未来を見据えた財政運営⑤-市立保育所民間移管計画の実現性

2019年6月27日[カテゴリ:保育所政策, 質問

 これまで市立保育所の民間移管については、何度も取り上げて議論し、近年では、平成27年12月議会一般質問に取り上げましたが、公立保育所の民間移管は一向に進みません。

 西宮市立保育所民間移管計画は平成19年度に策定されました。その内容は、現在の公立保育所の土地で民間移管するのではなく、民間移管対象園の近所に先行して民間認可保育所を整備し、その後に、その公立保育所の募集を停止し、募集停止の6年後に閉園するという内容でした。「先行整備方式」と呼んでいます。

 しかし、計画が示された後に待機児童解消計画が策定され、待機児童が解消されるまでの間、公立保育所を閉園しないという方針が示されました。
 当初は平成25年度には待機児童が解消されるとの見込みを市は示していましたが、待機児童が解消されるどころか、入所保留児童は増える一方で、現在に至っています。その結果、10年以上も民間移管計画が実施されないまま、放置されてしまっています。

 今思えば、そもそも、他の自治体では、今ある公立保育所を民間に移管する方法が主流であるのに対して、この先行整備方式で計画が示された時点で、抵抗勢力に押された西宮市役所による保育所民間移管の先延ばし策であったことを疑うべきでした。

 保育所民間移管計画に関する議論については、平成24年12月議会一般質問の議論もご覧ください。

 そして、待機児童が解消されない間に、ついに、待機児童が解消されたら廃園することになっていた民間移管対象園までをも、公立のまま建て替えるという方針が示される事態となりました。
 その園は朝日愛児館保育所で、建築から50年が経過し、老朽化が進み、耐震化もしなければならない建築物です。休園となった市立用海幼稚園の園庭に仮設園舎を建てて、現在の土地にリースで園舎を借り、仮設のようなところで引き続き保育を受けなければならないのです。
 私が平成24年12月議会一般質問で取り上げたことを7年前に市が本気で受け止めて、仮にこのタイミングでの民間移管の準備を進めていれば、現在の土地にもっと立派な今後数十年は使える新しい園舎が建設でき、子供たちはそこで保育を受けることができたのです。西宮市は民間移管に対する抵抗勢力を慮り、明らかに市民サービスを低下させたのです。

 もちろん、公立保育所が憎くくて民営化を主張しているのではありません。住民福祉を維持するためには、民間にできることは極力民間に委ねなければ、将来的に財政も人員も限界が訪れ、将来世代にツケを残すことになると考えて、計画的に民営化を進めざるを得ないと主張しているのです。

 平成31年3月議会では、所属する会派を代表して代表質問をする機会を頂いたので、民間移管計画を一向に進めようとしない市と「民にできること民に委ねる」という方針を選挙当選直後に示した市長に対して、改めて、公立保育所の民間移管について質問しました。

====本会議場での議論の概要====

平成31年3月議会代表質問より

2.未来を見据えた財政運営について
(保育所民間移管計画の実現性)
■質問の背景(田中まさたけの説明)

 民間移管の対象園であった朝日愛児館保育所を公立のまま建て替えるとの所管事務報告が先日の常任委員会でございました。大変驚きました。民にできることは民に委ねると市長の所信表明での方針に反する行為であります。そして、10年以上実施されていない現在の西宮市立保育所民間移管計画は、ホームページにすら掲載されていません。

■質問1(田中まさたけ)
 まず、本市の公立保育所の役割をどのように考えているのか、改めてお尋ね致します。あわせて、その役割を果たすために担っていただいております保育士の方々の平成30年の平均年齢と平均年収をお尋ね致します。

■質問1に対する市の回答
 現在、本市では、公立と私立の保育所等がともに保育に当たっておりますが、公立保育所の役割と致しましては、虐待など特に配慮を要する福祉的ニーズの高い子供とその保護者への支援等につきまして、公的機関との連携をとりやすい公立保育所が中心となって、セーフティーネットの役割を担っていくべきと考えております。
 また、市内の民間保育所が増えている現在、市は、民間保育所に対し、保育に関する研修・指導・監査の実施や、保健衛生などの各種マニュアル等の配布を行っており、今後も、公立保育所で保育を実施している経験を生かして、市内の保育の質の基準を示す役割を果たしていく必要があると考えております。
 平成30年の保育士の平均年齢は39.2歳、平均年収は約544万円でございます。

■質問2(田中まさたけ)
 朝日愛児館保育所の老朽化が顕著であったことから、児童の安全を確保するために、待機児童が解消されるまでの期限つきで、民間保育所分園を整備する形での民間移管をすることも可能であったはずです。他の民間移管対象園も老朽化が懸念されていますが、その対象園周辺の待機児童が解消されるまで、つまり廃止するまでにどの程度の年数が必要であると想定しておられるのか、その間の老朽化対策や耐震化は必要ないのか、他の保育園についてお尋ね致します。

■質問2に対する市の回答
 現在、平成28年度の待機児童解消計画に基づき保育所整備を進めているところです。本市の保育需要は中核市平均を下回っており、近年の保育需要の推移から、今後も保育需要は伸びるものと思われます。
 待機児童解消の時期につきましては、本年4月の待機児童数や10月から始まる幼児教育無償化の影響等による保育需要の見込みを見きわめるとともに、今後の保育所整備事業等の進捗状況に照らし、判断する必要があると考えております。
 次に、朝日愛児館以外の民間移管の対象園の現在の状況についてですが、今津文協保育所は、耐震診断の結果、耐震補強が必要であるとされております。鳴尾北保育所につきましては、耐震化の必要はありませんが、築40年の建物になりますので、老朽化対策の必要性について検討を行っております。児童、保育士の安全を守るためには、可能な限り早い時期に耐震化や老朽化対策を進めていく必要があると考えております。

