行政経営について③-学校給食調理業務の民間委託

2021年2月17日[カテゴリ:財政・財政改革, 質問

 少し日があいてしまいましたが、先月23日のコラムの続きです。

 学校給食調理業務の民間委託については、過去に何度か一般質問で取り上げて議論(←クリックすると平成23年6月議会一般質問の議論を掲載したコラムが開きます。)してきましたが、市は一向に実行しようとしません。令和2年12月議会でも、その前の令和2年6月議会で取り上げた続きとして、これまでとは少し切り口を変えて議論をしました。

====本会議場での発言の概要====

令和2年12月議会一般質問

1.行政経営について
■質問の背景(再掲)

 本市では現在、「行政経営改革」に取り組んでおります。西宮市が16年前から使い始めた「行政経営」とは何なのか、具体的な事業を3つ挙げまして、今日は問いたいと思っております。
 私は、行政経営とは、「将来の社会状況も見据えながら持続可能な財政を確立し、住民福祉の向上のために、限られた資源を最大限に活用しながら最少の経費で最大の効果を上げること。」と言えると思っております。
 そして、現在、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って来年度以降の財政悪化が懸念されております。また一方で、近年、職員数の増加に伴って人件費は増加し続けており、経常収支比率は令和元年度決算で99.6%といよいよ100%に近づき、財政が再び硬直化しています。このような時こそ、今ある資源の中で、いかに課題を解決するかが問われており、単に職員数を増やすことで喫緊の課題を解決するという旧態依然とした発想を捨てなければならないと考えています。というのも、将来の人口減少時代を見据えた時、無造作に市職員を増やすことを厳に慎まなければ、今の大人たちの都合で、今の子供たち、将来世代に重い負担だけを残すことになりかねません。それだけは絶対に避けなければならないという思いで、この項目を取り上げることと致しました。
 その点を踏まえて、以下ご答弁頂きたいと思います。

(ウ)学校給食調理業務
■質問の背景

 本年6月議会一般質問でも問いました(←クリックするとコラムが開きます。)が、コロナ禍により財政悪化が懸念されること、および再び新型コロナウイルス感染症が拡大している状況を踏まえ、改めて質問致します。

 本市では、夏休みの短縮期間中はわざわざ午前授業にして短縮期間を長くとり、小学校では調理されたおかずのない簡易給食が選択制で実施され、中学校では給食が実施されませんでした。
 そして、6月に議会からの指摘を受けてもなお、教育委員会は給食室での調理を認めず、エアコンが整備された家庭科室を活用することもなく、夏季休業明けの8月下旬の2週間に毎日ポールウインナーを提供するのがやっとでした。このように、直営での調理業務を維持していても対応力が非常に低く、質の高い給食を実施できなかったわけです。

 また、平成27年7月に学校給食基本方針の見直しに対する「西宮市学校給食審議会」の答申(←クリックするとPDFファイルが開きます。)の中で、「現在の調理業務の体制を見直し、効率的な運営方法の一つとして民間委託も含めた検討が望ましい。」との指摘がありましたが、その後に改訂された学校給食基本方針では、詳細な検証結果等が示されることもなく、「チーフ調理員を含め、非正規調理員の活用などにより引続き直営体制を継続していく。」とされ、審議会の答申が無視されました。

 近隣では、尼崎市、明石市、箕面市、吹田市など多くの自治体において、自校調理方式で調理業務を民間に委託しており、表6のとおり(←クリックすると配付資料が開きます。)、兵庫県教育委員会発行の「平成30年度学校給食の現況」によりますと、全国では食材運搬や食器洗浄の民間委託の割合を上回って、50%以上の学校で調理業務が民間委託されているというデータがございます。
 そして自校調理方式の学校においては、民間委託による質の低下等の問題が指摘されているわけでもなく、今年の夏休みの短縮期間中でも、献立を工夫しながらおかずのある学校給食が提供されていた様子です。学校給食の質の向上及び限られた財源を最適化する観点からも、本市における学校給食調理業務の民間委託は、もはや避けられないと考えます。

