行政経営改革の実現性ーアウトソーシング

2005年7月17日[カテゴリ:財政・財政改革, 質問

行政経営改革基本計画

 西宮市が平成16年2月に策定した計画で、「限られた経営資源を最大限に活用し、市民満足度の高い行政運営を行う」ことを行政経営の理念とし、新しい公共経営の考え方として、NPM(ニューパブリックマネジメント)理論を取り入れ、具体的かつ計画的に実施するという内容になっています。改革の具体的項目は28項目にわたっており、この計画の策定及び進捗を管理する部署は西宮市役所の総合企画局という部署になります。

 なお、この計画では、NPM理論の基本的な考え方は、①市民満足度の追求、②成果主義の徹底、③市場メカニズムの活用、④庁内分権の推進、の4点にまとめられると説明しています。

 これまで、西宮市では、2次にわたる行財政改善(財政改革)の取組みを遂行し、第1次の3ヶ年で123億円、第2次の5ヶ年で261億円の累積効果額を生み出しました。しかし、「内部経費の削減など、直面する財源不足の解消を目的とした内容が中心であったことから、行政運営の仕組みや職員の意識を変革するまでには至っていない。」と市は振り返っています。
 そして、「このまま行政のスリム化を図ったとしても、やがて限界に至り市民ニーズの多様化や社会経済状況の変化に対応した質の高い行政サービスを提供し続けることができない」とし、「この改革によって、行政運営の仕組みそのものを変革し、それによって職員の日常の仕事の進め方や考え方が変わり、そのことが当然のことと受け止められ、市役所の組織文化までをも変えるものでなければならない。」とされています。

 これまで、財政改革に重点を置いて一般質問で取り上げて議論してきましたが、平成16年6月議会ではこの行政経営改革基本計画の実効性を確認するために取り上げて議論しました。

この行政経営改革基本計画では、

Ⅰ、行政経営型マネジメントの確立
1.経営資源の有効活用
(4)民間活用・ノウハウの活用
の項目の中で、

①アウトソーシング推進指針及び実施計画

が掲げられ、「多様な主体で公益を担う社会におけるアウトソーシングのあり方を検討し、「外部でできることは外部に委ねる」ことを基本に全事務事業を対象にアウトソーシングを検討するための指針を作り、それに基づき実施計画を策定する。」と掲載されています。

なお、アウトソーシングとは、
「業務過程の一部を外部機関に任せる委託や外注のことを言う。当初は情報システムの分野から始まったが、今では企画、人事、経理、総務など幅広い分野に拡大してきている。また、導入目的も、最初は組織の合理化、効率化やコストの削減などが中心であったが、その後、委託先の専門性を活用し、ノウハウを取り込もうとする付加価値型へと変化してきている。
と説明されています。

====本会議場での発言の概要====

平成16年6月議会一般質問

2.行政経営改革について
 本年4月から開始した行政経営改革についてですので、時期尚早と思いましたが、行政経営改革基本計画に掲載されている項目のうち、本日は、アウトソーシング、PFI手法、参画と協働の3点について伺いたいと思います。

ア)アウトソーシングの推進指針
■質問1の前置き
 アウトソーシングの目的としては、当然 経費削減効果があると思いますが、その他にも、アウトソーシングすることによって、各部署の担当者、特に部・課長級の職員に、政策を研究する時間を与えて、報告書等の作成を義務づけるなどすれば、もっといい政策提案が出てくるのではないかと感じています。

■質問1
そもそもアウトソーシングの目的は幾つもあると考えられますが、いかがお考えなのか、具体的にお示しください。

■質問1に対する市の回答
 これまでの行政の簡素化、効率化という観点からだけではなくて、住民団体やコミュニティー、NPO、企業など、多様な主体で公益を担う社会を実現していくためのアウトソーシングを全庁的に検討するため、今般、アウトソーシング推進指針を策定致しました。
 経費の節減はもとよりですが、専門的な知識、技術を持った民間企業や、NPO、地域団体など地域に密着した団体に市の事務事業を委ねることによりまして、より効率的、効果的なサービスを提供し、ひいては経営資源の有効活用と市民サービスの向上を図ることにある、このように考えております。