■質問3(田中まさたけ)
 西宮市公共施設等総合管理計画に記載のある(仮称)西宮市公立保育所適正配置計画の中に、現在の対象園に加えて、建替え時の民間移管も加えた方針を盛り込むことで、将来的には市の財政負担を軽減し、その軽減できた財源を民間保育所の保育士確保の取り組みなど子育て支援に資する経費に充当することができると考えますが、市の見解をお尋ね致します。

■質問3に対する市の回答
 現在、公立、私立を問わず、総量としての保育所の適正配置についても検討しております。公立保育所につきましては、保育所需要の今後の推移と耐用年数等を考慮し、御指摘の趣旨を踏まえて、閉鎖すべき施設とその時期、また、閉鎖に伴う民間代替園が必要かどうかを新年度から検討してまいります。

■田中まさたけの指摘
 保育所の民間移管ですが、今日の御答弁では突っ込みどころ満載です。まだまだ突っ込みたいのですが、今日は代表質問でもありますから、あまり細かく突っ込むのはやめておきます。(来月に市議会議員)選挙がございますから、この場に私がいるかどうかはわかりませんが、帰ってこれましたらまた取り上げたいと思っております。
 
 私が今日言いたかったのは、保育所を何が何でも民間移管してほしいと言っているのではないのです。そこを誤解しないでほしいです。この民間移管計画をなぜしなければいけなくなったのかということをもう一度振り返っていただきたいのです。
 そして、西宮市立保育所民間移管計画を見たことがありますか、ということです。これは今、市のホームページにもあがっておらず、この議場にいる方でも、おそらく3期目以上の方しかこの計画を見たことがないとのことでした。ホームページにも載っていないのでこの計画があることを知らないのです。

 この計画では、朝日愛児館は民間移管の対象園になっています。しかし、すでに代替園もできていて、本来であれば廃園する計画だったのですが、待機児童が解消できていないから残していました。そうしているうちに、もう10年も経ってしまって、建物がボロボロになり、民間移管できずにそのまま建替えますとなりました。建物はリース方式ということですが。

 何が言いたいかと言うと、もちろんこの計画によって財源を確保するという、そういう期待もあったとは思うのですが、それは、保育所行政以外にも市役所に対していろんな要望があり、それを全部実現できるのであれば、誰も苦労しません。しかし、限られた財源の中で、限られた人員でやっていかないといけない中で、市長がいいことをおっしゃいました、「民にできることは民にお任せしないと行政が全部はできない」と。そして、過去にも出てきたのがこの民間移管計画なんです。単に経費を削減したいだけではないのです。

 何が一番悪いかというと、この民間移管計画の残りの2園はいつになったら民間移管できるのかと聞いたときの答弁が全くなってないです。いつ実施できるのか答えがないのです。おそらく、今のまま進めれば最低10年は公立保育所を閉園できないかもしれません。そのような(実現性の低い)計画をいつまで放っておくのですかということなんです。作った計画が実現不可能であるにもかかわらず、放置するのはまずやめてください。先ほどおっしゃいました、保育所の無償化も始まるので、まだしばらく廃止できない、できなさそうという趣旨の御答弁でした。
 であれば、この計画を一度見直したほうがいいです。行政は、一度計画をつくると、それを放置する癖があります。それは改めて頂きたいと思います。これは財政運営にも関わってくることでもありますので、その点は指摘をしておきたいと思います。

 また、ご答弁の中で重要な内容がございました。今、対象園になっているのは、朝日愛児館保育所と今津文協保育所と鳴尾北保育所です。いずれの地域も、まだ待機児童が解消されておりませんし、一部はまだ代替となる園もできてないところもあると思います。その中で、例えば今津文協保育所は、耐震診断の結果、耐震補強が必要と仰っています。子供がそこで生活しているんですよ。早くしてあげないとまずいですよ。早くしてあげないと。明日地震が来たらどうするんですかという話なんですよ。鳴尾北保育所もそうです。これも築40年の建物で、この建物は、これから10年間もつんですか。それをこの場で指摘しなかったら行政は放置するんですか。

 この件も意識改革の話になるのですが、それぐらいのことは、ここにいる幹部の方はちゃんと考えてほしい。ここでわざわざこんな指摘に時間を使うのはもったいないです。もっと政策の話がしたいです。けれど、今の状況では指摘せざるを得ないです。こういうところからまず見直さないと、つまり、足元を見直さないと、行政経営改革なんかできない、そのことも指摘しておきたいと思います。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 計画の実施の見込みが立たないのであれば、計画を見直して、できる方法で民間移管を進めていかなければ、近い将来財政が破綻することは明白です。
 事業のやりっ放し、場当たり的な対応、他人事の政策推進、こうした「お役所仕事」の改革はなかなか進みません。

 そして、今回の代表質問を通じて、市は、人件費を削減する気もない、ふるさと納税の増収に向けて納税者の視点で取り組む姿勢も見せない、公共施設マネジメントを真剣に取り組む気もない、公立保育所を民間に移管することで国からの財源を確保して、他の子育て政策に回すという姿勢を見せようとしません。

 今後も一層追及していかなくてはならないと考えています。

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