公共事業評価の意義ー平成18年6月議会一般質問

2006年10月19日[カテゴリ:公共施設マネジメント, 質問

 初当選直後の平成15年6月議会一般質問(←クリックするとコラム「公園整備と維持管理について」が開きます)において、維持管理を想定した新しい公園の整備と、公園の維持管理への予算の重点配分について取り上げて議論したことがあります。

 これまでの政治では「新しい公共施設や道路」を作ることに主眼が置かれ、評価され、その後の建て替えを含めた維持管理については、全くと言っていいほど議論されることはありませんでした。
 しかし、「新しい資産」は一見、後世に資産を残すことになるように見えますが、借金で築かれた新たな資産は、借金の返済を後世に押し付け、一定期間ののちには、維持管理費も後世に負担を押し付け、さらに時間が経過した後には、建て替えの政治判断も押し付けることになります。
 資産がどんどん膨らんでいけば、少子化が進む中で、将来世代にとって、恩恵よりも負担が膨らんでいくことになります。つまり、「現在の必要性」に関する議論のみで「新しい資産」を作ることは、将来に「負の遺産」を残してしまう結果となりかねないと考えています。

 財政難の解消のために第3次行財政改善実施計画が実行される中で、維持管理費が抑制され、必要な補修すら先送りされる傾向にあります。その間にも、膨大な既存の資産は劣化が進み、他市では利用者の安全を脅かすような事例も発生しています。西宮市においても、備品の劣化が放置されているなど、市民よりご意見を寄せられることも少なくありません。

 この、維持管理を想定して、さらに、市全体の維持管理費に及ぼす影響を勘案して新たな施設をつくる、既存の施設を建て替えるという発想が、これからの時代は必要となると考え、平成18年6月議会で取り上げ、公共資産の維持管理システムの構築の必要性を提言しました。

=====本会議場での議論の概要=====

平成18年6月議会一般質問

2.公共資産のアセットマネジメントについて
■はじめに

 アセットマネジメントは、日本語で資産の管理・運用ということで、資産を効率よく管理し運用するという意味があり、アセットマネジメントシステムは、そのためのコンピューターシステムです。これまでは、個人や企業の不動産、金融などの資産管理に用いられてきましたが、最近では、公共の資産である社会資本にもこのシステムを適用しようという動きがあります。ちょうど3年前の私の初めての一般質問で、緑の基本計画が公園の維持管理までを想定して財源的に保障できているのかといった趣旨の質問を行いましたが、今回は、市全体の資産のマネジメントに対する市の見解を問いたいと思います。
配付致しました資料(←クリックするとPDFファイルが開きます)をご覧頂きたいと思います。
 まず、一番上の表で、一般会計の性質別分類の維持補修費を抽出し、経年変化を示しました。公共資産は減っているわけではないとは思うのですが、コストは徐々に減少していることが見てとれます。
 
 2番目の表は、本市が作成している普通会計ベースのバランスシートから有形固定資産の経年変化と行政コスト計算書に示されている物に係るコストを抽出しました。有形固定資産、これは減価償却が減っていると伺っておりますが、そういった中で維持補修費の方も、徐々にではありますが、減っているといったことが見てとれます。これらを見ながらこれからの質問はお聞きいただけたらと思います。

ア)公共事業評価
■質問の背景

 まずは、公共の資産を生み出す公共事業を評価する「公共事業評価」について取り上げます。
 市民の理解、協力、そして市当局の御尽力のもとで、行財政改善は着実に進められています。決算時の執行残を勘案すると、財政計画における財源不足額の見込みが大きいのではないかといった財政難を楽観視した意見も最近では伺えるほどにもなりました。
 しかし、私は、決して楽観視できるような状況とは思っていません。今後の必要不可欠な扶助費の見込み、そして、これまで整備した社会基盤の維持補修費、これらの増大、そしてまた、老朽化などを鑑みると、ますます行政経営改革で取り組まれている仕組みづくりの重要性と緊急性が実感できるところです。現在、その行政経営改革の中で公共事業評価の実施が盛り込まれています。今回は、改めて今一度、なぜこの評価が必要なのか、評価の目的とその重要性を確認する必要性があると感じました。

