前回のコラムの続きで、次は、財政に大きな影響を及ぼすことが予想される公共施設の老朽化対策についてです。
公共施設の維持管理には一定の費用を要します。特に、建替えをするとなると多額の財源を要します。
平成18年6月議会一般質問(←クリックしてご覧ください)で、公共資産のアセットマネジメントの必要性を提言して以来、西宮市の財政力に応じた公共施設の総量を抑制するとともに、各施設の状態の最適化を図るべきと主張してきました。
西宮市では、平成23年8月に「公共施設白書」が作成されたところから「公共施設マネジメント」の取り組みが始まり、平成24年に「公共施設マネジメントのための基本的な方針」が示され、平成29年3月には公共施設等総合管理計画が策定されました。しかし、取組みを始めたから8年が経過してもまだ、一向に方針通りに進んでいることが実感できません。
このままでは、多数にある公共施設の老朽化がどんどんと進み、維持管理に多額の費用が必要になる状況は改善されず、財政運営に大きな影響を及ぼすことは明白です。そのような中、市長の平成31年度施政方針において、市民館単独での建て替えの方針が示されたことから、代表質問において市が掲げる公共施設マネジメントの方針の実現性を問いました。
====本会議場での議論の概要====
平成31年3月議会代表質問より
2.未来を見据えた財政運営について
(公共施設等総合管理計画で示されたマネジメント方針の実現性について)
■質問の背景(田中まさたけ説明)
施政方針において、市長は、市民館を順次建て替えると述べられ、同時に、市民館、公民館など施設の効率的な活用に引き続き取り組むと述べられました。
市長は、一方で、公共施設マネジメントにおいて、それぞれの建築物の特性に応じた保全・再編計画を策定することによって、事業費の平準化やトータルコストの縮減を図るとし、施設機能の集約化・複合化を図ると方針を示されました。一方で、この計画策定に先立って、小学校に隣接している市民館の単独での建替えが予算化されております。また、近々、児童館の単独での建てかえも予定されているそうです。今後、市民館や公民館、児童館の建てかえについては、近隣の小学校の建てかえ更新にあわせて複合化を進めるなどしなければ、総量の縮減を図ることは困難であると考えます。
■質問1(田中まさたけ)
それぞれ近隣の建築物の建設時期が大きく異なっている中で、市民館、公民館、児童館などの建替えについては、近所にある小学校の改築時期まで長寿命化しなければ、集約化・複合化は不可能と考えますが、市の見解をお尋ね致します。
■質問2(田中まさたけ)
中期的に延べ床面積を縮減することが実現不可能なのであれば、方針を転換し、建替えに要する事業費の平準化を図るために、さらに施設整備の財源確保の取り組みを強化する必要があると考えますが、市の見解をお尋ね致します。
■質問1・2に対する市の回答
学校施設の複合化は、公共施設マネジメントの柱となる考え方でございます。特に学校の改築時におきまして、児童生徒数が減少し、学校の施設規模を小さくすることができる場合や、敷地に余裕のある学校につきましては、学校施設の複合化が可能であると考えております。近年の学校の改築や新築では育成センターや子育てルームとの合築を行っておりまして、今後も、学校施設が地域コミュニティの核となるべき施設であることを基本に、教育委員会と関係部局が情報を共有し、連携を図りながら、改築や長寿命化のための大規模改修時におきまして、可能な範囲で学校や公共施設の機能強化のための複合化に取り組んでまいります。
また、複合化による機能面の強化だけでなく、施設総量の縮減におきましても学校施設の複合化の取り組みは重要でございますが、対象となる施設が耐震面での課題を抱えていたり、学校施設側の状況や更新時期等が大きく異なる場合など、複合化の実現が困難な場合がございます。このため、公共施設マネジメントにおきましては、総量の縮減といった観点のほか、議員御指摘のように、資産の有効活用による財源確保の取り組みを積極的に進め、全体として良好なサービスの提供を持続可能なものとする公共施設マネジメントに努めてまいります。
■意見・要望(田中まさたけ)
公共施設の老朽化の話がよく出ます。あちこちで建て替えをしないといけない、耐震化しないといけない、これからそういった施設がたくさん出てくると思います。それらの財源を一気に確保するのが厳しいことから、長寿命化するものも多数あります。裏を返せば、長寿命化するということは、ツケを先送りしているだけとも言えます。ですので、そこをもう一度しっかりと見直しませんかということを今日は言いたかったです。
====ここまでが本会議場での議論の概要====
西宮市役所には、計画や方針を策定するのはいいのですが、その方針がうまくいかなかったり、求めていた効果が得られなくても改善をしようとせず、そのまま放置してしまう悪い癖があります。
公共施設マネジメントの取組みにおいては、
1.維持管理の最適化(管理の効率化と、施設の状態を良好に保ち利用者の快適性を高める)
2.施設性能の最適化(中長期的視点からの計画的な保全整備や施設の長寿命化)
3.施設機能の最適化(用途転換や複合化など施設の再配置)
4.施設総量の最適化(余剰となる施設の再編・処分)
という方針が示されています。
特に、4番目の施設総量の最適化については、人口減少時代には施設の統廃合が必要になるのですが、施設の廃止については利用者や地域の方々の思い入れ等により、総論賛成・各論反対の傾向が強くなり進まない傾向にあります。
私は、民間の法人が担うことが可能な保育所や幼稚園はできるだけ民間に委ねることで、公立保育所や公立幼稚園の建物を廃止すれば、総量の最適化も可能であり、浮いた財源で子育て支援策の充実が図れると考えていますが、なかなか市はこの政策を受け入れようとしません。
それができないのであれば、限られた財源で市政を運営する必要があるわけですから、公共施設に費やさなければならない財源をしっかりと確保して1~3の方針を実現するとともに、他の経常的にかかる施策を何か諦めることで持続可能な財政運営を実現するよりほかないわけです。
今後も議論が必要です。