■質問(田中まさたけ)
 審議会答申にもあるとおり、学校給食調理業務の民間委託について具体的な検討に入るべきと考えますが、市長の見解を改めてお尋ね致します。

■市教育委員会の回答
 学校給食調理業務につきましては、平成27年7月に西宮市学校給食審議会から頂いた答申において、効率化を図る手だてとして、直営方式を維持したまま再度執行体制を見直す方法と、調理業務を民間委託しコスト削減を図る方法の二つの案を提案していただきました。この答申内容を踏まえた上で、学校給食調理業務の今後の方向性を検討した結果、教育委員会としては、従来どおり直営体制を維持しながら、非正規のさらなる活用を図っていくことで効率的な運営に努め、これまでと同様の安全で安心なおいしい学校給食の提供に努めることが適切であると判断致しました。平成29年11月に行った所管事務報告においては、その考えに基づく方向性をお示ししたものであります。

■市長の回答
 まず、今回の議員の御指摘は、この夏、8月下旬、休校明けのときに供給された学校給食の内容について議会をはじめ市民の皆様から厳しい御意見を頂いたこと、そして、これを踏まえて民間委託の推進が不可欠ではないかというのが1点目ではないかと思います。
 この点に関して、確かにこの夏、私としても、児童、市民の期待に応えられなかったことはじくじたる思いでありますし、また、同じ状況に陥った際に同じ内容しか供給できないということはあってはならない、そう考えております。そして、教育委員会においても、現在の執行体制において再度同じ状況になったとしても、今年と同じ内容しか提供できないということにはならないと聞いております。まずその点を申し上げておきたいと思います。

 次に、もう1点、学校給食の民間委託を行政経営改革の面から進めるべきだとの御主張に関して見解はいかがかということについてであります。

 これに関して、坂田次長が答弁いたしましたように、現在においては、平成29年の所管事務報告に基づいてコストを意識しながら進める方針を是としております。
 議員が御主張されるこの意味も、私なりに理解しているつもりもありますし、単純にコスト比較した場合、前提条件にもよりますが、民間委託のほうが安いという試算もさきに触れた平成29年の所管事務報告で示しているとおりです。一方で、議員が言及いただいた平成27年の審議会の答申にもございますが、民間委託をする場合には、栄養士の職員配置を必須にすることであるとか、もしくは安全性の低下を危惧する御意見があるとか、あとは、民間の人件費上昇の懸念なども示されております。また、お隣芦屋のように、全校に栄養士を配置して直営ですることを市のブランドとして打ち出している例もあるように認識しております。

 こうした全体像を踏まえながら、現時点は平成29年の方針を踏襲すると申しましたが、今後は、様々な情勢の変化を踏まえ、対応してまいりたいと思います。

■意見(田中まさたけ)
 こちらは、先ほど坂田次長の御答弁がございましたが、(教育委員会の)この答申の解釈(←クリックすると答申から抜粋した該当部分が開きます。)については、疑問を抱かざるを得ません。御答弁の中では、「現在の執行体制の見直しと民間委託の2案を提言いただいた」という趣旨のお答えであったかと思いますが、私の理解は違います。

 この答申は、まず、さらなる効率化を図ることで財源を生み出し、施設整備とかアレルギー対応、そういった安全性の向上など、抱える諸課題の早期解決を図り、子供たちの学校給食環境の改善を進めていく必要があると。つまり、「さらなる効率化を図る目的」がまず触れられています。

 このさらなる効率化を図る手だてとして、「直営方式を維持したまま再度執行体制を見直す方法と、調理業務を民間委託しコスト削減を図る方法が考えられる。」と言っているのです、まず。「方法としては考えられる」と。
 その後、「執行体制の見直しと民間委託」という項目がございまして、その中で、最後に「したがって」とあります。「したがって、西宮市の学校給食の充実を図るためには、現在の調理業務の体制を見直し、効率的な運営方法の一つとして民間委託も含めた検討が望ましい。」と書いてあります。(民間委託も含めた検討が)「望ましい。」と書いてあるのです。
 
 さらに、モデル校を設置するなど、民間委託の導入を判断する場合の条件が示されておりまして、項目の最後に、項目の最後にです、「直営方式を一部維持する方法も一案。」と書いてあるのです。「併せて検討されたい。」と書いてあるのです。つまり、この答申は、私の理解では、民間委託の導入が前提になっていると思っています。