■質問2の背景
 以前、横浜市が実施している「民間度チェック」について研修させて頂いたことがあります。民営化、民間委託化を図る際のチェックシート等を私は想像していたのですが、実際は本市での事務事業評価のような役割を果たしていました。アウトソーシングの判断材料としてどういった手法を用いているのかと尋ねたところ、昨年12月議会一般質問(←クリックするとコラム「行政サービスコストの可視化」が開き、ABC分析の詳細をご覧頂けます。)で私が導入を提案しました「ABC手法」を用いてコスト比較をしていると当たり前のようにお答えになられました。

 横浜市の場合、この民間度チェックの仕組みを、数年ではなくて、数ヶ月で策定されたそうです。独自でABC手法を開発するような時間をかけず、販売されているシステムを導入したそうです。
 本市の場合、事務事業評価システムの中でコストを把握するとのことでしたが、事務事業評価システムの本格実施が平成17年度ということですので、現在はありません。
 本市では、アウトソーシングすべきか否かを判断する材料として、コストに関する指標が明らかに不足していると考えます。
 
■質問2
 アウトソーシングの有効性の判断材料として、現在の業務に係る間接経費も加えたコストを把握するためにも、ABC分析を行うべきだと考えますが、実際にアウトソーシングすべき事業の割り出しを始めた現在、ABC分析の必要性について御見解をお示しください。

■質問2に対する市の回答
 ABC分析、つまり、活動基準原価計算は、民間企業におけるコスト管理手法の一つでございます。また、行政におきましても、サービスの提供コストを明確化することにより、行政評価に使用可能な手法として考えられているものでございます。
 本市では、行政評価の取り組みの一つとして事務事業評価を導入し、年次的に評価対象項目の拡大を図っているところでございます。事務事業評価では、人件費や減価償却費を含む総コストとともに、個別のサービスに係る単位当たりコストを算出するなど、できるだけ正確なコストを把握するほか、各種の評価の指標や評価の項目によりまして事業を評価することによって、事務事業の効率化などの見直しに活用し、つなげるよう取り組んでおります。このような見直しの中でアウトソーシングについての一定の判断材料も得られるものと考えております。
 したがいまして、今後は、事務事業評価の定着を図るとともに、御指摘の活動基準原価計算についても研究を行ってまいりたいと考えております。

■質問3の背景
 アウトソーシングの目的やどのような業務がアウトソーシングに向いているのかといった定性的な観念のみ記されたガイドラインを策定して、各部署の返答を待っていては、適した業務が返答に含まれているのかについては疑問が残ります。各部署の考え方に基づいたアウトソーシングを行うべきなのかもしれませんが、行政経営改革を行う上では、行政改革担当の部署で統一の定量的な分析方法等を具体的に記したガイドラインを策定して、各部署の全事務事業、業務について分析してもらった上で集める必要があるように思います。
 そして、その分析に基づいてさらに精査し、それがいつから実行可能なのかといった検討も加えながら、当面の財源不足対策としての行財政改善計画に落とし込んでいくべきだと私は思います。

■質問3
 各部署からの返答があった際に、行政改革の担当においても事務事業ごとに業務を洗い出し、ある程度はめどをつけておき、その返答を精査する必要があると思いますが、いかがお考えなのでしょうか。

■質問3に対する市の回答
 アウトソーシングに関しまして、行政経営改革の担当が主導的に業務の洗い出しを行うべきではないかとのことでございます。アウトソーシングの具体化を図るにあたっては、業務ごとにどの程度効率化や経費の節減ができるか、あるいはサービスの質の確保、向上がなされるかなど、詳細に検証した上で判断する必要がございます。このため、行政経営改革担当が所管部局とも十分に協議調整し、アウトソーシングの具体化を図ってまいりたいと考えております。

