市立中央病院改革ー平成16年12月議会一般質問

2005年8月9日[カテゴリ:市立中央病院, 質問

西宮市立中央病院
経営健全化計画

 西宮市立中央病院が、兵庫県下の公立病院で唯一不良債務が解消されていないという危機的な経営状況に陥っていたことから、社団法人全国自治体病院協議会によって経営診断が行われ、平成14年3月に経営診断報告書が提出されました。
 この報告書の中で、「このまま推移すれば、当病院の経営状況は極めて厳しい状況に立ち至ることは必至であり、場合によっては、当病院の開設の意義が問われ、民間医療機関への譲渡といったことが議論されることも考えられる。」との指摘を受け、「今後、当病院の基本的なあり方をまとめるとともに、速やかに具体的な経営改善方策を立案実行することが必要である」との診断がされました。
 そして、今後のあり方として、
A案)病院事業を廃止する(民営化等経営形態を変えることも含む)
B案)相当の痛みを前提として、思い切った経営改善策、累積欠損金解消計画を断行する

との方策が示され、「当病院の経営改善のためにはこのような判断が迫られていると認識すべき」との指摘を受けました。
 
 そこで、経営の健全化を図るため、診断報告書や病院全職員から提出された業務・経営改善提案等をもとに、平成15年度から17年度までの3カ年計画として平成14年12月に策定されました。

【計画期間】
平成15年度~17年度

【基本目標】
(1)新たに制定した「基本理念」のもと、市民に信頼される病院を目指すとともに、経営基盤の確立に努める。
(2)業務・経営体質の改善を図り、収益的収支において単年度不良債務を発生させない財政構造への転換を図る。
(3)一般会計との適切な負担ルールのもとに、平成17年度までに不良債務(3億8500万円)の解消を目指す。

【増収又は節減見込み額】
 平成14年度当初予算と比較して、平成17年度に収益を8678万円の増、費用を9065万円削減し、年間1億7222万円の収支改善を図る。

【取組み項目】
1.医業収益の増加
〇(平成13年度の実績が84.8%であった)病床利用率87%の確保を目標に利用率の向上を図り、入院収益の安定確保を図る。
〇入院患者の単価を当面の目標として自治体病院300床~399床平均単価の確保を目指す。
2.収入の確保
〇(平成13年度の実績が0.7%であった)診療報酬請求における査定減率を、0.5%以下に引き下げる。
3.医業外収益の増加
〇人間ドック(入院)の改善、見直しを図る。
4.患者サービスの向上
〇患者様から当院を選んで頂くために、接遇向上のための取組みを図る。
〇休暇等の取り方を見直し、日勤人員を確保する。
待ち時間の短縮、予約の強化を図り、外来患者の増加を図る。
〇病診間、病病間の連携を推進し、患者紹介率の向上を図るため、地域医療室の充実強化を図る。

 この経営健全化計画の実効性が疑われる中、第3次行財政改善実施計画の取り組み項目に挙げられた市立中央病院改革について、平成16年12月議会一般質問でも取り上げ、具体的方策を提案しました。

 なお、これまでに、市立中央病院については、平成15年6月議会及び平成15年12月議会(←クリックするとコラムが開きます。)で取り上げて議論してきました。ご参照ください。

====本会議場での議論の概要====

平成16年12月議会一般質問

1.第3次行財政改善実施計画について
エ)西宮市立中央病院改革
(1)経営改善手法
■質問の背景

 今回の行財政改善実施計画の項目に、中央病院が取り組んでいる平成15年度から平成17年度までの経営健全化計画の結果と繰入金(税金投入)の基準の見直しが挙げられておりますが、平成15年度決算では、経営健全化計画の目標額を下回っている
様子ですので、以下の2点について伺います。
 まず1点目は、経営改善手法についてです。
 中央病院の決算状況を見ますと、経営改善のための取り組み、特に歳出削減に相当の努力をされていることは評価しています。しかしながら、入院、外来ともに患者数が減少するなどし、経営健全化計画における改善目標額を大きく下回った結果となっています。

 ここで他市の事例をあげます。日本一の赤字病院と言われていた坂出市立病院の事例です。
 1990年度までは、病床利用率が71.4%、人件費比率が77.8%、医業収支がマイナス3億1,800万円という、もう手のつけようのない病院として扱われていたそうです。しかし、当時の自治省による廃止勧告を受けたことを契機に、院内職員全員に何とかしなければいけないという意識が生まれて、劇的に経営状況が好転した例です。
 それまで13年間連続赤字で約25億円もたまった累積赤字を改革初年度から医業収支を黒字に転換させ、わずか8年で25億円のこの累積赤字を解消するという奇跡的な変革を遂げました。ごくごく当たり前のこと、例えば勤務時間を守ることすら職員ができていなかった病院の組織風土を、院長のリーダーシップのもと、当たり前のことができるということから始め、トータルオーダリングシステムの導入や、職種別損益計算書の作成、分析、電子カルテの導入など、テクニカルな経営改善まで行ったそうです。時間の都合上、詳細な手法の紹介については省略致します。

