西宮市における環境政策の変化と動向①ーごみ処理広域化の結果

2021年2月23日[カテゴリ:環境衛生

 先週19日(金)から3月定例議会が始まり、令和3年度予算案が提案されるとともに、市長の施政方針が示されました。

 現在の市長は、時折「改革」という言葉を使います。方針のなかでも「『市民と共に新たな価値を生み出す市役所』へと改革していく」とありました。私には「新たな価値」とはいったい何のことをおっしゃっているのか、いまいち具体的なイメージが伝わってきません。今回の方針を聞いていて、漠然とした表現が非常に多く、お役所的で無難な構成となっており、僭越ですが、改革の兆しはあまり感じられませんでした。
 今週金曜日から始まる施政方針に対する代表質問の議論を聞き、具体的なイメージが湧いてくることを期待して、議会に臨みたいと思っています。

 さて、先日のコラムに掲載しました、市より報告のあった今後の環境政策、「ごみ処理広域化について」、「西宮市一般廃棄物処理施設整備計画の進捗について」、「プラスチックごみ削減の推進について」、「『西宮市廃棄物の処理及び清掃に関する条例の改正・指定袋制度の導入及び分別区分の見直し(素案)』に対するパブリックコメントの結果について」、順次掲載していきます。

ごみ処理広域化は断念

 まずは、芦屋市さんとのゴミ処理広域化の検討結果についてです。
 
 異なる自治体同士の調整の難しさはこちらのコラム(←クリックするとコラム「ごみ処理広域化の検討と大阪都構想のゆくえ」が開きます。)に掲載しました。
 また、これまでの協議の経緯については、こちらのコラム(←クリックするとコラム「ごみ処理広域化」が開きます。)に掲載した通りです。
 
 そして、その後のコラム(←クリックするとコラム「」が開きます。)にも少し掲載しましたが、令和2年11月24日の西宮市と芦屋市さんとの担当者間での検討会議において、西宮市として求める条件を提示しましたが、芦屋市さんには受け入れてもらえなかったことで協議は続くこととなりました。

 そこで、西宮市として譲歩できる条件を模索するため、西宮市議会民生常任委員会のメンバーと西宮市ので勉強会を12月23日に開催し、西宮市としての譲歩案を再度市には検討してもらいました。
 そして、今年1月20日の検討会議では、施設が立地し続けるという環境負荷を西宮市民が受けることになる中でも、経費削減の効果額は西宮市が芦屋市さんと同額(1:1でそれぞれ65億円)になってもいいという案へと譲歩して費用負担割合を提示しました。譲歩前の案は、芦屋市民が排出するごみを焼却するために負う環境負荷を勘案して、西宮市6:芦屋市4(78億円と52億円)でしたので、西宮市としては78-65=13億円を譲った形となります。

 しかし。。。

 両市の広域化事業により、130億円の削減効果が出ると試算されていました。

 この130億円を割り勘にして、65億円ずつ削減効果額が出るように今後の事業費の負担割合を計算すると、
・施設建設費と施設運営費の33%分を同額負担(半額ずつ)して、残りの67%分はごみ量の割合、西宮市3:芦屋市1の割合で負担をすることになり、この案が、西宮市が提示しました負担割合の案でした。

 一方で、芦屋市さんの主張は、
・施設の建設費も運営費もごみ処理量(西宮市3:芦屋市1)で負担をする。
そうすると、効果額は西宮市37億円、芦屋市93億円となってしまうため、
・28億円を芦屋市が西宮市に払うことで効果額を同額にする。
・この28億円は基金(市の会計とは別の財布)に入れて管理し、使い方は、西宮市と芦屋市の協議体を設置して協議した上で決め、環境保全に寄与する事業に使う。

という条件でした。

 芦屋市さんが主張する3番目の条件があることで、28億円は西宮市だけの判断で決定して環境の取組みを実施することができなくなることになり、効果額を割り勘することにならないということを理解して頂き、3番目の条件を取り下げて頂きたかったのですが、かないませんでした。