■質問4の背景
 アウトソーシングは必ずしも経費削減が目的ではないはずです。アウトソーシングを投資としてとらえ、財政の許す限りという制限はあると思いますが、例えば毎年行われる業務で繁閑期が存在する単純業務を委託してはどうかと思うわけです。財政の入力作業等は、当然、守秘義務を徹底する必要があるかもしれませんが、アウトソーシングを利用することで、例えば決算の作成作業を短縮化することで、決算審議を9月に行って、そこで議会から出た意見を次年度の予算に反映するようなシステムを作成できたり、浮いた人員を行財政改善計画の策定に割くことで、より柔軟な、かつ精度の高い計画を立てることができるようになるといったことが期待できます。

■質問4
 こうした投資的なアウトソーシングの活用についてはいかがお考えか、お伺い致します。

■質問4に対する市の回答
 経費削減にならなくても、毎年行われる繁忙期の単純作業を委託するなど、投資的なアウトソーシングも活用してはどうか、こういうお尋ねでございますが、本市と致しましても、人的資源の有効活用や業務の効率化を図る観点から、御指摘のような業務も民間委託を検討すべき業務としてこの指針でも位置づけているところでございます。

■意見・要望
 市役所運営の構造改革は絶対に必要だと思います。ただ、私がまず最も心配するのは、それが絵にかいた餅に終わってしまうのではないかということです。というのも、PFI手法の導入もそうですが、「PFIを導入しよう」と計画に掲載するのはいいのですが、(今回の一般質問の1項目目の質問の)御答弁の中で、「ごみ処理責任」をPFI導入に慎重になる理由として前面に出してくるという考え自体が私はおかしいと感じました。どの分野でも現在の業務は、市に責任があるから直接市役所が担ってきたわけですから、そんなことを言っていたらPFIなどは絶対にできません。

 アウトソーシングも同様で、「アウトソーシングをする」と計画に掲載しても、効果的なアウトソーシングが本当にできるのかと疑問に感じるわけです。といいますのも、アウトソーシング推進指針は漠然としていて、どのようにして(アウトソーシングに向いている)業務をピックアップしたらいいのかという定量的な指針もなく、定性的に述べられているだけです。
 ですので、まずは、定量的な指針を総合企画局が明確にして示すべきです。以前の私の一般質問(←クリックすると該当部分のコラムが開きます。)でも指摘しましたが、(行政経営改革を担当する)総合企画局が忙しくなるのは分かっていたことですから、人員配置もお願いしていたわけです。(行政経営改革基本計画を)「絵にかいたもち」に終わらせないように頑張ってください、本当に期待しています。

====ここまでが本会議場での発言の概要====

 まだ取り組みが始まったばかりですので、具体的な回答は得られませんでしたが、アウトソーシングすべき業務の洗い出しの基準については、さらに具体化しなければ、積極的なアウトソーシングの推進が実現できるとは思えません。また、業務を洗い出すためには、行政サービスを提供するための業務を可視化、細分化する必要があります。また、行政サービスにかかっているコストを可視化して民間企業と比較するためにも、ABC手法(活動基準原価計算)を導入すべきなのですが、「研究する」=「当面はしない」という回答にとどまりました。なお、事務事業評価の中で示されるコストは、ABC手法で可視化されるコストは全く異なります。

 また、どれだけの業務をアウトソーシングして、どれだけの財政的な効果をあげようとしているのか、財政的な効果以外にどのような効果をあげることを目標にしているのかも、具体的に示されていないことも疑問視しています。

 引き続き、財政改革につながる行政経営改革の実現に向けて、取り組みたいと思います。

 次は、行政経営改革基本計画に記されているPFI手法に関する質問を掲載します。

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