施策評価と政策評価の実効性ー平成17年9月議会一般質問

2006年2月23日[カテゴリ:財政・財政改革, 質問

 前回コラムの続きで、平成17年9月議会一般質問での議論について掲載します。マニアックなお話になりますが、最後までお付き合いください。
 質問の概要をご覧頂く前に、西宮市行政経営改革について、説明を加えます。
 
 まず、平成16年2月に発表された西宮市行政経営改革基本計画では、

Ⅰ.行政経営型マネジメントの確立
1.経営資源の有効活用
 (1)最適な事業の選択と資源配分を可能とする評価システム

という項目の中で、
①政策評価
②施策評価
③事務事業評価
④公共事業評価
が掲げられています。

 行政経営型マネジメントというのは、「市民から頂いた税金の使いみち決めるにあたって、市役所職員が恣意的に何かを決定するのではなく、客観的なデータや分析結果に基づいて議論をして決めていく方法」と言えると思っています。
 これは、納税者に対する説明責任につながるものだと考えています。

 各評価の説明と実施スケジュールは、行政経営改革基本計画の中で以下の通り示されています。
①政策評価
「総合計画に基づく各分野の政策について、その達成度を測定するため、分野ごとに成果指標を複数設定し、毎年度実績値を測定する。現総合計画に基づき指標の設定を行うが、次期計画策定時に改めて指標の見直しを行い、計画に盛り込む。」
平成16年度:制度の検討/モデル指標の設定
平成17年度:モデル試行/検証・制度確立
平成18年度:制度運用
平成19年度:指標の見直し/次期総合計画へ反映

②施策評価
「各分野の政策を達成するために実施される各施策(取組み)について、有効性を評価するとともに、その施策の目的達成のために有効な事務事業の優先順位を決定し、最適な組み合わせを選択する。」
平成16年度:モデル試行/検証
平成17年度:評価対象拡大/検証・制度確立
平成18年度:制度運用開始

③事務事業評価
「行政活動の最も具体的で細かな単位である事務事業について、その必要性や効果、目的に対する達成度、効率性などを評価し、行政運営の改善につなげる。」
平成16年度:評価対象拡大
平成17年度:さらに評価対象拡大
平成18年度:制度運用開始

④公共事業評価
「市民生活に及ぼす影響度の高い大規模な公共工事について、事務事業評価とは異なる手法(費用便益分析等)で事前評価、再評価、事後評価を行い、事業の必要性、効果、効率性等を測定する。」
平成16年度:モデル試行/検証
平成17年度:評価対象拡大/検証・制度確立
平成18年度:制度運用開始

 計画倒れにならないようチェックしていく必要があります。

====本会議場での議論の概要====

平成17年9月議会一般質問

3.財政改革と行政改革について
ウ)施策・政策評価
■質問の背景(田中まさたけ説明)

 今年3月の市議会において、行政経営改革の進行が遅れていることに対して厳しい指摘があったばかりです。事務事業評価の試行を始めてから今年度で3年目となります。昨年度行った事務事業評価の外部委員による評価でも、まだまだ指標の欠点が指摘されていました。そのような中で、システムを手づくりで構築し、試行錯誤を繰り返して進めることが、実務体験を通してノウハウが蓄積され、意識改革にもつながっていき、この積み重ねが大きな財産となると総合企画局長が以前に答弁されています。
 そんな悠長な企画部門の意識で事業部門は事務事業評価をやらされているのでは、たまったものではありません。現状では行政経営改革の業務は効率が非常に悪いと言わざるを得ないと私は感じています。専門家によるシステムの構築をさっさと済ませて、実用する中で評価指標自身も改善していくことが大きな財産になるのではないかと私は考えます。
 そして、試行段階から施策、政策、投資的事業の事前評価、そして新しく予算を編成するシステム、人員配置、これらを一体的に進めなければ、事業部門にも評価システムに取り組む緊張感は生まれません。

 つまり、企画部門、財政部門、人事部門、事業部門、これらの歩調を合わせなければ、すべてが非効率的になります。行財政改善実施計画の中で、赤字再建団体に陥らずに国の動向に対応するには、もはや事業の効率化、縮小では足らず、行政評価による事業の取捨選択を行わなければならなくなるのではないでしょうか。
(その際には、行政評価は説明責任という観点でも有効であり、1年でも早く運用されるべきと考えます。)

■質問1(田中まさたけ)
 政策・施策評価の進捗状況をまずお聞かせください。
 そして、先日の御答弁の中でも、市は事務事業、施策のさらなる厳しい見直しが必要とされていましたが、事務事業の優先度をどのようにつけて取捨選択を行っていくおつもりなのかお聞かせください。