 しかも、今回計算されている効果額はあくまでも試算上の話なので、試算の段階で負担する「金額」を決めておくよりも、実際に要した建設費と運営費の負担の「割合」を決めておく方が、事業着手後の実際の経費と試算が乖離した場合でも、お互いに同じ割合だけ享受もしくは負担することができるようになると思うのですが。。。

 最終的には、この試算上の経費削減効果額28億円の扱い方が折り合わず、効果額も温室効果額削減も手放すことになりました。「残念」の一言です。

西宮市一般廃棄物処理施設整備計画の進捗

 芦屋市さんとのごみ処理広域化が実現されなかったことから、今後は、西宮市単独でごみ処理施設の再整備を検討していかなくてはなりません。その検討する施設は、不燃ごみやペットボトル、粗大ごみを処理する「破砕選別施設」と燃やすごみ等を処理する「焼却施設」に分かれます。

破砕選別施設
 当初は、破砕選別施設の再整備についても芦屋市さんとの統合を検討していましたが、平成31年2月に断念しましたので、西宮市単独での整備について検討が進められています。現在は、西宮浜の西部総合処理センターにありますが、鳴尾浜の東部総合処理センターに移転し、現在東部総合処理センターにあるペットボトル圧縮施設と統合整備される予定です。

⚫処理能力:56トン/日(予定)【現施設 110トン/日】
⚫事業方式:DBO(設計~建設~運営を民間が担う方式)
⚫事業費:建設工事77億円、運営委託(20 年)97 億円
⚫事業スケジュール 
・R2:施設基本計画策定、生活環境影響調査
・R3:生活環境影響調査(地元説明会等)、発注者支援業務委託(事業者選定入札準備)
・R4:事業者選定・契約・工事着工
・R8:供用開始・竣工

という計画になっています。

焼却施設
 今のところ、西部総合処理センターにある焼却施設をそのまま西部総合処理センターに再整備する予定です。鳴尾浜に所在する東部総合処理センターと西部総合処理センターの2ヶ所に焼却施設が存在することとなりますが、西部総合処理センターの焼却施設が再整備されて稼働する令和12年度には、東部総合処理センターの焼却施設は稼働から18年が経過することになります。東部総合処理センターの運営はすでに民間に委託されており、委託の期間は20年間で、焼却施設の耐用年数も20年ですので、2年間、期間がダブることにはなりますが、二酸化炭素排出抑制と施設運営費削減の観点から、焼却施設を1ヶ所に統合することについても検討すべきであり、常任委員会での質疑を通じて意見を述べました。
⚫処理能力:268トン/日(予定)【現施設 350トン/日(175トン/日×2炉)】
⚫事業方式:市直営
⚫事業費:建設工事費252億円、運営費は別途人件費等
⚫事業スケジュール
・R3:基本構想策定、循環型社会形成推進地域計画作成・国へ提出
・R4:施設基本計画策定、生活環境影響調査
・R5:生活環境影響調査、発注仕様書作成
・R6:発注仕様書作成
・R7:事業者選定・契約・工事着工
・R12:供用開始・竣工
 
====2月4日民生常任委員会における質疑の概要====

■質問(田中まさたけ)
 ついこの間までごみ処理広域化を検討していた中でございます。焼却施設についてはまた後日にもう少し詳細なものが出てくると理解しておけばいいのか。その確認をしておきたいのが1点です。

 もう1点が、将来の人口の話が少しありましたが、東部総合処理センターで破砕選別施設を整備する規模です。現在の資源化率は令和元年度実績で30%弱となってまして、新しい施設では48%まで資源化率を上げることになっています。これはどのような根拠で48%に設定されているのかというところを確認させてください。

