西宮市では、「待機児童が解消されるまで民間移管は進めない。」という方針のもと待機児童対策を進めてきましたが、結局、待機児童が解消されないまま8年が経過しようとしています。
市立保育所の民間移管計画の実現性については、平成24年12月議会一般質問(←クリックするとコラム「保育所民間移管計画の実現性①」が開きます。)でも取り上げて議論しましたが、ここまで待機児童を解消できない市役所の仕事ぶりをみていると、民間移管を進めないようにするために、わざと待機児童を発生させているのではないかと疑いたくなるくらいです。
そこで、平成27年12月議会において、議員時代には公立保育所の民間移管に積極的であった市長に対して、待機児童の解消と民間移管を同時に達成する方策について提案し市長の見解を問いました。
====本会議場での議論の概要====
平成27年12月議会一般質問
1.子育て・教育環境の向上について
ア)保育所の待機児童対策
■質問の背景(再掲)
資料の表1をごらんください。
本市では、平成16年度から平成26年度まで、約25億円を投じて民間保育所や小規模保育所の新設、改築を進め、2,144名分の定員を増やしてきました。
しかし、次のページ表2のとおり、本年11月1日現在で、希望する保育所に入所できない不承諾児童は887名にも上り、そのうち夙川地域には207名と、大変厳しい状況となっております。
また、本年3月の待機児童と年度が変わる本年4月の不承諾児童を比較した表3の状況を勘案すると、来年度は、年度当初から入所できない不承諾児童が大幅に増加するのではないかと懸念しております。
市内では、待機が多い地域ほど保育所の建設用地の確保が困難であり、保育所の新設が進まない状況になっていると推察されます。
また、多くの保育士や保育面積を必要とするゼロ歳児の需要が非常に多いといったことを勘案すると、さらに抜本的な対策を検討する必要があります。
■質問
以前にこの議場でも提案(←クリックするとコラム「保育所民間移管計画の実現性③」が開きます。)したとおり、保育所の安全対策の観点からも老朽化した公立保育所を民間移管することによって建て替えを促進し、同時に定員増も図ることが可能と考えますが、市長の見解をお尋ね致します。
■市長の回答
公立保育所の建て替えの際に民間移管して定員増を図るべきではないかとの御提案にお答え致します。
現在、市では、耐震化や老朽化対策を図ることを目的として、公立保育所の耐震改修や建て替えを順次実施しておりますが、特に建て替えに際して、御提案のような当該建て替え園の民間移管や、それに伴う定員増を検討することについては、市として十分とり得る手法の一つであると考えております。
しかしながら、これらを検討するにあたりましては、当該地域において公立保育所が担うべき役割の明確化や、民間保育所の意向、さらには、将来的な人口動態を考慮した地域における適正配置のあり方等について分析を行う必要があるものと考えております。
公立保育所の民間移管についても、選択肢として排除するわけでは全くございませんので、今後とも、市内の各地域において、良好で持続可能な子育て支援環境を提供できるよう、あらゆる方策を柔軟に検討してまいります。
■田中まさたけの意見
(待機児童の解消に向けて)市が積極的にできることとして、民間移管による定員増について今日は提案して見解をお尋ねしました。市長からは、「民間移管については否定するものではない」というお答えを頂きました。丁寧な議論・検討はもちろん必要だと思うのですが、市長にはもう少し前向きに取り組んで頂きたいと思います。
ここ何年か、アサヒビールの跡地の問題で、市長はマニフェストと選挙の結果をもってこれまで議論してきたものを全て白紙にして政策を推進されています。そういう政治姿勢も私は否定はしません。であれば、同じくこの民間移管についても、市長は小さくではありますがマニフェストとして挙げていらっしゃいましたし、民間力の活用は、明確に方針として示した上で選挙で当選されたと私は思っています。
否定をしないというお言葉がありましたから、その思いはまだ変わっていないと理解はしますが、むしろ当選されてから1年半が経過する中で、いきなり「民間移管します」みたいなことはできないにしても、今日の御答弁は少しお粗末だったのと違うかなと。対応が遅いです。
今まで議論してきたことをぶっ潰すわけにいかないというのがあるのかもしれませんが、片やアサヒビールの跡地の政策ではそれをなされました。市長が本当に待機児童の解消が必要で、かつそれは民間移管によって実現しようということで取り組んでいれば、今ごろおそらくそういう方針は示せたと私は思いました。ですので、今日はその辺の進展も含めて問いました。
今後、そのマニフェスト、あまりマニフェスト、マニフェストと私は言いたくないのですが、マニフェストにも書かれておりましたので、もう少しスピード感をもってこの課題については取り組んで頂きたいと思います。御答弁の中でも、総合的にいろいろと分析しなければならないといった趣旨の回答があったと理解しておりますが、いつまでに分析されるのかというところも正直まだ疑問でございます。ですので、その辺はきっちりと市長のほうで検討して頂いて、明確な方針を具体化して頂きたいと最後に要望申し上げます。
====ここまでが本会議場での議論の概要====
市長からは、老朽化した公立保育所が所在する地域において、「公立保育所が担うべき役割の明確化や、民間保育所の意向、さらには、将来的な人口動態を考慮した地域における適正配置のあり方等について分析を行う必要がある。」との回答がありましたが、その分析を実施する時期は示されませんでした。
公務員の非効率を批判し、改革を訴えていた市長ですら、公立保育所の民間移管については当選から1年半も放置していたことが露呈しました。公立保育所の民間移管が、なぜこれほどまでに市役所内部から抵抗されるのか分かりません。
今後も、市長が回答した「分析」のゆくえを注視し、議論してまいります。