■質問1に対する市の回答
 1点目は、政策・施策評価の進捗状況と個々の事務事業の優先度や取捨選択に関してでございます。
 まず、進捗状況についてでございますが、現在は、各施策の達成度をはかるための指標の設定に向けまして作業を行っているところでございます。具体的には、第3次総合計画の施策体系を基本として、適切な指標の調査に現在取り組んでおります。この結果につきましては、年度内に公表することを予定致しております。
 そして、平成18年度には、各施策についての市民満足度調査を行いまして、これにより得られたデータを反映した評価結果を公表していきたい、このように考えております。いずれにしましても、この政策・施策評価の結果は、今後の総合計画の改定に際しての重要な資料ともなりますことから、平成18年度中には施策評価制度を確立したい、このように考えております。
 
 次に、個々の事務事業の優先度や取捨選択についてでございますが、事務事業に優先度をつけ、さらに取捨選択を行うためには、まず、その上位に位置します施策の達成度や市民の満足度を測定し、施策間の優先度を把握する必要があります。
 その上で、各事務事業自体の成果などを含め、総合的な観点から判断を行うことになります。したがいまして、既に実施中の事務事業評価にあわせ、現在検討中の政策・施策評価を実施することにより、必要なデータを得たいと考えております。

■質問2(田中まさたけ)
 事務事業評価について、体系化はできているのか。また、試行とはいえ、昨年度は外部評価も含めて全庁的にかなりの労力をかけている事務事業評価の結果をただの指標の改定だけで終わらせるつもりはないとは思うのですが、来年度の予算編成においてどのように生かしていこうとお考えなのか。お聞かせください。

■質問2に対する市の回答
 まず、今年度の事務事業評価を実施するにあたりまして、本年5月には、予算要求明細書に基づき、また事務分担表なども参考としながら、事務事業の洗い出しと総合計画における施策体系への位置づけを行いまして、事業の施策体系化を行いました。
 こうした作業の結果、本市の事務事業数は、事業費を伴わない人件費のみで対応している事務なども含めまして、約650の事業となっております。
 
 今年度は、このように整理しました事務事業から、団体補助金、扶助費等の個人給付のほか、総括・予算経理事務などを除きまして、全体で421事業を対象として評価を行いまして、現在取りまとめ作業に取り組んでおります。
 評価結果につきましては、各局において評価に基づく今後の方針の具体化を行い、来年度当初予算編成の中で反映させることと致しております。また、評価結果を取りまとめた上、本年の12月市会には16年度決算の参考資料として提出を予定させて頂いております。

■再質問の趣旨(田中まさたけ)
 事務事業評価と施策評価、政策評価、これら行政評価ですが、これは壇上で述べたとおり、限られたパイの中でこれからさらに福祉のことなど対応しなければならないことがあり、どのように選択していくのかということを考えていかなければならない中で非常に重要な取り組みだと考えていますので、これは確実に実施して頂きたいと考えておりますので、再質問させて頂きます。

 まず、事務事業評価について、今年は評価する必要性の低いものを除いてすべて行ったと御答弁頂きました。決算委員会でも参考資料として頂けるとのことです。

 行政経営改革の基本計画によりますと、政策・施策評価の実用が来年度からということで計画されているのですが、来年確実に運用をするためには、今年度に何としてもまず施策評価を試行実施してもらって、そして、それらの結果を議会での審議の時に提出してもらわないと、事務事業評価については、3年間かけて自前で作ってきた結果、結局外部評価を受けると「指標に問題がある」などの指摘をたくさん受けましたことから、施策評価を作る上でも同様のことが起こることが予想されます。ですので、平成18年度から確実に運用するためには何としてもそうしたチェックを今年度中にしておかなければならないということです。

 せっかく事業部門の方で、人員を削減されて忙しくしている中、事務事業評価も今はまだ「やらされ感」があると思っています。ですので、そうした労力に報いるという、企画の部署の努力が必要だと思います。
 行政評価の結果を予算編成に反映するとか、あと、事務事業を組みかえたら当然人員配置も毎年考えていかないといけない、そういった新しい方法が必要であり、そういったことも連動させてモデル実施をしていかないといけないと思います。
 
■再質問(田中まさたけ)
 御答弁によりますと、平成18年度に市民満足度調査を行って「施策評価の制度を確立させたい」ということでしたが、行政経営改革基本計画では平成18年度に「制度運用」となっています、この「制度運用」と「確立」ということが同じ意味なのかどうか、つまり、平成18年度に制度を確立するということは、それは制度を使っていくということなのかどうなのか。それとも、まず施策評価を確立する、その後、実用は平成19年度になるということなのか、どちらなのかということをお答え頂きたいと思います。