■施設整備課長の回答
 まず、1つ目の今後の計画ですが、来年度、基本構想を策定致します。その時に、もう一度ごみ量や方向性を検討致しますので、それ以降、こうした場で報告させて頂くということになります。
 2つ目の資源化率ですが、新たにごみ分別区分が変わり、ペットボトルの収集回数が現在の月2回のものが毎週収集になるとペットボトルの分別収集量が増え、回収量が増えるということがあります。
 もう一つがガラス瓶で、現在、ガラス瓶は、缶とガラス瓶と、瀬戸物くずなどを一緒に不燃ごみとして収集して西部総合処理センターで選別をしていますが、新しい分別区分ではガラス瓶の単独収集になりますので、回収効率がよくなるということで、それらを踏まえまして48%という回収率を出しております。

■質問(田中まさたけ)
 まず、1点目の焼却施設ですが、新年度に基本構想の策定を予定されているということですが、現在は、東部総合処理センターの焼却施設と2本立てで西宮市では焼却してきました。以前は、西部工場もあったわけですが、そちらは廃止して2か所となりました。これをさらに将来的に1ヶ所にしようといった検討を行う準備があるのかないのか伺います。
 2点目、資源化率ですが、ペットボトルを収集回数を増やすので回収率が上がるだろうというお答えがございました。一方で、先日、所管事務報告がありましたマイボトルの普及ということで、ペットボトルを極力使わない生活様式を目指していくということです。これは資源化率とは関係なく、あくまで全体量ですが、総量として処理しなければならないごみ量は、環境局のほかの政策とも整合を取らないといけないと私は感じたのですが、ペットボトルも含めて全体のごみ量を減らしていく、その辺の政策との整合は図られているのでしょうか。

■施設整備課長の回答
 まず、焼却施設の東部と西部の集約の件ですが、それは、これから西宮市全体で効率的な整備や運営が行えるよう、様々な視点から将来の施設のあり方を検討していきたいと考えております。今すぐに集約ということではなくてトータルで考えていきたいと考えてます。
 もう1点、ごみ減量との整合性ですが、計画で想定しておりますごみ量は、一般廃棄物処理基本計画でごみ減量の目標値を定めております。それに基づいてごみ量を計算しておりますので、整合は取れておりますが、まず分別を徹底させるというところでごみは減っていきます。まだまだ可燃ごみにたくさん資源ごみが入っておりますので、それを適正に市民様に分別してもらうというのがまず第一で、その上で全体のごみ減量を図っていくというふうに考えております。

■意見(田中まさたけ)
 ありがとうございます。何を申し上げたかったかと言いますと、まず、資源化率の計算やごみ量の計算については、施設の規模が過剰にならないようにとしなければならない、これからしっかりと私たちも見ていかないといけないと思いました。基本構想も含めてですが、一般廃棄物処理基本計画で定めたごみ量等についても、資料の中で示していただけるとありがたいです。
 焼却施設については、ぎりぎりまで広域化を検討してきましたので、もう時間が迫っています。新施設を整備するスペースとしては、芦屋市さんの廃棄物を受け入れるだけの規模が建てられる面積だったと思います。様々な観点から検討したいというお答えを今頂きましたので、これから市単独で再整備するにあたって焼却施設が2ヶ所あるものを一つにすることによってどれだけのコストが削減できるのか、また、環境がどれだけよくなるのか、また、将来の施設の再整備のことも含めて、時間はない中ですが浅い検討で進めてしまうのではなくて、しっかりと常任委員会でも検討しながら進めていかないといけないと思っていますので、引き続き市の皆様には、御報告をお願いしたいと思います。

====ここまでが委員会での質疑応答の概要====

 ごみ処理施設は、災害対応も含めて、私たちの生活上の重要なインフラである一方、非常に専門的な知識や経験が必要とされることから、私たち素人には分かりづらいところがあります。しかし、非常に莫大な事業費を要することから、将来の西宮市民の生活のために、市議会において集中的に議論をしなければならないと感じています。

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