 また、実際に私も視察をした豊中市立病院においては、平成10年に建てかえし、大きくてきれいな総合病院で、近隣に総合病院がないこともあって、公立病院として大変頼りにされているそうです。そちらでも地域連携室や経営企画室を設けて地域の公立病院としての役割を果たそうとすると同時に、しっかりと経営面からの努力もされており、本来もらえるはずの市からの繰入金を数億円も下回る状況で収支を黒字にする努力がなされていました。

 中央病院の経営健全化計画において経費削減を行っても、利用者数が減少するようではなかなか経営健全化は望めません。利用者を確保するには、待ち時間の短縮や診察時間を長くするといった基本的なサービス向上に向けた職員全員の意識改革が必要なのだと思います。
 そのような中で、中央病院では、これまでに率先して経費の削減を図るために事務局人員の削減にも取り組まれており、人員を増やすわけにはいかないと聞いてます。
 そこで、地方公営企業法の全部適用も行っていないわけですから、本庁の組織に、期限付きで中央病院経営改善担当課長を置くことを提案します。


簡単にボードを使って説明致します。

 また、現在の(市立中央病院の)総務課、医事課では、医療サービスの向上に向けた取り組みを中心に、全職員を巻き込んでの体制をとるための事務局機能に特化して頂きます。
 下には取り組むべき具体的な例を挙げました。これらはまだ現在取り組まれておらず、こうしたことを取り組んではどうかという提案です。例えば、職種を横断した特命チームをつくって事務局機能を果たすカルテの開示施設基準の取得セカンドオピニオン外来の実施インフォームド・コンセントの充実レントゲングラフの作成収支計画表の作成など、現場での取組みの強化です。
 
 そして、市の組織として中央病院経営改善担当課長を1名置き、経営手法の調査研究をして頂いてはどうかと考えます。
 こちらの方の例も挙げましたが、こららもまだできておらず、私からの提案です。電子カルテの導入に関する調査研究、これは、費用対効果等を分析するわけです。そして、トータルオーダリングシステムの導入に関する調査研究、こちらも同じく費用対効果等の調査です。また、民間公立を問わずに他の総合病院の経営改善手法を調査研究する、そしてまた、職種別損益計算書等の経営に関する各種分析方法の研究、もう一つ、財団法人日本医療評価機構の認定に向けた調査研究、こういったことを行う専門の人を置くことを提案してます。

■質問1
この二つの部署は、当然、密に連携をとらなければなりません。これらの取り組みの結果を見て、経営健全化計画の見直しや、スケジュール、具体的目標数値等を策定することを提案致しますが、こうした病院組織の活性化に向けた取り組みについていかがお考えかを伺います。

■質問1に対する中央病院事務局長の回答
 現在当院におきましては、経営健全化計画を策定し、不良債務の解消に向け、努力しているところでございますが、平成15年度におきましては、歳出面を中心に目標額を上回る約1億8,000万円の節減効果額を実現することができましたものの、入院患者数の減少に伴う収入減等によりまして、純損失が見込み額を上回り、結果として不良債務の改善には至っておりません。
 本年度に入りましても、引き続き患者数は伸び悩みの状況が続いておりまして、依然として厳しい経営環境にあることは変わりありませんが、平成17年度に向け、新たな経費削減策を講じるべく、準備しているところでございまして、引き続き計画実現に向けて努力してまいりたいと考えております。
 
 なお、病院事業での経営改善手法につきましては、自治体病院関係では様々な取り組みがなされておりまして、御紹介の坂出市立病院の事例を初め、高知県立病院、高知市民病院の統合に伴うPFI事業、さらには埼玉県や兵庫県の地方公営企業法の全部適用などの事例がございます。
 しかしながら、当院の建物本体が築後30年近く経過を致しまして老朽化が激しく、今後、医療機器の更新対策とともに、建物の維持管理も重要な課題となっております中、当院に直接適用することは困難であるかもしれませんが、先行事例として今後とも参考にしてまいりたいと考えております。

 また、病院組織の活性化につきましては、既に院内に病院職員で構成する経営改善小委員会を設置し、取り組みを進めているところでございます。また、御提案をいただきました本庁の組織内に病院経営改善担当部門を設けることにつきましても、一つの参考にさせていただきたいと考えております。

====ここまでが、本会議場での議論の概要====

 中央病院からの回答からは経営改善に対する意志は示されたものの、新たな経営改善手法を取り入れようという意欲は感じられません。

 これでは中央病院の経営健全化計画の実現は厳しく、第3次行財政改善実施計画で示された財政効果も得られなくなる恐れがあります。引き続き、全国自治体病院協議会の経営診断報告書を踏まえ、市立中央病院改革の断行を求めていかなければなりません。

 長くなりましたので、質問の続きは、次のコラムに掲載します。

記事一覧