要介護認定作業の透明性の向上①ー令和2年6月議会一般質問

2020年8月11日[カテゴリ:医療・福祉, 質問

先週金曜、西宮市議会では、新型コロナウイルス感染症対応に必要な補正予算を審議、議決するための臨時議会が開かれ、約32億4600万円を増額する補正予算が可決しました。

補正予算の内容につきましては、6月議会で予算化されたものも含めて、後日、掲載したいと考えています。

そして、連日、暑い日が続きますが、新型コロナウイルスの感染者については、西宮市では、昨日10日(月)は5名、本日も3名の感染が確認され、3週間連続で感染者が確認されています。
そして、市内の高齢者施設でクラスターが発生したことも確認されています。感染者の発表に一喜一憂することなく、引き続き、備えを確認しながら、注意していかなくてはなりません。

さて、
少し更新が滞ってしまいましたが、今回も前回のコラムの続きとなります。
介護認定作業については、以前より、様々な課題が指摘されてきました。
令和2年6月議会一般質問では、新型コロナウイルスによる影響と認定結果に対する説明責任に分けて議論しました。
まずは、新型コロナウイルスによる影響に関する議論を掲載します。

=====本会議場での議論の概要=====

令和2年6月議会一般質問(6月26日)

3.介護保険事業について
■質問3

(介護認定作業に対する影響)
外出自粛により高齢者の介護状態の悪化が懸念される中、要介護認定においても、調査員による面談、主治医の意見書、介護認定審査会の開催が必要であり、感染症拡大により影響を受けることが懸念されますが、影響と対策をお尋ね致します。

■質問3に対する市の回答
厚生労働省からの通知により、新型コロナウイルス感染拡大防止を図る観点から、面会が困難な場合においては、主治医による意見書の作成及び認定調査員による訪問調査を省略し、要介護認定及び要支援認定の有効期間を従来の期間に12か月までの範囲で延長することができるよう、臨時的な取扱いが認められております。そういった認定更新の臨時的な取扱いも活用し、新型コロナウイルスの影響を抑えつつ介護認定業務を進めており、現時点では、介護認定に係る期間が従前に比べては延びてはおりません。

=====ここまでが、本会議場での議論の概要=====

新型コロナウイルスの影響で、介護認定が受けにくい環境となってはいけませんので確認しました。一度、介護認定を受けている方にとっては、状態に変化がない限り、12ヶ月延長することが可能となっています。しかし、新たに介護認定を受ける場合には、認定調査員による訪問調査や主治医の意見書が必要となります。
高齢者の方が外出を自粛することで運動機能が低下することが指摘されていることもあり、介護認定の件数が増えていく可能性もありますので、引き続き、介護環境の保全に対する注意が必要であると考えています。

次に、新型コロナウイルスとは関係なく、要介護認定作業の透明性、結果に対する説明責任について質問しました。

これまで幾度か、
・要介護認定の結果がおかしい
・知人と同じような状態なのに要介護度が低く認定された
・認定の結果の詳細について問い合わせても教えてもらえない

など、要介護認定の判定基準が不透明であると市民の方から指摘を頂いてきました。

市民がそのように感じる要因がはっきりしませんでした。
そこで、昨年の9月議会の決算委員会と今年3月の予算委員会で質疑をした結果、その要因の一つが浮上してきました。

令和元年9月議会

決算委員会(健康福祉分科会)での議論の概要(抜粋)

■質問の背景
保険者機能強化推進交付金について伺っておきたいと思います。
介護予防・重度化防止についてなのですが、平成30年度からのようなのですが、こちらは国の取り組みで、介護保険特別会計で(決算書399ページ)約6,800万円が収入されています。
こちら(保険者機能強化推進交付金)はいくつかの指標があって点数化されています。

