について検討中。

↑特に中学校3年生にとっては、義務教育最終学年となります。何とか工夫して密にならないよう分散しながらでも実施してあげて頂きたいと思います。

授業時数の確保と学習評価等について

市の文書の抜粋
【小・中学校】
夏季休業期間中に、授業日の設定を予定している。
 期間及び実施方法については5月29日に連絡。
【特別支援学校】
・夏季休業期間中に、授業日の設定を予定している。
・期間及び実施方法については、後日連絡させていただきます。

↑いずれも、夏季休業期間の短縮を示唆しています。そして、土曜日の授業については触れられていませんが、市立小・中学校の先生は大半が県費の職員ですから、県の「職員の勤務時間、休暇等に関する条例」で先生方の勤務条件が決められていて、市が勝手に判断することはできないものと推察されます。

なお、文部科学省の学校再開ガイドラインも以下のとおりとなっています。

学校再開ガイドライン
2.学習指導に関すること
(2)補充のための授業等を行う場合の留意点
 各設置者等の判断で,長期休業期間を短縮したり土曜日に授業を行ったりすることは可能であるものの(学校教育法施行令(昭和 28 年政令第340号)第29条,学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第61条等),その際,児童生徒の負担が過重とならないように配慮するとともに,各学校の指導体制に見合った授業日数・授業時数となっているかなど,教職員の負担が過重とならないように配慮すること。(また,週休日である土曜日に授業を行う場合には,教職員の勤務日及び勤務時間について,各地方公共団体の条例等に則り,適切に振り替えを行うことが必要となること。 )

また、平成25年12月議会の一般質問(←クリックするとご覧頂けます。)で取り上げ、学級崩壊による授業の遅れを取り戻すために、土曜日に補習をしてもらえないかと質問しましたが、「研究する」との答弁があり、それ以降も県との協議がなされた形跡は見られません。

来年から9月入学に変更したら中止された教育活動を取り戻せるのか

4月30日のコラム(←クリックするとご覧頂けます。)でも9月入学の提案がこのタイミングでなされることについて「浅はか」と掲載しましたが、今年度の各学年の子供たちが、上述の中止と決定された教育活動に参加することができるようになるのであれば、この時期に検討することに意義はあると思います。
しかし、先のコラム(←クリックするとご覧頂けます。)でも書いた通り、これまでの文部科学省や教育委員会の対応を鑑みても、また、来年の今頃に新型コロナウイルスが終息している保証もないことから、今年度中止となった行事のやり直しは期待できません。

そして、小学校では、今年度から新しい学習指導要領が全面実施されることになっており、外国語の授業が加わって3年生より上の学年は、授業時数が大幅に増える予定でした。学校では対応を準備していたと思いますが、臨時休業の影響で年間指導計画の見直しを余儀なくされ、特に、5、6年生で教科化された外国語と、プログラミング教育をどのように効率的かつ効果的に教えていくのか、手探りで進めていかなくてはならない状態と推察されます。

また、来年度は中学校で新しい学習指導要領が全面実施となり、アクティブラーニングの実現のため、教科書の分量が増加するそうです。つまり、今の小学校6年生は、新しい小学校学習指導要領の教科書を混乱の中でこなしてから、新しい中学校の環境に慣れていかなければならないことになります。ですので、小学校から中学校へスムーズに接続できるようカリキュラムの修正が不可欠と思われます。

このように、ただでさえ、今年から数年間は教育改革の過渡期になるなかで、9月入学制への変更に伴う学年の区切りの調整や教室不足、施設の待機児童の増加など、新たに対策を講じなければならないような課題をわざわざ増やすべきではありません。

学びの保障、学習時間を確保するためには、入学制度を半年延ばすのではなく、小学校から高等学校までの各学年を通して、例えば全国一斉にカリキュラムを半年程度ずらして、2年~4年程度かけて臨時休業前に想定していたカリキュラムに戻していくなど、子供たちが力をつけられる行程を示して周知を図り、学校現場が対応できる環境をつくることに文部科学省には専念してもらいたいと私は考えています。

学習指導要領のカリキュラムや市立学校の年間指導計画の見直しについても、調査を進めなければなりません。

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