■再質問に対する市の回答
 基本計画の内容が手元にないので正確には答えられないのですが、若干遅れているという認識は持っております。
 それで、我々としては、今目標としておりますのは、17年度に主要な評価項目を選定作業をして、訂正をし、さらに、18年度に市民満足度調査、市民がどこまでこの施策について満足しておられるか、あるいは他の施策との関連の中でどのような重要度を感じておられるか、こういったことを含めた調査を致します。
 なお、施策についての評価指標を設定するにあたりまして、市民意識といいますか、市民がどこまで満足しておられるかという部分について、具体的な評価項目が設定できずに、市民の意識調査の結果、数値として出てくるものを評価の項目にセットして、いわゆる施策の評価項目を整えるという意味が一つございます。
 そして、市民の満足度、重要度というものをデータ的に整理し、市として現在のマスタープラン上の施策が、優先度といいますか、優先度づけといいますか、こういったものを総合的に判断して位置づけをしていきたい、このように考えております。
 したがいまして、18年度にそういう指標を確立して、18年度早期には現在のマスタープランにつきましてトータル評価を行って、次の新マスタープランに向けての取り組みをしていきたい、このように考えておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。

■再々質問
 確かにマスタープランの見直しに使うというのも、それは一つ施策評価の役割かもしれないのですが、施策評価をするということが目的になっていませんかということなんです。制度を確立しました。で終了。では困ります。この行政評価をここにいる理事者の皆さんとここにいる議会の議員が使って意思決定をしていくのです。
 それを使ってこれから予算の議論をするというシステムを作ろうとしているのです。ですので、制度の確立と運用というのは別だと私は思っています。平成18年度に確立するというのは、実用、運用もできた状態なのかどうなのかということを教えてくださいということを聞いています。もう一回質問します。

■再々質問に対する回答
 18年度に施策の優先度づけ、これも一定整理し、それに基づきまして、個別の施策の翼下にあります事務事業、これについても一定の評価を固めた上で、これの優先づけについても考えて、実用化できる方向での制度として確立をしていく、これを、次のマスタープラン(総合計画)のことも視野に入れながら、実用化できる方向として、18年度を重要な年度として、努力目標値として位置づけをさせて頂いております。

■意見・要望
 (分かりにくい答弁でしたが、)平成18年度を目標に制度を確立するということであれば、今度19年度の予算を組む時にそれも使おう、マスタープラン(総合計画)の見直しだけではなくて予算の審議の時に使うということを1年でも早く実施しないと、ただでさえ財政が厳しい状態ですから、事務事業の取捨選択ができないのではないか、ということが今回の質問の趣旨でした。 
 そのためには、やはり今度の平成18年度予算の審議の時にある程度モデル的な試行実施をしておかないといけないと思います。そうでないと、また平成18年度になって「指標がおかしい」などの指摘を受け、結局、次の19年度の予算を組む時にも使えないということになりかねませんので、平成17年度中に、市民満足度調査の前に、何としてもまず使わないといけないと思います。
 そこでモデル実施をしてもらって、それらをまた私たちに見せて頂きたいと思います。そういったことに対して意見が言えるのはやっぱり予算審議の時だ思っています。もう平成16年度決算の審議には間に合いませんが(決算審議と連動させることはできませんが)、来年度(平成18年度)の予算審議の時にそうした資料を提出して頂けるよう要望しておきます。

 今日の質問、1番目(←クリックするとコラム「子供の遊び場について」が開きます)、2番目(←クリックするとコラム「ボランティア登録制度の創設を」が開きます。)においては、それぞれお金のかかることをいろいろと言いました。
 これまでの議会での答弁を聞いていますと、(議員からの要望や政策提案に対して、)財政が厳しいからとか、財政状況を鑑みるととか、あと多いのが、国の動向を見てとか、他市の動向を見てとか、そういった理由で実施しない部分が多々あると感じています。
 
 私たちが欲しいのは、ちゃんとした理由です。それを施策評価や事務事業評価で、客観的なデータで分析してもらって、それを示してもらえるのであれば納得できると思いますので、きっちり施策評価等が使えるように、結局それ使うのは理事者の皆さんと私たちであるということを最後認識して頂きたいと思います。そして、そうした行為が最後は市民に対する説明責任にもつながると思いますので、一刻も早く行政改革と財政改革に連動させてもらえるように最後にお願い申し上げまして、私、田中正剛の一般質問を終わります。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 再質問以降、議論はかみ合いませんでしたが、スピード感をもって取り組む意欲がないことがはっきりしたと思います。まずは、幹部から意識改革をして頂かなくては、市役所の改革、行政経営改革の理念の実現は程遠いと感じました。

 平成17年9月議会一般質問の議論は以上となります。

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