■再質問
 まずお答えいただきたいのですが、この答申の内容を市長は御覧になられた上で先ほどの答弁をされているのかということ、それと、これも繰り返しになりますが、資料の表5に示しましたとおり、現在も、民間に調理業務を委託した場合の試算よりも年間1億円以上の経費をかけていることになってます。
 このまま直営での執行体制を見直しただけでは、民間委託の経費を下回るのは正規職員がいなくなるという前提(これも方針としては確定しておらず、正規職員を残していく可能性は十分にあります。)で、しかも平成57年度ですから、まだ25年後と示されただけです。しかも、将来的に正規職員をゼロにして、全て非正規職員で実施するという方針にしたということで理解してよろしいのでしょうか。
 自校調理方式で調理業務を民間に委託している他市との比較であったり、経費や配置人数について常に検証が必要だと私は思っていますし、先ほど市長が熱くお答えになられましたが、この夏の調理業務の(お粗末な)対応も勘案すると、これはもう一度、行政経営の発想で1人でも職員定数を有効活用するという方向で検討し直すべきだと私は思うのですが、そうお考えにはなれませんでしょうか。

■再質問に対する市長の回答
 まず、平成27年の審議会の答申を見たかと言われておりますので、(それは)見ました。それから、議員がおっしゃられたところ、ちょうど読まれたところは線も引いております。その中で、先ほど私が申し上げました。繰り返します。いろいろるる申しましたが、現時点では、平成29年の方針を踏襲すると申しました。今後は、様々な情勢の変化を踏まえて対応してまいりたいというふうに申しました。これが今のお答えの全てでありますが、そういう中で、行政経営改革ということもあるでしょうし、この直営というのをブランドというふうに捉えるというようなこともあろうと思いますが、これに関しては、現時点ではそのようにお答えしたということであります。

■意見・指摘
 御答弁は、「今の段階では」ということです。この質問を通告してから急にそんなことをいろいろと検討できないということは、もちろん私も分かってますので、是非ともこの質問を機会に、答申のほうでは「モデル校を選定して経費削減効果と質の向上の効果について検証を実施すべき」と書いてありますので、そういったことを今の現状、市全体の現状を考えたときには、是非とも学校給食基本方針の見直しが必要だと思いますので、指摘をしておきたいと思います。

====ここまでが、本会議場での議論の概要====
 
 昨年の夏に簡易給食しか提供できなかったことは事実です。夏休みを短縮して、その間に簡易給食しか提供しなかった自治体の事例はいまだに聞いたことがありません。もちろん、「食べ物の恨みは怖い。」ではありませんが、子供たちのその学年は1度だけであり、「次は、このようなことのないようにしたい。」では済まされないできごとだったのです。

 この汚名を返上するためには、せめて市長も、教育委員会も、「市が直営で経費を掛けて調理をしているからこそ、民間に調理業務を委託をしている自治体よりも、○○な面や▼▼な面で具体的に学校給食の質が高くなっている。」ということを客観的に示すべきなのですが、現時点では全く説明ができないのです。
 また、外部委員で構成される学校給食審議会の答申を曲解して、教育委員会の論理で学校給食基本方針を策定するというやり方も問題であり、審議会からの答申と教育委員会の基本方針の内容の整合性についても論理的な回答とはなっておらず、苦し紛れの回答と言わざるを得ません。
 もはや、「学校給食調理業務における公務員の『枠』を守らないといけない。」という市役所の事情しか見えてきません。なぜ、公務員の「枠」を守らないといけないのかは謎ですが。

 ますます、調理業務を民間事業者に委託しても、子供たちに何ら悪影響を及ぼすことなく、効率化できることが明らかになったと受け止めています。そして、効率化によって生まれた財源と人員で、アレルギー対応も含めて更に質を上げることも可能と私は確信しています。

 この件について私が議員としてできることは、本会議場で議論をして、市の非合理を質し指摘するところまでです。

 今後、給食の質の向上、子供たちのことを置き去りにしてまで学校給食調理業務の直営体制を堅持するのか否かは、もはや、市民から選ばれた市長と、その市長が任命した教育長を始めとする教育委員の決断にかかっているのです。

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