市立中央体育館の再整備のゆくえー令和3年12月議会一般質問

2022年1月18日[カテゴリ:スポーツ推進, 質問

 昨日で、阪神・淡路大震災から27年が経ちました。


西宮市震災記念碑公園内

 阪神・淡路大震災が発生した後、市立中央体育館も避難所の一つとなり、陸上競技場には仮設住宅が建設されたと伺っています。
 多くの方が、寒い中で体育館での数ヶ月間の避難生活を余儀なくされ、また、中央体育館には天皇皇后両陛下がお見舞い、激励に訪問して下さった記録が残っています。

 その体育館も、竣工から56年が経過しました。今後、南海トラフ大地震が発生した場合に現体育館が避難所として機能するのか、仮に機能したとしても、浜に近い地域にある避難所が津波被害を受けた際に、鳴尾御影線以北の避難所の収容人数を増やしておく必要性も勘案すると、一刻も早く再整備する必要があると考えています。

 また、阪神淡路大震災の経験をした現体育館ですので、中央運動公園に来られた方々や後世に人たちに、阪神淡路大震災の記録や災害時の体育館や中央運動公園の役割を伝えられる資料を新体育館内や新陸上競技場に残すことについても、PFI事業者と協働して検討・実行してもらいたいと考えています。

 前回のコラムの続きで、令和3年12月議会一般質問で取り上げました「西宮中央運動公園及び中央体育館・陸上競技場等再整備事業について」の議論を掲載します。

====本会議場での議論の概要====

令和3年12月議会一般質問

1.西宮中央運動公園及び中央体育館・陸上競技場等再整備事業について
ア)見直し検討の内容
■質問の背景
(一部を抜粋して再掲)
 新型コロナウイルス感染症(以後「コロナ」と呼びます)の影響による財政の悪化が懸念され、当該事業は中断されました。そして、財政収支見通しが令和3年10月末にようやく示されましたが、現時点では財政的にはコロナ前の状況から大きな変化はなかったと理解しております。
 施設の老朽化対策が財政を圧迫することは元々分かっていたことでありまして、だからこそ、15年にもわたりまして公共資産のアセットマネジメントの重要性をこれまで指摘してまいりました。
 にもかかわらず、事業費が高額であることを理由に再整備事業は「見直し検討」との方針が示されました。

抜粋した資料

 当該事業はPFI(←クリックすると用語を説明したコラムが開きます。)事業ですから、民間のノウハウを活用するためにも、今後、市は極力制限を設けずに、安価で質の高い施設整備と維持管理、スポーツ推進や市民の利便性の向上に関する提案を引き出さなければならないと考えております。(この段階で事業費の精査をするべきです。)
 今回の方針は今さらという感が否めず、事業費のほかに時間を稼がなければならない理由があるのであれば、それこそオープンにするべきだと考えます。

■質問1(田中まさたけ)
事業費の精査にあたって、現在のPFI手法の見直しも検討の対象に入っているのか、また、現在の施設の高い稼働率や抽せん倍率に鑑み、施設の機能面でどのような点を見直せるとお考えなのか、お尋ね致します。

■市の回答
 本事業の整備手法は、民間ノウハウを生かした整備運営内容とするために、PFI手法を採用することしており、今回の事業見直しにおきましても、引き続きPFI手法を活用する予定でございます。
 また、施設面でどのような点を見直せると考えているのかについてですが、現在の中央体育館は、利用する際の抽せん倍率が高く、また、各種大会の開催時には大変混雑していることから、これらを解消するため、これまで計画してきた体育館の基本的な機能についてはこれを尊重しながら、検討を進めてまいります。具体的には、観客席の縮小や諸室の配置の見直しの可能性、さらには、中央運動公園内で使用するエネルギーに太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入などについても検討を進めてまいります。