■田中の質問1
満点は612点なのですが、西宮市の採点は612点中何点となって約6,800万円を収入しているのか、教えてください。

■質問1に対する介護保険課長の回答
平成30年度の市町村の指標のうち、西宮市の点数は506点となっております。

■田中の質問2
この点数の向上に向けた取り組みを教えてください。

■質問2に対する介護保険課長の回答
平成30年度の指標の中で本市があまり得点できていなかった項目の例としましては、

①2025年度における認知症高齢者数やひとり暮らし高齢者数の推計を実施しているかどうかといった問題、
②所管サービス事業所への実地指導の実施率、
③地域包括支援センターの3職種(保健師、主任ケアマネージャー、社会福祉士)の1人当たり高齢者数が1,500人以下かどうか、
④在宅医療介護連携において市町村等が所持するデータを活用して課題を検討し対応策を具体化しているかどうか、

こういった項目において得点できなかったという状況になっております。
 
そこで、「2025年度のひとり暮らし高齢者数の推計の実施など」の項目につきましては、次期の介護保険計画を検討する中で、どういった推計が可能であるかということを検討する中で取り組めるかどうか考えてまいりたいと考えております。

その他の項目につきましては、この指標を上げるためだけに簡単にできるものではございません。
(3職種の専門職)1人当たり高齢者数が現在2,000人のところを1,500人以下に下げれば指標は上がるのですが、すぐに改善できるものでもございませんので、総合的にできるものから取り組みを進めてまいることになると考えております。

■回答を受けての田中の意見
この点数を上げると、さらに国庫支出金が入ってくるということだと思います。
 
地域包括支援センターの専門職の人数を、2,000人に1人から1,500人に1人に上げることによって、さらに点数が上がるということで、他市との比較になってくるとは思いますが、その点数が何点上がったら、どれぐらいの収入が増加するのかを分析して、対応を考えることはできないものかと思います。
(点数が上がれば)財源が増えるわけですから、その財源を活用して(専門職の人数を)増やすことができないのかといった調査研究も必要だと思います。せっかく国がこのような交付金を用意してくれていますから、活用する方向でそれぞれの項目に取り組むべきです。

あと、2025年の推計ですが、次の介護保険計画はもう2025年に近づいていますので、この指標は変わるかもしれませんが、将来の見込みを立てているかということが問われていると私は理解しています。ですので、(これまでの本会議で何度か提案してきた)将来ビジョンの策定について、市にも重く受けとめて頂き、策定してもらえるよう要望しておきます。

■質問の背景
(保険者機能強化推進交付金)を決定する指標の中で、「要介護状態の維持・改善の状況等」という項目では、要介護状態の改善状況などが点数化されていると思うのですが、この点数を上げるために、3年に1度の介護認定の見直しのときに、さほど介護状態、身体の状態が変わっていないのに、介護度を下げられた、そういったことが起こるとこれはもうとんでもないことです。
そのようなことはないとは思うのですが、一方で実際に、家族が介護認定を受けたときに、近所の方は同じような状態なのに要介護3で、うちはなぜ要介護2なのだろうというところがきっちり説明できてない状況にあります。

■田中の質問3
「要介護状態の維持・改善の状況等」の項目の点数はどうなっているのか教えてください。

■質問3に対する介護保険課長の回答
30年度の指標は61項目ございますが、ほとんどが介護サービスを取り巻く体制づくりに関係する指標でございまして、介護度の改善に関する指標は2項目でございました。本市は、20点満点中20点を取得しておりますので、満点をとっております。

■田中の質問4
(市民の疑念が生じている)状況について、何か対策を考えているのかお尋ね致します。あわせて、そうした介護認定の判定に不服であったり、疑問を持った方が、市や地域包括支援センターに問い合わせ、相談されている件数を把握されてましたら教えて頂きたいのですが、平成30年度の数値で結構です。