 公共事業評価は、新規事業の必要性を客観的に評価する「事前評価」、そして継続している事業の「再評価」、最後に
事業完了後の「事後評価」で構成されているのが一般的です。つまり、新規事業単体での評価としては、コスト面では事業にかかるイニシャルコストと事業完了後のメンテナンスコストの総計、いわゆるライフサイクルコストで評価されると思われます。しかし、それはあくまで評価対象となる事業単体での検討です。公共事業の事前評価を行うにあたっては、市全体の資産の状況を考慮に入れた評価が必要ではないかということを今回は提言したいと思います。
 新たに事業を行えば、その分、メンテナンスコストは増大するわけです。特に都市部では、社会基盤の整備の時代は終えんを迎えたと言われて久しい、これからはライフサイクルコストの抑制の観点から、いかに計画的に予防修繕を施しながら効率的に維持していくか、これが重要となると予測されます。

 そのような中、これまで整備してきた社会基盤の維持に単年度で現在どれだけの経費がかかっていて、今後、中長期的に維持費や改修費がどういった傾向を示すのか、これを試算して、公共事業評価の中でそれらを考慮した財源の評価も行う必要があると考えます。
 つまり、ニーズ調査から必要性が高いと思われる事業を改めて評価するわけですから、コスト面では、目先のコストによる評価だけでは「行政経営」とはほど遠く、相変わらずの場当たり的な行政運営を強いられることは容易に想像がつきます。
 また、第4次総合計画策定の準備も来年度には行わなければなりません。第3次総合計画の中で事業が先送りにされたものが多数ある中では、この評価の重要性は低くないとは思われます。

■質問
 評価の目的、評価指標、それと対象事業の範囲、これらを中心にして、現在設計中の公共事業評価の概要を伺いたいと思います。

■質問に対する市の回答
 公共事業評価は、経営資源の有効活用を図るため、最適な事業の選択と資源配分を可能とする評価システムの一つであり、本市の行政経営改革基本計画において、政策・施策評価、事務事業評価を補完する評価制度として位置づけております。このシステムの目的は、一たん事業を開始すると中止することが困難であるという性格を持つ公共事業について、事務事業評価とは異なる手法で事前に評価を行い、その結果に基づいて事業開始の適否を判断することにより、資源を有効に配分するとともに、市民に対する説明責任を果たすことを目的としております。
 次に、評価指標等の評価方法についてですが、基本的には、当該事業の費用便益分析等を行い、事業の必要性、効果、効率性等を測定することとしております。一概に公共事業と申しましても、その種類は、道路、公園、下水、河川、区画整理、施設建設等とさまざまな種類がありますので、その種類に応じた指標の設定が必要であると考えております。
 指標の設定にあたりましては、費用便益分析を含め、可能な限り数値で表すことが望ましいと考えているところですが、数値表現が困難な項目も多々あると考えられます。このような項目についても、価値基準のばらつきが生じないように測定しなければならず、その手法について検討しているところでございます。
 3点目の対象事業の範囲等についてでございますが、評価を行うことによる効果や効率性の点から、すべての公共事業を対象とすることは適当ではないと考えておりまして、一定規模以上の新規事業及び大規模な修繕・改築事業等を対象に取り組みを進めてまいりたいと考えております。

■意見・要望
 御答弁の内容では、具体的に出てきた言葉としては「費用便益分析」という言葉だけだったと思いますが、つまり費用対効果を数値で表すということが、今のところ、概要としては想定しているという御答弁だったと思います。そして、説明責任を果たすという目的を述べられましたが、それだけでは、現在、財政が厳しい中でもいろいろと実施しなければならない、例えばこの評価の設計にも費用が生じます。そうした中で、優先度が低くなっているのではないかと感じる回答でした。
 今後、行政経営改革基本計画に掲載しているから実施するということではなく、再度、公共事業評価の必要性、意義を考え直す時期に来ているということをまず指摘しておきます。

=====本会議場での議論の概要=====

「公共事業評価」に、市全体の公共資産の状況や影響を評価指標に加えることについては、市の回答では触れられませんでした。まだまだ議論が必要です。

この質問について、次のコラムに続きます。

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