■質問2(田中まさたけ)
これまでの検討に6年の時間を費やしましたが、今後の検討の期限とその後のスケジュールをお尋ねいたします。

■市の回答
 事業費精査の結果を踏まえ、財政的に事業の着手が可能と判断してから要求水準書の確定までに概ね8ヶ月、その後、必要な手続を経て事業者を決定し、契約を締結するまで概ね10ヶ月かかると考えております。
 契約後のスケジュールについては、設計、解体、埋蔵文化財調査及び建設整備で、公園全体の竣工までにおよそ5年がかかると当初の計画では想定しております。引き続き、社会情勢の変化を踏まえながらスケジュールの精査を行ってまいります。

■意見・要望(田中まさたけ)
 市の回答の中で、事業費の精査につきましては、削減すべき事業費の抑制額を設定するものではないということでした。その上で、これまで計画してきた内容を生かした再整備事業として着手することを前提に精査される、さらに、基本的な運動面の機能・規模を確保される、そしてさらに、これまで計画してきた体育館の基本的な機能については尊重するということを明言していただきました。
 御答弁で挙げていただいたような見直し内容、つまり、観客席の縮小や諸室の配置の見直し、また、再生可能エネルギーの導入、こうしたことは、今後、PFI事業者の選定にあたって、金額の提示と併せて事業者の提案に委ねても問題のない内容ではないかと私は感じております。

 ですので、今回挙げられました精査の内容につきましては、PFI事業者の選定を通じて行われるべきものだと感じております。

 御答弁頂いたような見直しを市が行うことによって、最低でも数千万円の経費がかかるようです。また、期間も、さらに1年半も費やすことになるそうですから、その期間の職員の人件費等も含めると、本来必要なかった余分の経費がかかるだけで、非効率であると感じております。

 また、壇上でも申しましたけれども、災害時の避難所としての機能を勘案しますと、先延ばしするメリットよりもデメリットのほうがはるかに大きいと言わざるを得ません。
 効果としましては、外郭団体の経営改革の時間稼ぎができる(この後の議論)、こういった効果があるかもしれないと感じております。ですので、まとめますと、直ちにこの手続、これを再開していただきまして、一刻も早くPFI事業者の選定に着手すべきであると改めて指摘しておきます。

 まだ間に合いますので、しっかりと検討していただきたいと思います。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 これまでの6年に及ぶ検討の過程を鑑みると、今回、事業を先送りするべき理由は見当たりません。

 事業を先送りすることで得られる効果としては、現在の中央運動公園内のスポーツ施設の管理を非公募で行っている市の外郭団体「公益財団法人西宮スポーツセンター」の財政を改善する時間が確保できることが考えられます。なお、この外郭団体「西宮スポーツセンター」は、前市長時代に理事長ポストを民間の方に就任して頂きましたが、現在の市長になってから、再び市のOBが理事長に就任しています。そして、西宮スポーツセンターが直接採用しているスタッフは優秀な方が多く、スポーツ教室等も人気があると伺っています。ですので、この外郭団体が潰れてしまうようなことがあってはならないとは思っています。

 しかし、この体育館の再整備事業が始まってしまうと、西宮スポーツセンターの事務局には移転して頂かなくてはなりません。そして、最も影響が大きいのは、西宮スポーツセンターが非公募で施設の管理業務を受託して事業収入を得ていたところが、新体育館が竣工すると業務を受託できなくなり、事業収入が減少してしまうことが確定しています。
 ですので、西宮スポーツセンターは現在、経営改革を進めているのですが、新体育館の竣工時期を後にずらすことで、その分だけ事業収入を確保し続けることができ、経営改革により浮いた収入を貯蓄することも可能となることが時間稼ぎをする効果と考えられます。西宮スポーツセンターは存続してもらわなければなりませんが、それは市民の利便性と安全を犠牲にして達成するべきものではないことは当然のことです。

 「天下り先を守るがゆえに中央運動公園の再整備事業を先延ばしにした」というような疑念を払しょくしておかなければならないと考え、西宮スポーツセンターに及ぼす影響についても議論しました。小さなことですが、西宮のまちづくりを前に進めるためには大事な論点だと思っています。次回以降のコラムで掲載致します。

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