■質問4に対する介護保険課長の回答 
交付金の指標という関係の部分について私からお答えをさせていただきます。
平成30年度の指標が算定された時点では、どういった時点のデータを比較して指標の点数が決まるかといったことは明らかにはされておりませんで、厚生労働省のほうで過去のどこかの時点を比較されまして、全国的に上位3割に入っているのかといった形で点数がついております。
今後につきましても、その指標をどういう形で設定するかは厚生労働省のほうでされている部分もございまして、市のほうでこの交付金の得点を上げるために、介護度を操作致しましたリとか、介護サービスを制限致しましたリといったようなことはしておりません。

■質問4に対する高齢福祉課長の回答 
介護認定につきましては、調査員が74項目の調査と主治医意見書をあわせて全国共通の判定ソフトで1次判定を行い、審査会にて2次判定をして認定しておりまして、その方の介護にかかる時間をもとに判定しており、医療的見地だけの判断でないために、申請された本人とか家族との認識の差があることはございます。
本人との認識差がある場合については再調査を受け付けておりますし、また、認定後、急激に状況が変化した場合には変更申請も受け付けております。

なお、再調査の件数について、今、手持ちの数字は持っていません。

■回答を受けての要望
御答弁では介護認定による操作はできないようになっているということを確認できましたので、市のほうも当然そういったことはしていないということでまず確認しておきたいと思います。
一方で、不服があれば、再調査できるということなのですが、不服といいますか、(介護度判定の結果に対する)疑問の問い合わせ等があると思われます。それらを丁寧に説明していかないといけないと思います。
市もソフトを使って計算されているということですので、我々には分からないところもあるのかもしれませんが、それが不信感につながらないようにきっちりと対応したほうがいいと思いますので、検討をお願いしたいと思います。

7年前、平成24年12月議会で提案した政策(←クリックすると該当するコラムが開きます。)を、市が真摯に受け止めて取り組んでいれば、さらに点数が上がり、保険者機能強化推進交付金が増加していた可能性があると思うと残念でなりません。

また、上記のとおり、市より、国の交付金目当てに介護度を意図的に操作していることはないとの回答がありました。大変失礼な質問とは思いましたが、疑念を晴らすことも必要と考え質問しました。

そして今度は、今年3月の新聞報道により、1次判定(パソコンでの判定)から2次判定(審査会による判定)に至る中で、介護度が引き下げられている件数の割合(全審査件数に対する)が、西宮市は全国で7番目に高いという事実が判明しました。

3月の予算委員会健康福祉分科会の質疑において、データの提出を要求しました。

令和2年3月議会

予算委員会(健康福祉分科会)での議論の概要(抜粋)

■質問の背景
(3月7日の日本経済新聞の記事「ばらつく要介護認定 99%の⾃治体が全国判定を変更」に関して他の議員から質疑が行われたことを受けて)先ほど、介護認定の引き下げと引き上げの議論がありましたが、これは決算のときに私も質問したことがございまして、そのときの私の質疑が、介護度が同じような状態なのにばらつきがある、「知り合いは要介護3なのに、同じ状態なのになぜうちは要介護2なのか。」という疑問が生じる要因として、国の交付金に関して議論しました。
御答弁では、交付金を頂くために操作するようなことは当然していないということで、(判定結果に不服があれば)再調査できますという御答弁があり、その再調査の件数については「今、数字を持っていない」で終わっています。

■田中の質問
この再調査をされた件数は、今、手元に数字はございますか。

■高齢福祉課長の回答 
まことに申しわけありません。今、手元にございません。

■意見・要望
資料をお願いしたいのですが、まず、再調査した件数を3年分頂きたいと思います。
そして、(介護度の)引き下げの件数のうち、更新と新規について件数の内訳を頂きたいです。つまり、更新のときに引き下げが行われている人と、新規で介護認定を受けたときに引き下げになっている人の数字を頂きたいです。
もう一つ、再調査の後に介護度が上がった件数を資料で頂きたいです。

こうしたやり取りの結果、資料提供を受け(←クリックするとPDFファイルが開きます)、市民からの疑念の要因と思われる事実が判明し、一般質問で議論するに至りました。
長くなりましたので、一般質問での議論については、次のコラムで掲載します。

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